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韓国経済、「命綱」サムスン「絶頂期」を終えた不気味さ

2014年04月18日 10時53分32秒 | Weblog

韓国経済、「命綱」サムスン「絶頂期」を終えた不気味さ

勝又壽良の経済時評

2014-04-18

サムスンこけたらお仕舞い
シリコンバレーへ触手伸ばす

諺で、「月満つれば即ち欠く」という。盛りが来れば、その後は必ず衰えることは物事の道理、という意味だ。サムスンは、スマートフォンを武器に世界の頂点にまで上り詰めた。その満月もついに欠ける時期が来た。

昨年10~12月期の業績が発表されて、営業利益が2期連続前年比で減益に直面したのだ。

IT関連商品は、商品寿命が短いことで知られている。

夏の蝉のごとく生命は「一瞬」のうちに過ぎ去るもの。そのはかない生命のサムスンに、韓国経済はすべてを賭けている。

業績面の説明は後でするが、「巨人」サムスンの韓国経済における位置づけをまず明らかにしたい。

サムスンの営業利益は、名目GDP(2013年)の2.76%も占めている。サムスンが咳をすれば、韓国経済が風邪を引く。サムスンと一蓮托生の関係だ。

サムスンこけたらお仕舞い

今年の1月7日付け『朝鮮日報』は、韓国の「G2」と称せられるサムスン電子と現代自動車の経済的ウエイトが余りに大きいところから、次のように報じていた。

「韓国政府企画財政部(省に相当)関係者は、『韓国経済はサムスン電子と現代自に過度に依存しており、それにより統計がゆがめられる錯視現象が起きているとの指摘がある。

政府としてもそれがどの程度かを確認する必要があると考えた』と述べた。

企画財政部は2社を除いた指標のみを作成するのではなく、サムスン・グループと現代自グループを除いた指標も作成中だ。

作成作業は早ければ今月末にも終了する予定で、大統領府(青瓦台)に報告される。

企画財政部関係者は、『結果を公表するかどうかはまだ決まっていないが、対外的に大きな波紋を広げる可能性がある

ため、慎重に決定したい』と述べた」

韓国政府は、サムスンと現代自が韓国経済に占めるウエイトがどの程度か。

かねてから作成中であった。その結果は、1月中にまとまるので発表するか否かを慎重に検討する、としていた。

4月に入っても発表されないのは、この「G2」が「池の鯨」になっていることを暗示している。

両社のウエイトの大きさに驚いて発表を取りやめたに違いない。それほど、サムスンは韓国経済の鍵を握った存在である。

サムスン電子は4月8日、今年1~3月期の営業利益が8兆4000億ウォン(8200億円)になる見通しだと発表した。

「昨年10~12月期(8兆3100億ウォン)より1.1%の増加した」(『朝鮮日報 電子版』4月8日付け)と、表面的にはなにもなかったごとく報じたのだ。

企業業績は季節性が顕著であるから、必ず「前年同期比」で増減率を見るもの。

この常識を隠して「前期比」でさらりと逃げて報道した。

だが、「前年同期比」では、売上高が0.3%増えたが、営業利益は4.3%も減少していた。

昨年10~12月期も、売上高は前年同期比5.74%増加したが、営業利益は前年同期比5.95%の減益。2期連続の「増収減益」という芳しくない結果に終わった。

2013年の連結決算における営業利益の構成比は次のようになっている。
スマホなどIT機器    68%
半導体          19%
ディスプレー        8%
家電            5%

トータルで見ると、スマホなど携帯端末関連が81%を占めている。

この極端に偏った利益構成では、スマホがこけたらサムスンが終わりだけでなく、韓国経済そのものにひび割れする。

それほどのリスキーな状態に追い込まれている。

韓国政府が前述の通り、サムスンと現代自の占めるウエイトの調査結果を発表しない理由が分かるのだ。

極論すれば、韓国経済はスマホだけで支えられている。そう言ってもよい。日本経済の重厚さに比べれば、「月とスッポン」である。

サムスンの稼ぎ出す営業利益(2013年)のなかで、スマホなど携帯端末関連が81%を占めていることは、すでに指摘した通りである。

2期連続で営業利益が減益になっている背景には、スマホが伸び悩んでいることが最大の理由である。

全世界のスマホ市場は、2013年の出荷台数が10億台を超えるなど、依然として急速に広がっている。

これまで高機能スマホは先進国が主戦場であった。今後は中国やインドなどの低所得国に移行する。

「100ドル・スマホ」の低価格品(1万円)が人気を集めて行くのは当然だ。

こうしたなかで、サムスンが高利益を維持するのはきわめて困難な状況に追い込まれている。

まさに、冒頭に指摘したように、「月満つれば即ち欠く」という事態に遭遇する。

サムスンの悩みは、スマホに代わる主力製品がないことだ。

流行作家が次々と新作を書かないとその地位を失うのと同じ悩みを抱えている。ある意味で、「自転車操業」といってもよい。

確たる技術基盤が存在せず、日本の技術者を唆(そそのか)して手に入れた電子技術を旨く使い、現在の地位にのし上がったのだ。

私が、昨年11月26日のブログで書いた記事を再録する。

韓国紙『中央日報』(2012年2月8日付け)で、すでに次のように報じていた。

「サムスン電子を除くサムスン系列会社社員の間ではこのごろ、サムスンは『サムスン電子』と『非サムスン(非サムスン電子系列と新事業)』に分けられるという自嘲を交えた話が出回っている。

看板企業のサムスン電子の携帯電話やテレビ・半導体などで驚異的な成果を上げているが、電子を除いた大多数の系列会社は成長が停滞している状況を遠回しに言っている。

実際、サムスン電子が昨年201兆ウォンの売上げを上げながら、サムスン・グループの比重は過去最大の65%を超えると推定される。

こうしたなか、3年前から2020年までに23兆ウォンを投じることにした5大未来新規事業まで軌道に乗せることができず、いつよりも危機感が広まっている」

「世界の巨人」になったサムスン電子だが、基礎技術を持って成功した訳ではない

日本の技術者をうまく取り込んで得た技術程度では、底が知れていたのである。

日本企業を見れば分かるが、すべて自社技術で製品開発を進めてきたから、技術の裾野は極めて広いのだ。

ただ、余りにも自社技術にこだわったゆえに、製品化のスピードに遅れたとか、市場の流れに乗れなかったなどの欠点が指摘されている。

サムスンは、日本企業と全く違った「借り物技術」で激流を乗り切ってきた。それだけに身軽に飛び回れたはずだ。その段階を過ぎれば、改めて自社技術が必要なのである。次の駒がないのだ。ここにサムスン最大の悩みがある。

サムスン電子は、「非サムスン部門」として新規事業に手を出している。

「3年前から2020年までに23兆ウォンを投じることにした5大未来新規事業まで軌道に乗せることができず、いつよりも危機感が広まっている」現実は、サムスンが次の発展段階での「種」がないことを如実に示している。

5大事業とは、LED(発光ダイオード)、太陽電池、自動車用電池、バイオ医薬品、医療機器である。

サムスンは、スマホ事業で「世界の王者」になった。

このスマホと、前記の5大事業は技術的に関連性があるとは言い難い。

ただ、将来の発展性に富む分野だからサムスン・グループに取り込んだ、という程度であろう。

とすると、技術基盤のないサムスンにとって、技術的にどのような「シナジー効果」を上げられるのか。

きわめて難しい課題を背負い込んだと言わざるを得ない。中国と同じである。GDP世界2位になったが、技術的に後が続かないのである。

以上で、サムスンの経営的な限界は明らかである。

借り物技術でたまたま時流に乗った製品を手がけた。

それが大成功を収めたに過ぎない。このように評価ができる。問題は、これで終わらないところに「悲劇性」がある。

韓国経済が、完全にサムスンへ寄りかかり「おんぶにだっこ」された状態であるからだ。サムスンは、新たな「触角」を米国に伸ばしている

シリコンバレーへ触手伸ばす
『日本経済新聞 電子版』(3月31日付け)は、次のように報じた。筆者は、兼松雄一郎氏である。

「サムスン電子が成長の壁にぶつかった。スマートフォンのブームが一服し、一時の勢いは消えた。次の成長のタネをどこでつかむか。『イノベーションの聖地』である米国シリコンバレーに触手を伸ばしたが、欲しい技術を無尽蔵に吸収できた日本とは勝手が違う。

苦闘が始まっている。サムスンが、スマホなどの特許を巡り、アップルと訴訟合戦を繰り広げるようになって4月でまる3年。

存命中のジョブズに『コピーキャット(物まね屋)』と非難されたこともあったが、今もサムスンの貪欲さは衰えを知らない。

昨年12月には、アップルの直営店のノウハウを学ぼうと、『アップルストア』部門のキーマンとされる人物も引き抜いている」。

サムスンは、故ジョブズ氏から「コピーキャット」と軽蔑を込めて呼ばれていたと言う。日本での振る舞いを見れば、「なるほど」と合点が行く。

サムスンはいよいよ、シリコンバレーへ乗り込んで行ったが、軍隊調の管理システムを持ち込んでいるので、早くも先が思いやれているところだ。

「あるサムスン現地法人幹部は、『過去に日本メーカーにしかけたことを、今度はアップルなどシリコンバレー企業を相手に繰り返しているように思われても仕方がない』。

こう打ち明ける。日本を起点にした過去のサクセスストーリーを、シリコンバレーでも再現しようとしているというのだ。

サムスンは四半期ごとに最高益を更新してきたが、けん引役だったスマホの成長ペースが衰えると、日本勢と同じ道をたどってもおかしくない。

次の成長には、新たな技術やアイデアを次々と生み出すシリコンバレーの人材や知恵を使いこなすことが必要だ」。

サムスンは、日本企業からうまく情報を掠め取ってきた。

その「裏技」をシリコンバレーで再び使おうという魂胆である。

二匹目のドジョウがいるかどうかだ。サムスンは短期的に成果を求めるせっかちな企業である。

たっぷりと、時間と資金を与えて研究成果を出させる。そういう経験がない企業である。

もしあったとすれば、日本企業の「秘伝」を骨の髄までしゃぶり尽くすことをするはずもなかった。日本企業は韓国企業だから、「格下」に見て油断したのだ。高い授業料についた。

「シリコンバレー社会に溶け込み、成功を収めたアジア企業はいまだない。

日本の電機メーカーもかつてはシリコンバレーに挑んだが、成長の原動力にするまでには至らなかった。サムスンはどうか。

シリコンバレー攻略の結末によって、IT業界の勢力図も、攻防の歴史も大きく変わるかもしれない」。

サムスンは、これまでの短兵急な人事管理方式を改めることが必要である。

だが、「言うは易く行うは難し」である。韓国の民族特性からみて研究開発で、研究者の独自性をどこまで尊重できるのか。

問われているのは、サムスンの人事管理方式が「脱韓国」であるかどうかであろう。

『中央日報』(4月2日付け)は、次のように伝えた。

「 韓国証券取引所と韓国上場企業協議会が、上場企業の昨年12月決算法人494社(連結基準)の有価証券報告書を分析した結果、売上高全体は前年比1.8%の増の1018兆ウォン(約100兆円)。

営業利益も前年比4.9%増の101兆ウォンとなった。純利益は4.4%減の62兆ウォンとなった。純利益は2011年以降、一貫して減少が続いている」。

12月決算企業全体の有価証券報告書分析である。

前年比1.8%の増収であり、営業利益は同4.9%増益。純利益は同4.4%減益である。

増収率が2%弱と小幅であることが気がかりである。純利益は減益であって、この状態が2011年以降3年間も続いているのだ。

実は、この12月決算企業に、あの「巨人」サムスンを含んでいる。

それにも関わらず、この体たらくである。韓国は、外貨準備高が3000億ドルに達した。こう言って胸を張っているが、現実は内需不振を輸出でカバーしているに過ぎない。それは、次のパラグラフが証明している。

「分析対象上場企業のうち28.8%は赤字を出した。

赤字から黒字に転換した企業(38社)より、黒字から赤字に転換した企業(54社)が多かった。

ただ、財務構造はやや改善した。負債比率は133.4%と、前年比6.3ポイント低下した。

サムスン電子を除いて上場企業をみると、実績不振はさらに目立つ。前年比で営業利益は4.6%減、純利益は23.2%減。売上高に対する営業利益率もサムスン電子を除けば5.6%から4.1%に低下した」。

分析対象上場企業494社のうち、赤字から黒字に転換した企業は38社。黒字から赤字に転換した企業は54社にもなっていた。

黒字から赤字になった企業数が、赤字から黒字転換した企業数を上回る、典型的な「不況型決算」であったことは疑いない。

負債比率は6.3%ポイントの改善になった。これは、設備投資や研究開発投資も控えた、「縮小型」の守りに徹した経営を余儀なくされた結果である。

サムスン電子を除いて計算すると、前年比で営業利益は4.6%減、純利益は23.2%減と惨憺たるものである。営業利益率もサムスン電子を除けば5.6%から4.1%に低下した。サムスンなかりせば、韓国経済の庇が傾くことは必至である。

「昨年のサムスン電子の営業利益は36兆7850億ウォン、純利益は30兆4748ウォンだった。

これは前年比それぞれ17.8%増、26.6%増。これを受け、上場企業全体の営業利益と純利益に占めるサムスン電子の比率もそれぞれ36.4%、49.4%に達した。

純利益2~10位の企業をすべて合わせてもサムスン電子の規模に達しない。サムスン電子が上場企業の純利益に占める比率は、2010年19.9%、2011年30.7%、2012年36.8%と急速に増えている」。

韓国の名目GDPに占めるサムスンの営業利益はどの程度か。これまでマスコミで流布されているのは、サムスンの売上高が名目GDPに占める比率を計算するミスを犯していた。

GDPは付加価値の集計である。企業では、売上高でなく営業利益が付加価値にあたる。そこで、名目GDPに対するサムスンの営業利益を計算すれば良い。

韓国の2013年名目GDPは、1330兆5506億ウォン(IMF推計値)である。

サムスンの昨年の営業利益は36兆7850億ウォン。ここから計算すると、サムスンの営業利益は韓国名目GDPの2.76%に達する。

サムスンが、韓国経済の年間名目成長率にほぼ匹敵するウエイトを占めていることになる。それほど、深い関係を持っているのだ。サムスンは韓国にとって、「神様、仏様、サムスン様」である。

(2014年4月18日)



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