鳩山テラス


里山の四季、遥かなる山稜 ・ ・ ・
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春の谷川岳(2回目) (天神尾根 ~ 西黒尾根) 2014年4月9日

2014-04-09 | 

 

                                                                             ― 上信越 群馬県 水上町 ―

 半月ほど前に登った谷川岳。天候に恵まれず、期待した360度の眺望は得られなかったが、それでもとても楽しいものであり、雪がたっぷり残っている間に、又行きたくてうずうずしていた。そこへ天気周りと、仕事の調整に上手く行きそうなメドが立ったので、休暇を取って今日また来てしまった。

 もう慣れたもので、ロープウェイの山麓駅近くに車を止めると、手早く身支度を済ませて、すぐにロープウェイ車中の人となった。高度を上げるにつれ白銀の峰々はまぶしく、日焼け止めクリームを塗りながら同乗の登山者と会話をすると、「僕も休暇を出してやって来ましたよ。」と、上々の天気にその人の顔からも白い歯がこぼれる。

 
山頂駅の改札窓口で今日もポリタン一杯に水を頂き、まぶしいゲレンデに飛び出した。今まで2回来たのに姿を見せてくれなかった谷川岳が、今日は穏やかな姿を陽に輝かせている。
やっと見れたよ・・・。) 
思わずつぶやいてしまう。

 快晴無風の汗ばむ陽気に、アンダーウェアに直接防寒着という薄着でスタート。スキー場から離れると、いよいよ楽しい雪稜歩きが始まった。適度に締まった雪の上を、自由に歩く感覚がとても楽しい。
 熊穴沢避難小屋手前の下降では、岩や土がほとんど露出しており、前回は雪に埋もれていた避難小屋の屋根も一部が足元に覗いている。この半月で70センチほどの雪解けが進んだ感じだ。

 
見上げる前方にはいつも青空と先行登山者の姿があり、今日は何の不安もない。天狗の留まり場を過ぎると白一色の大斜面が広がり、前回、何も見えない中を登っていた時の様子と重ね合わせながら、感慨深く一歩一歩を進めた。
 右手からは西黒尾根の急角度の雪稜が間近に迫り、左手には万太郎山方面の峰々が同じ高さにまでなっていた。角度的に肩ノ小屋の姿は見えないものの、もう頂上の近いことがわかる。今日は風も身体を涼ませてくれるかのように心地良く吹いているだけだ。

   
 先月は見えなかった避難小屋の屋根が現れた             大斜面に続く登山者の列

 

   
       肩ノ広場に建つ指導標                     肩ノ小屋

 

 大斜面を登り切ったところが肩ノ広場だった。今日は小屋の全貌も、予想通りの素晴らしい眺望も手にすることが出来た。前回のホワイトアウトの時とは別世界だ。
 
肩ノ広場に建つケルン型の道標を初めて見て、そしてトマノ耳へ初めて立った。断崖に雪庇の張り出した頂上から、まだまだたっぷりの雪をまとって連なる上越国境の山々を眺める。馬蹄形につながる稜線と、そこから遠く巻機山方面へ続く稜線には何度も目をはせた。
 続いてオキノ耳へ向かうが、その途中から振り返るトマノ耳の雄姿はなかなかのものだった。
切り立ったオキノ耳の頂でも、のんびりとひと時を過ごした。

                                                              トマノ耳

 さて、帰路は登ってきた天神尾根を戻るのが一番安全だったが、安定した今日の天気と、午後1時前という現在の時刻と、トレースの有無から、西黒尾根ルートでの下山に挑んでみることにした。そうなるかも知れないことを見越して、登山カードには一応リスクの高い方の西黒尾根での下山ルートを記入しておいたので、このナイスプレーには思わずニンマリ。
 
それにしても今朝、途中のコンビニで買った昼食用のおにぎりと菓子パンを、見事に車の助手席に置き忘れた自分の馬鹿さ加減にほとほと呆れつつ、代わりに行動食用のカロリー食品と水で、しっかりと腹ごしらえをして、さあ出発。

 肩ノ広場で天神尾根と別れ、西黒尾根の斜面へ足を踏み入れた。下が見えないくらいの高度感たっぷりの下降だ。幸いトレースが有り、はるか足元に見えるラクダのコルあたりには、一人の人影も確認できた。あそこまでは気の抜けない急斜面が続くと自分に言い聞かせ、一歩一歩慎重に下る。
 雪面から半分露出している鎖場の通過では、腰が引けてずり落ちたり、雪に隠れているクラック (雪の裂け目、空洞) に足を取られたりと、若干もがきながらの下降ではあったが、何とかラクダのコルまで降りてきた。
 時々後ろを振り返っては、今降りてきた斜面を見上げてみるが、人影は無く、どうやら西黒尾根ルートの本日最終の下山者となっているようだ。

 
ここからは一息つけるかと思いきや、ラクダのコブと呼ばれるあたりの通過に、マチガ沢側への滑落や、西黒沢側に張り出た雪庇の踏み抜きにと、緊張の場面はしばらく続く。
 
昨年のゴールデンウィークに経験した涸沢上部の雪稜や、夏の剱岳・平蔵谷の雪渓に比べ斜度的には幾分緩いが、今日の雪稜降下には、足元に山麓の景色が見えることによる高度感に怖さがあった。

 疎林地帯まで降りて来て、やっと一息つけられるようになり、ここで大休止。
 肩ノ広場からここまで一気に降りて来て、喉もカラカラ。時間も相当経ったように感じたが、実際には1時間そこそこ。今にして思えば、もっとゆっくり雪稜の降下を楽しみながら来ればよかったのに、危険地帯脱出とばかりに夢中で降りて来てしまった。途中、見上げる山頂の白い岩峰や、高度感たっぷりの稜線風景など、カメラに収めたいシーンが幾つもあったのだが、下りに専念するためカメラもザックにしまったままにしていた。

 
屈指の急登コースとして知られている尾根だけあって、この先も傾斜はきつく、下が見えて来ないが、ダケカンバやブナの気持ちの良い樹林の斜面を、自分だけの足跡をつけたり、尻セードをしたりと、やっとここからは楽しみながら下ることができた。

 
正面には対峙する白毛門の尾根が次第に大きくなり、下方には土合駅舎も見えて来て、いよいよ今日の雪山登山もフィナーレの時が近づいた。
 送電線の鉄塔の脇を通過し、雪上訓練をしているらしい一団の脇をズボズボと雪に足をもぐらせながら更に下ると、登山センター前の車道にひょっこり出て、ここでアイゼンをはずした。

    
                          西黒尾根の下りで振返る

     ~  ~  ~      ~  ~  ~      ~  ~  ~

 今回、3度目にしてやっと谷川岳山頂に立つことが出来た。そして念願の上越国境の山々を眺め、おまけに西黒尾根をも制覇することが出来た。これも今日一日が絶好の春山登山日和だったためであり、そのことに感謝。

  

― コースタイム ―

ロープウェイ山頂駅発9:10 ~ 肩ノ小屋着11:10  ~ オキノ耳まで往復 ~

肩ノ小屋発 13:00  ~ 西黒尾根疎林帯 14:10 ~ ロープウェイ山麓駅着 15:40