平成太平記

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① 韓国、「中韓FTA仮署名」工業品輸出の実利は「ゼロ」

2015年03月10日 14時49分08秒 | Weblog

①  韓国、「中韓FTA仮署名」工業品輸出の実利は「ゼロ」

 勝又壽良の経済時評

 週刊東洋経済元編集長の勝又壽良

 2015-03-10

 FTA効果半減
中国の政治宣伝

「蓋を開けてビックリ」。やっぱりと言うべきか。

韓国は2月25日、中国との自由貿易協定(FTA))の仮署名を終えた。

その内容が明らかになって驚いている。

韓国国内では、中韓FTAが発効すれば自動車など工業品関税がゼロになって、すぐにでも輸出が増えるものと期待していた。

ところが、それは10年先であることが判明。

「取らぬ狸の皮算用」に終わった。落胆も一入である。

中国の「外交巧者」にしてやられたのだ。

昨年11月10日、中韓が徹夜でまとめた中韓FTAは、中国の外交術に韓国がまんまとはまり込んだ結果であろう。

私は、昨年11月18日のブログで次のように「先読み」していた。以下に再録する。

「今回の中韓FTA(自由貿易協定)妥結は中味が乏しいようだ。

中韓の強い政治的な絆を日本に見せつける。

そういう『政治的ショー』の臭いが多分にする。

11月10日のAPEC会議での中韓首脳会議で発表された。劇的効果を演出したかったのだ。

両国の首脳会談2時間前まで、中韓は徹夜で協議を重ねていた。

何としても、中韓共通の『敵』である日本を牽制し、羨ましがらせたい狙いであったのだろう」。

「中国は、あれだけ批判してきた日本と首脳会談を実現した。

韓国は、中国の『裏切り』と見る。韓国メディアは、中韓の『歴史同盟』に亀裂という受け取り方をしている。

中国は、韓国の懸念に応えなければならない。

そこで、格好の手みやげが『中韓FTA妥結』なったとも見られる」。

「私がこうした見立てをする理由は、次の点にある。

FTA自由化率(貿易品目の関税撤廃)は、92%(韓国)と同91%(中国)の実現期間が20年と長いことである。

20年後の『入籍』を約束するような結婚話なのだ。

工業製品の競争力では、中国が目下のところ不利である。

だが、20年もかければ中韓が逆転できると見ているはずだ。

中国は、自国産業に被害が及ばぬ形で韓国とのFTAを妥結させた。

中国にとって、この程度の深慮遠謀は得意中の得意である。

韓国は、日中首脳会談による外交的な孤立を恐れ、まんまと中国にしてやられたと思う」。

私の自慢めいた内容で気恥ずかしい。

だが、誰でも私のごとき年齢になると、だいたい中韓の思惑は透けて見えるもの。

「亀の甲より年の功」ということでお見過ごしいただきたい。

FTA効果半減


『朝鮮日報』(2月26日付け)は、次のようにその落胆ぶりを報じている。

① 「韓国政府が2月25日に仮署名した韓中自由貿易協定(FTA)では、韓国の主力輸出品目の多くが対中国貿易の関税免除対象から外されていた。

その結果、FTAの効果が半減し、韓国企業は相対的に不利だと指摘する声が上がっている。

無関税推進対象から外れた品目は数多い。

業界が次世代成長の起爆剤として推進している有機発光ダイオード(OLED)パネル、二次電池、サムスン電子やLG電子が10年近く世界1位を誇るカラーテレビなどが代表的な例だ。

リチウムイオン電池は関税率が現在12%だが、5年後にやっと9.6%に引き下げられる程度だ」。

この記事を読むと、明らかに韓国は不利である。

韓国は、こんな内容のFTAをなぜ「有り難がって」受け入れたのか。

むしろ、疑問はここに向けられる。

上記の私のブログ(昨年11月18日)で示したように、韓国が日中首脳会談実現で孤立感を深め、浮き足だっていたところを、見事に中国に狙われた。

中国は、韓国の孤立感を誘うために日中首脳会談を設定したとも言える。

こうなると中国は、なかなかの「曲者」である。

日中首脳会談実現で、膠着した日中関係に少々の温風を吹かせてみせたからだ。

現実は、逆の仕掛けを行っている。

中国外交は、転んでもただで起きないところがある。

現在、日本の歴史認識を非難している。

形ばかりとは言え、首脳会談をやった日本に対して、再び斬りかかってくる姿は尋常なものではない。

中国とは、こういう「二刀流」遣いを平気でやる国家だ。

それを認識する必要がある。

日本の国際的な評価を貶めて、自らの地位向上を謀る。

個人として見れば、爪弾きされる所業を恥じることもなくやっている。

気の毒なほど精神性の貧しい国家である。

やっぱり、「永遠の発展途上国」に止まらざるをえない国家パターンなのだ。

② 「韓国の主力輸出品目である液晶表示装置(LCD)パネルは発効後9年目から関税が下がることになった。

韓中FTAが今年末に発効しても、関税引き下げ効果が生じるのは2024年になってからだ。

業界関係者は、『中国のディスプレー・メーカーの技術力向上は速いため、それを考えると9~10年後の無関税適用は事実上、意味がほとんどない』と話す。

冷蔵庫も500リットル以下の小型冷蔵庫だけが10年後に関税撤廃となり、サムスン電子などが中国へ主に輸出しているプレミアム大型冷蔵庫は20年後から関税がなくなる」。

技術革新の激しい工業製品について、9~10先の無関税化は意味をなさないのだ。

中国はその間に力を付けて、韓国製品に対抗しようという狙いである。

こういう内容のFTAを中韓は結んだ。

日本がこんなFTAを結ぶはずがない。

中韓は、日本を含む日中韓3ヶ国のFTA締結が理想としている。

だが、日本にとってはメリットが少なく、デメリットだけが目立つ片務的な内容である。

日中韓FTAを結ばなかったのは大正解である。

「韓国が競争力を持つ主な輸出品目が、韓中FTAで関税引き下げのメリットを得られないことは、昨年11月の実質的な妥結宣言直後から問題になっていた。

韓国の主力輸出品目である自動車はもちろん、

韓流ブームに乗って中国人に人気のスキンケア化粧品・シャンプー・リンスなどの生活用品、船舶用エンジンなどの高付加価値製品もすべて、

高いレベルでの配慮が必要な『高度センシティブトラック』に指定され、無関税の恩恵が受けられない」。

自動車や化粧品など中国で人気の韓国製品が、すべて「高度センシティブトラック」という棚に上げられてしまった。

主力製品が、関税引き下げと無関係なFTAに、実質的な意味があるのか。

韓国のメディアが、不満を述べるのはもっともである。

中国は工業製品では「無傷」のままでFTAを結んだ。

この裏には、韓国が国内農業を保護するという要因が強く、中国との交渉で強く出られなかった側面がある。

だが、韓国の雇用改善という課題を考えれば、別の選択もあったはずだ。

朴大統領は、「経済無策」のレッテルと張られるに違いない。


②韓国、「中韓FTA仮署名」工業品輸出の実利は「ゼロ」

2015年03月10日 14時32分15秒 | Weblog

②韓国、「中韓FTA仮署名」工業品輸出の実利は「ゼロ」

 勝又壽良の経済時評

 週刊東洋経済元編集長の勝又壽良

 中国の政治宣伝


『中央日報』(2月27日付け)は、コラム「韓中FTA、付加価値が低い『半分協定』」を掲載した。

筆者は、チョン・インギョ仁荷大教授である。

④ 「22章で構成された協定文は外形上、過去5年間に韓国が締結してきた協定と似ている。

内容に差があるとすれば、国内の農業界の反発を考慮し、低いレベルの市場開放とお互い負担のない内容を中心に協定を構成したという点だ。

『与え過ぎず受け過ぎない』という中級レベルの協定である。

両国ともに多数の関心品目が、10年前後の長期関税撤廃品目に規定されたため、履行5年ほど経ってこそ協定の恩恵を期待できるだろう。

韓国の対中国10大輸出品目のうち、中国が発効と同時に撤廃する品目は、わずか1つ(LCDパネル:注、朝鮮日報記事では9年後)だけであり、

FTAの恩恵が期待されてきた石油化学、自動車、掘削機、二次電池など多数の品目は協定から除外された」。

中韓FTAは、「与え過ぎず受け過ぎない」という内容と規定している。

中韓の相手国への輸出構造が劇的に変わることなく、変化のないFTAだというのだ。

辛うじて、5年顔あたりからぼつぼつFTAの効果が期待される。

毒にも薬にもならない程度のFTAである。

大騒ぎして「中韓の新時代が来る」。こういうのは中国側である。

政治的に利用しようという魂胆が明らかである。

いかにも中国的な「策謀」を感じる。

中韓FTAの内容が正しく伝えられていない結果、とんでもない「誤報」が流れている。

中国では、日本製品が無関税韓国製品に席巻される。こういう報道まで現れたのだ。

中国メディア『新聞晨報』(2月26日付け)は、次のように伝えた。

⑤ 「中韓FTAが、日本にとって相当な刺激になることは間違いない。

中国市場を席巻する日本製品に取って代わり、韓国製品が幅広く普及するだろう。

また、米国が推進する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を、中国が潜在的にけん制することにもなる。

韓国はアジア・太平洋域内における米国の影響力低下を後押しすることになる

韓国は米中の架け橋となり、域内経済の統合が加速するとみられる」。

この報道こそ、中国が狙った「中韓FTA」の政治的効果である。

日本を慌てさせ、TPPを牽制するという途方もない政治的な「エコー」を期待しているのだ。

すでに、中韓FTAの内容がきわめて「空虚」なことが明らかになっている。

TPP12ヶ国の参加する市場(世界のGDPの40%)が動き出せば、中韓FTAなど歯牙にもかけないものになる。

韓国が、早急なTPP参加の意欲を示していること自体が、TPPの実力を端的に示唆しているのだ。

中韓FTAの政治的な宣伝効果と言えば、『人民網』の「舌」が欠かせない。

何を語るか、毎度の宣伝とは言え、一応は聞いておくべきだろう。

『人民網』(2月27日付け)は、「中韓FTAの5つの効果」を次のように報じた。

第1に、世界の交渉への効果。


第2に、地域協力効果。


第3に、二国間の模範的効果。


第4に、コネクティビティ(注:接続性)効果。


第5に、懸け橋・紐帯効果。

一々、説明するのも煩雑である。

同じことを繰り返し言っているだけだ。

一言に要約すれば、中韓FTAがひな形になって、中国を軸とする多層的なFTAを結成したい。

そういう「精神論」を主張しているだけだ。

ここで中国は重要なことを見落としている。

中国自らが、高度の工業国家でない点だ。

その中国が、他国を誘ったFTAによって効果を上げられるであろうか。

中国は、発展途上国型経済である。

「ドングリの背比べ」でFTAを結成しても、有益な分業関係による利益が期待できるか疑問なのだ。

TPPは、日米という高度工業国家を軸にして発展途上国も参加する。

水平分業と垂直分業がうまくかみ合い、長短相補う貿易構造が樹立可能である。

もう一点、中国は軍事的に他国から警戒されている点である。

中国に経済的な核を握られて、有無を言わせない軍事的な圧力がかかるリスクを計算することが不可欠である。

中国の隣国であるベトナムが、なぜTPPに参加しようとしているのか。

中国と経済的な関係を薄めたいからだ。

それが、ベトナムの安全保障になると考えている。

中国が、中韓FTAを足がかりにして多層的なFTA結成を望むのならば、現在の政治システムを改めて、開放的な国家づくりを目指す必要があろう。

それは不可能に違いない。

よって、中国が希望するFTA結成は実現することはあるまい。

ただの夢想に終わる運命であろう。

中国はそれほど、周辺国から軍事的に警戒されている国に成り下がった。

換言すれば、軍事的に危険な国家に転落したのである。