2016-08-06
韓国、「賄賂防止法」公務員・記者・私立学校職員に交際費限度
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
韓国は、中国ほどではないものの「賄賂」が横行している。
国際的にみた「賄賂ランキング」では、中国に比べて半分程度の賄賂汚染国家だ。
詳細なランキングデータは後で示すが、日本は「清廉国家」に近い。
韓国よりも「身辺」はきれいである。
その韓国が、日本よりも道徳レベルは上だと言ってきた。
何を証拠にそう言うのだろうか。
儒教国は、非儒教国よりも道徳的という思いこみに過ぎない。噴飯ものだ。
非政府組織(NGO)「トランスペアレンシー・インターナショナル(本部・独ベルリン)」が、2014年の世界175カ国・地域の「汚職ランキング」を発表した。
正式には、「腐敗認識指数ランキング」と呼ばれている。
以下のデータは、「清潔度」の高い順に示されている。
1位 デンマーク
2位 ニュージーランド
3位 フィンランド
4位 スウェーデン
5位 ノルウエー
5位 スイス
12位 ドイツ
14位 イギリス
15位 日本
17位 香港
17位 アメリカ
35位 台湾
43位 韓国
100位 中国
このランキングでは、日本が15位である。
米英独の先進国グループが10位台に収まっている。
韓国は43位、中国は100位だ。
GDP2位の中国が汚職度100位であるのは、恥ずかしい限りであろう。
韓国が発憤して、自ら「清廉国家」入りを目指そうというのだ。
ここで気づくことは、上位5位以内の国は、プロテスタントが多い。
さすが、宗教改革で腐敗したカトリックに反旗を翻した伝統は、今なお守られている。
改めて、宗教の持つ影響力に感服せざるを得ない。
儒教国家は、過去回帰型であり金銭への清廉感覚が鈍いという特色がある。
日本は、儒教の影響を受けず、武士道精神であった。
今、そのことの有難味を痛感するのだ。
『中央日報』(7月29日付)は、次のように伝えた。
この記事では、韓国で成立した賄賂防止法の「不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律」が、憲法裁判所で合憲の判決が出たことにより、9月末から実施される、という内容である。
会食は3000円、贈答は5000円、慶弔費は1万円という限度が設けられる。
その対象者が、公務員のほかに報道機関や私立学校教職員にまで広げられている。
これまで、広範囲に賄賂が飛び交っていたことが分かる。
決して、日本よりも道徳水準が高いわけでなかった。
(1)「『不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律』(金英蘭法)が違憲かどうかという問題から抜け出し、予定通り9月28日から施行される。
憲法裁判所は7月28日、この法をめぐり韓国記者協会・大韓弁護士協会とこれら団体の幹部、私立学校長・私立学校幼稚園長らが提起した4件の憲法訴訟事件を却下または棄却した。
私学教員、メディア関係者が法適用の対象に含まれるのかという点は裁判官7対2で合憲決定が下された」。
公務員がこの法律の対象になることは当然であろう。
だが、私学の教員やメディア関係者も含まれることは、賄賂によってその職務が歪められていたことを裏付けている。
韓国は教育熱心である。
良い学校に入学させたいという親心が、賄賂を包んできたのであろう。
メディア関係者もこの法律の取締対象に入っている。
接待して良い記事を書いて貰いたい。これまで、そんな狙いが込められていたのだ。
(2)「(略称)金英蘭(キム・ヨンラン)法の施行令上、職務関係者から提供を受けても法的問題にならない上限線は食事3万ウォン(約3000円)、贈り物5万ウォン、慶弔費10万ウォン。
この法が適用される場合、韓国社会の激変が予想される理由だ。
酒の席や贈り物の提供、接待ゴルフなどが制約され、国民の日常生活と経済全般に大きな変化が避けられない。
憲法裁の今回の決定を受け、公職者だけでなく私立学校教員、メディア関係者など民間領域とその配偶者の金品・接待授受を処罰するために作られたこの法はそのまま施行される。
対象者は大韓民国の国民の約8%にのぼる約400万人だ。
メディアと私学をこの法で規制するのは過度な措置だという一部の主張を憲法裁は受け入れなかった」。
この法が適用されると、韓国社会の激変が予想されるというから驚く。
「酒の席や贈り物の提供、接待ゴルフなどが制約され、国民の日常生活と経済全般に大きな変化が避けられない」とは、いささか大仰に聞こえる。
だが、過去回帰型の儒教社会では、飲み食いして行く中で、互いの合意を形成してきたとすれば、限度額を超えれば犯罪になるのだ。
青天の霹靂であることは、致し方ない。
この「儀式」を通して、韓国社会は次第に先進国への心構えができるに違いない。
この過程では、ゴルフ場や飲食業などの「接待需要」が減少する。
中国が、反腐敗闘争によって、高級品や高級レストランへの影響が大きく出ている。
韓国も同様な影響に見舞われるに違いない。
(3)「張德鎮(チャン・トクジン)ソウル大社会発展研究所長(社会学科教授)は、『大韓民国の不正腐敗史が今後、金英蘭法の以前と以後に分けられるほどこの法施行の余波は大きいだろう。
その間の産業化過程で一般的慣行として容認されてきた韓国式接待・請託の文化が根絶されるきっかけになると予想される』と述べた。
大企業と韓牛・花卉農家は危機を迎えた。
大企業S社の対外協力部長は、『もう人にむやみに会うこともできず、会いたくても金英蘭法に含まれた多数の職位と職務関連性から確認しなければいけない状況になった』と話した。
多数の企業は、憲法裁の決定を機に状況別の行動指針とガイドラインの準備に入った」。
最も影響を受けるのは、「大企業と韓牛・花卉農家」だと指摘している。
大企業は接待する側、韓牛・花卉農家は接待需要で最も潤ってきた業種である。
大企業が交際費をふんだんに使ってきたのは、それをコストとして転嫁できる先があったからだ。
具体的に言えば、下請け業者の納入単価を切り下げることで、コスト増を吸収してきた。
今後は、派手な交際費支出ができなくなる。
これがなぜ、困るのだろうか。
接待側が、自ら利益を受けてきた証拠であろう。
大企業が本来、接待支出の制限がかかって困ることはないはずだ。
それが困る事態になるとは、余りにも不自然な話しと映る。
交際費の名義で、自らの懐を暖めていたのだろう。
(4)「シン・ユル明知大政治学科教授は、『金英蘭法は陰性的なお金を陽性化し、国家の透明性を高めるためのものという点で意味が大きい。
畜産業や花卉業者などは打撃を受ける可能性がある』と分析した。
実際、昨年の国際透明性機構の調査で、韓国は経済協力開発機構(OECD)34加盟国のうち27位と最下位圏だった」。
昨年の国際透明性機構の調査で、韓国はOECD34ヶ国中で27位と最下位圏に沈んでいる。
これが、儒教国家の偽らざる「低レベル倫理」の実態である。
今後は二度と「韓国は日本よりも道徳水準が上」などと発言してはなるまい。
『中央日報』(7月29日付)は、社説で「金英蘭法合憲、亡国的腐敗清算の契機にしよう」と論じた。
(5)「金英蘭法は昨年3月に国会を通過した時から『不正腐敗の解決を名分に社会構成員の常規まで国家刑罰権の監視網に置くのは望ましくない』という反論とともに論争の対象になってきた。
農・畜・水産業と飲食業、草花業者は『法が施行されれば庶民経済が最も大きな打撃を受ける』と主張して反対デモを行ったりもした。
今回の憲法裁判所決定の焦点は、
法適用対象に私立学校財団や報道機関役職員などを含め、
配偶者が違法事実を申告するようにした義務条項が憲法に違反していないかどうか、
また不正請託の概念があいまいで国民の相当数を潜在的な犯罪者にするのではないかという部分だった」。
金英蘭法の対象は、韓国国民の約8%に及ぶという。
その人達が交際費の限度を守って、「清い交際費」になれば済むこと。
酒席の場でなければ、話しが進まないということ自体が異常なのだ。
韓国社会を清浄化させるには良い機会である。
(6)「憲法裁判所は、『法条項が直接的に報道機関や私学の自由を制限するとはいえず、
不正請託の意味は大法院(最高裁判所)に多くの判例が蓄積されていて罪刑法定主義に外れるものではない』と説明した。
侵害が予想される私益よりは公益を優先視しなければならないという意味だという。
これに伴い、金英蘭法が施行される9月28日から
韓国社会の慣行と接待および贈り物文化にも大きな変化がもたらされることが予想される。
法適用対象が『選択的差別』という一部の批判が相変わらずあることは事実だが、法制定の趣旨を積極的に生かして亡国的腐敗問題を革命的に解決することができるよう、すべての社会構成員の努力が必要だ」。
韓国が、海外からの資本を受け入れるには、こうした「清浄化」は不可欠であろう。
賄賂を求められるという評判が立っていれば、先進国は韓国進出へ二の足を踏むに決まっている。
日本も、韓国を見る目は厳しくなっている。
日本以外から資本を呼び込むには、自らの襟を正して行くしかない。
韓国社会が、少しずつ近代化されることは、日本にとっても悪い話しでない。
それだけ、韓国社会の意識が正常化されるからだ。
(2016年8月6日)