日中歴史共同研究:内容報道のNHK放送 中国国内で遮断/毎日新聞

2010-02-01 07:17:34 | 世界
【北京・浦松丈二】中国国内で31日夜、日中歴史共同研究について報道したNHKの海外向け放送の画面が真っ黒になり、数秒にわたって視聴できなくなった。公表が見送られた戦後史に関連する天安門事件(89年)の映像を中国当局が遮断したためとみられる。

 中国メディアは同日夜、「日中歴史共同研究委員会」が報告書を初めて発表したとのニュースを簡単に報じているが、詳しい内容は一切伝えていない。研究内容が国内に波紋を広げ、中国政府批判につながることを警戒している模様だ。
http://mainichi.jp/select/world/news/20100201k0000m030090000c.html

日中歴史共同研究:中国側に変化の兆し 世論への浸透未知数/毎日
 31日に公表された初の日中歴史共同研究報告書は、中国側の強い要請で戦後史部分が非公表となり、両国の歴史認識の溝を埋めるために始めた事業の限界と複雑さを露呈する結果となった。一方で、中国側の論文には、中国共産党の役割を軸とする革命史観から脱却して実証主義的に記述する試みもみられ、宣伝色の強かった歴史研究の変化の兆しもみられた。【中澤雄大、北京・浦松丈二】

 研究成果は当初、日中平和友好条約締結30周年に当たる08年中の発表を目指したが、1年以上遅れた。ある日本側研究者は「現代史部分の認識の差が原因。天安門事件の評価など、共産党指導部の正当性を揺るがす問題に触れることを中国側が恐れた」と指摘する。

 論文執筆過程の討議要旨の公表も見送られた。再三の合意不履行は、歴史研究を「愛国教育」の重要な柱と位置づける中国政府が委員に圧力をかけているとの見方も出ている。

 両国は第2期共同研究として継続することで一致したが、両国の国内世論が今回の報告内容をどう受け取るかは未知数だ。日中外交当局者は「継続には双方の国民感情の安定が不可欠」と指摘する。

 中国国内の対日世論は、共同研究のきっかけとなった反日デモ(05年)当時よりは好転している。だが、国内に遺族が生存する南京虐殺事件で日本に譲歩したと受け取られかねない記述は不可能だ。

 南京虐殺については、犠牲者数の根拠だけでなく、虐殺や強姦(ごうかん)、略奪の実態を詳細に描いた。細菌戦を展開した731部隊について簡単に触れた程度なのとは対照的で、日本国内に虐殺自体を否定する意見が存在することを念頭に置いたものとみられる。

 中国側の革命史観にとらわれない記述で注目されるのは、抗日戦争での共産党と国民党との関係性だ。「国共両党の間にいろいろ摩擦が起きているが、両党が協力して日本に抗戦する大局は一貫して変わらなかった」と記述した。

 中国では中台関係改善の流れを受け、抗日戦争での国民党の役割を見直す動きが進んでいる。報告書は、国民党が中国を代表して行った列強との交渉や当時の国際情勢にも多くの紙幅を割き、日中戦争をより広い視野からとらえている。

 日本の敗戦についても「歴史の転換点」と指摘し、「平和発展の道を歩み出した」と評価した。これは日本の「軍国主義化」を警戒する中国の若者を中心とした「愛国世論」とは異なっている。

 だが、こうした歴史研究は国内で論議を呼ぶ可能性もあり、革命史観に基づく歴史教科書や大衆向けドラマに反映されるには相当な時間がかかりそうだ。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100201ddm002010154000c.html

日本が侵略認めると強調 中国紙、歴史研究で/産経
 1日付の一部中国紙は日中両国の有識者による歴史共同研究の報告書公表について「日本側は対中戦争の性格を侵略戦争と認めた」(新京報)などと両国が一致した点を重点的に伝えた。一方、共産党機関紙、人民日報や光明日報など党や政府の影響力が強い新聞は、報告書公表を一切報じていない。

 新京報は南京大虐殺についても「(日本側は)集団虐殺事件と認めた」と報じ、日本で侵略戦争の責任を否定する傾向がある中で学術的に共通認識が深まったことは両国関係に有益との中国側研究者の見解を紹介した。

 両国間で隔たりのある南京大虐殺の犠牲者数について日本側が「4万人、2万人などさまざまな推計がある」と記述したことには触れなかった。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100201/chn1002011304003-n1.htm

南京虐殺『2~20万人』『30万以上』  歴史認識日中隔たり/東京
 日中両国の有識者による初の歴史共同研究の成果をまとめた報告書が三十一日、公表された。焦点の南京事件(一九三七年)については、日本側も「日本軍による虐殺事件」と認定したが、犠牲者数をめぐっては、日本側が「二十万人を上限に四万人、二万人などの推計がある」と指摘したのに対し、中国側は「三十万人以上」と主張。近現代史を中心に両国の歴史認識の違いがあらためて浮き彫りになった。 

 報告書は「古代・中近世史」と「近現代史」の二部構成で計約五百五十ページ。両国の担当者がそれぞれの立場から共通の時代、テーマについて執筆した論文を併記した。近現代史のうち、天安門事件(八九年)などが含まれる「戦後史」については、国内世論への影響を懸念する中国側の要請で報告書に盛り込まれなかった。

 報告書では、特に近現代史で対立点が目立った。日中戦争全体での中国人死傷者数に関しては、日本側は全体像を示さなかったが、中国側は「不完全な統計」としながらも「約三千五百万人」と言及した。

 従軍慰安婦問題と、細菌研究の特殊部隊「七三一部隊」については、日本側が詳しい説明を避ける一方、中国側は「日本軍は慰安所を設け、強制的に多くの女性を性奴隷とした」「人体実験、生体解剖を実施」などと踏み込んだ。

 日中戦争の解釈については、日本側が「戦場となった中国に深い傷跡を残した。原因の大半は日本側がつくり出した」と加害責任を明確にした。一方、中国側は「日本軍国主義による全面的な侵略戦争」と断定した。

◆発表自体が成果
 歴史共同研究委員会の日本側座長・北岡伸一東大教授の話 日中に歴史認識で大きな差があるのは周知の事実だが、両国の研究者が一緒の場に集まって議論し、それぞれの見解を互いに示し合い、発表にこぎつけることができたのは成果だ。

 落ち着いた議論ができたが、中国側の議論に納得できないことも多かった。中国側の強い要請により、近現代史のうち戦後史が発表できなかったのは残念だ。メディアは極端な意見しか取り上げず、大多数の歴史家の考えは紹介されにくい。今回は極端でない意見を示すことができた。そういうことを国民に知ってもらえればいい。今後も専門家の間で淡々と議論を積み重ね、共同研究を続けていくことが望ましい。

◆相互理解の環境整備を
 <解説>日中両国の歴史認識の溝は埋まらなかった。三十一日に公表された歴史共同研究の報告書は、南京大虐殺の犠牲者数などの争点で従来の見解をぶつけ合うだけに終わった。

 共同研究は二〇〇六年、小泉純一郎首相の靖国参拝で悪化した日中関係の打開を図る安倍政権の提案でスタート。「冷静な研究を通じて学術的に歴史の事実を明らかにし、歴史問題をめぐる対立感情を和らげる」(報告書の序文)ことが目的だった。だが、研究者同士とはいえ、共産党の一党独裁体制を維持する中国と、学問の自由が保障されている日本が、同じ土俵で議論するのは無理な話だった。

 中国側は一時、戦後史以外の論文公表も拒んだ。最終会合を二度にわたって延期させたのも、北京五輪などを前に、歴史問題で国民を刺激するのを恐れたためとみられている。

 両国の見解が一つの報告書にまとめられたのは「画期的」(外務省幹部)かもしれない。ただ、中国側の要請で討議記録が明らかにされなかったため、研究の成果がどのように各論文に反映されたのか分からず、言いっ放しの感は否めない。

 両国は共同研究を継続する方針を確認している。政治体制の違いに翻弄(ほんろう)される愚を繰り返さないためには、もっと純粋な研究環境を整える必要がある。 (政治部・佐藤圭)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010020102000082.html

【主張】日中歴史共同研究 「南京虐殺」一致は問題だ/産経新聞
日中の有識者による歴史共同研究の報告書が発表された。両国の歴史に対する考え方の違いが一段と明確になった。

 この共同研究は、平成18年10月の安倍晋三首相(当時)と胡錦濤国家主席の合意に基づき、3年がかりで行われた。両国の認識の隔たりが大きく、両論併記の形がとられたのは当然である。

 近現代史の部分を読むと、日本側の記述はおおむね客観的な資料に沿って書かれている。これに対し、中国側の記述は中国共産党史観の域をほとんど出ていない。

 ただ、南京事件(昭和12~13年)のくだりで、中国側の主張に引きずられているのは問題だ。

 日本側の記述は「日本軍による捕虜、敗残兵、便衣兵、及び一部の市民に対して集団的、個別的な虐殺事件が発生し、強姦(ごうかん)、略奪や放火も頻発した」と「虐殺」を認めている。その数は、東京裁判で認定された「20万人以上」、中国が主張する「30万人以上」などの数字を挙げ、「日本側の研究では20万人を上限として、4万人、2万人などさまざまな推計がなされている」としている。

 しかし、「南京虐殺」や「南京大虐殺」は当時の中国国民党が宣伝したものであることが最近の実証的な研究で分かってきた。日本軍による集団的な虐殺の有無も、はっきりしていない。こうした日本側の研究状況を過不足なく正確に記述すべきだった。

 「南京虐殺」で認識が一致したといっても、共同研究に参加した学者間でのことだ。それがあたかも歴史の真実であるかのように、日本の教科書などで独り歩きするようなことは避けたい。

 今回、中国側が戦後史の部分の発表を拒否し、それに日本側が同調したことも問題である。このため、日本側の研究論文まで非公開にされてしまった。中国当局は天安門事件(1989年)に関する厳しい言論統制を行っており、日本側の論文が公表されることで当局への批判が誘発されることを恐れたためとみられる。

 日中両国の共同研究の成果は、等しく両国民に公開されるのが筋だ。日本政府は改めて中国側に公表を求めるべきである。

 共同研究は今後も続けられる。そもそも、独裁国家の中国と学問の自由がある日本との間で、大きな成果は期待できない。日本側の学者はこのことをよくわきまえて共同研究に臨む必要がある。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100201/plc1002010321006-n1.htm

【日中歴史研究】私はこう読む 藤岡信勝・拓殖大教授 研究無視の政治論文/産経
南京事件について虐殺数を「20万人を上限として4万人、2万人」などとする日本側の報告書は、この10年間に進展した学問的研究を一切無視した、問題の多い内容だ。

 事件をめぐっては、10年前に日本「南京」学会が発足し、事件の客観的証言者とされた西欧人ジャーナリストが中国国民党宣伝部に雇われていた事実が明らかになるなど、虐殺自体の存在を疑わせる証拠がいくつも出てきた。しかし、報告書では一切これらに言及せず、逆に「大虐殺」を主張する研究者の論文はふんだんに利用している。

 学術論文は、たとえ自分に都合の悪い研究であってもその結論を引用し、コメントする義務がある。それを果たしていない今回の報告書は、日中歴史共同研究という枠組みの中で、政治的妥協を学問めかして書いただけの政治論文と言わざるを得ない。(談)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100201/plc1002010009001-n1.htm

 【日中共同歴史研究報告書】南京事件犠牲者数一致せず 戦後史は見送り
日中歴史共同研究報告書(要旨)/毎日新聞 ほか

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日中歴史共同研究・目次・序(PDF11ページ)
日中歴史共同研究・日本語論文(PDF305ページ)
日中歴史共同研究・中国語論文(PDF216ページ)
*報告書の入手方法は
日中歴史共同研究 日本側事務局
 事務局長 若山 喬一
 電話:03-3503-7795
 e-mail:k.wakayama@jiia.or.jp
 事務局長補佐 畑野 勇
 電話:03-3503-7802(内線233)
 e-mail:hatano@jiia.or.jp
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