北朝鮮が7日、事実上の長距離弾道ミサイルを発射したことを受け、米韓両国は、最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)の韓国配備に向けた協議開始を決めた。

THAADをめぐっては、中国が猛反対してきただけに、中国の習近平国家主席と、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領による「中韓蜜月」関係は、破綻に向かうのか。

「北朝鮮は容認できない挑発行為を強行した。

米韓同盟レベルでも対応能力を強化させる、あらゆる必要な措置を取っていく」

朴氏は7日、大統領府で開いた国家安全保障会議(NSC)で、北朝鮮の暴挙を非難し、THAADの自国配備を示唆した。

国連安全保障理事会も同日、北朝鮮のミサイル発射に対し「強く非難する」との報道声明を発表した。

日米韓は今後、北朝鮮への一層の制裁強化を狙い、各国への働き掛けを強めていく。

前出のTHAADは移動式の地上発射型迎撃システムで、高度100キロ前後で弾道ミサイルを迎撃する。

高性能レーダーの探知距離は1000キロを超えるとされ、韓国に配備されると北朝鮮の軍事的動向だけでなく、中国のミサイル基地の動向まで丸裸になるため、中国は強く反対してきた。

朴氏はこれまで、経済的に依存する中国の意向に配慮するとともに、北朝鮮対策も中国に期待して「米韓間でTHAADの協議はしていない」(韓国政府)という態度を取ってきた。

だが、中朝両国の対応を見て「今の北朝鮮は中国を恐れていない」と悟った可能性がある。

中国の冷たい仕打ちも無関係ではなさそうだ。

朴氏と習氏は5日夜、電話で会談した。

北朝鮮が1月6日に4度目の核実験を強行した直後から、朴氏は会談を求めてきたが、中国は何と1カ月も放置していたのだ。

これに対し、米軍は朝鮮半島周辺に空母数隻とF22戦闘機などを新たに緊急展開した。

グアムにはB2ステルス爆撃機を待機させ、万が一に備えて北朝鮮をピンポイントで攻撃する態勢を敷いていた。

今回の一件で、韓国は中国との蜜月関係をやっと見直し、日米の陣営に戻ってくるのか。

韓国情勢に精通するジャーナリストの室谷克実氏は「韓国は、米国に『中国に寄り過ぎだ』とみられてきた。

北朝鮮のミサイル発射を契機にして『THAAD配備の協議をやる』といい、米国にこびを売っている側面がある。

当然、中国は『けしからん』と言ってくるが、朴氏としては『冷たくしたら、THAADを配備するわよ』というメッセージを送っている。

コウモリ外交であることに変わりはない」と分析している。