■「地村・蓮池さん 拉致工作 2幹部浮上」の記事を読んで
荒木和博
今日付の朝日新聞に1面トップで「地村・蓮池さん 拉致工作 2幹部浮上 ーー警察当局調べ 総書記の直属」という記事が掲載されていました。最近拉致問題の記事が少ない中でこのように紙面をさいてくれたことに感謝しながら、一方読んでいて複雑な思いにとらわれました。
記事の中には「警察当局は、金総書記と李・元部長がともに写った写真なども確認しており、金総書記が拉致について何らかの情報を持っている可能性があるとみている」とありました。そして、最後は「指示にかかわった幹部の存在が浮かんだことで、北朝鮮が2人(李完基・元対外情報部長と姜海竜・元副部長)の現在の消息や、金総書記と2人の関係について、どう説明するかなどが今後の日朝交渉の焦点となる」と結ばれています。
基本的にはこの記事の内容には間違いはないと思います。そして、警察もそのように考えているのでしょう。しかし、問題は、「それじゃあ、どうやって助け出すんだ?」ということなのです。
この記事の前提で、政府が本当にやる気があるなら、警察が北朝鮮に乗り込んで2人の幹部あるいはに金正日に事情聴取をしなければならないはずです。それができると思っているのか。そんなことはないでしょう。そして、外務省は交渉の中で「こういう情報があるが」と聞くのが関の山ではないでしょうか。
そんなことに北朝鮮が答える訳はありませんし、答えたところで、聞くのは地村さん、蓮池さん拉致に関わる真相究明のことだけです。それ以外の拉致被害者について何も出てくるはずはありません。そして、これと別筋で拉致被害者の救出をしようとしているかと言えば、ほとんどノーに近いというのが日本の現実です。
政府はこの虚構をいつまで続けるつもりなのでしょうか。助ける意志や能力がないならないで正直に言うべきであり、「一所懸命やっています」と言って国民に期待を持たせるだけなら、戦前の「大本営発表」と何も変わることはありません。やる気があるのであれば、もっと具体的な策が講じられるはずです。お役所にもそれぞれの官庁に優秀でやる気のある人間は山ほどいるのですから、彼らをもっと活用すべきだと思います。もちろん自衛隊も同様でしょう。
なお、記事の内容について一言言えば社会面の最後のところで「捜査幹部が腹立たしいのは『政治的な思惑で事件を利用しようとする動きがあること』だ。捜査をさらに困難にする要因は少なくない」とあることです。これは、要は「強硬な主張をする連中がいるから北朝鮮が話し合いに乗ってこない」ということなんでしょうが、語った警察の幹部は「役所の仕事をじゃまするな」と言いたいのでしょうか。それなら、助けられなかったときに警察庁の屋上で切腹でもする位の責任感を持っているのか。そうではないと思います。
警察幹部の発言も、記事のこの結論も、何か勘違いしているのではないかという気がしてなりません。
特定失踪者問題調査会ニュース
---------------------------------------------------------
〒112-0004 東京都文京区後楽2-3-8 第6松屋ビル401
Tel 03-5684-5058 Fax 03-5684-5059
email: chosakai@circus.ocn.ne.jp
調査会ホームぺージ: http://www.chosa-kai.jp
戦略情報研究所ホームページ: http://www.senryaku-jouhou.jp
発行責任者 荒木和博 (送信を希望されない方、宛先の変更は
kumoha351@nifty.com 宛メールをお送り下さい)
*******************************************
地村・蓮池さん拉致工作、2幹部浮上 総書記の直属
2008年03月11日朝日新聞
北朝鮮による日本人拉致事件で、地村保志さん(52)夫妻と蓮池薫さん(50)夫妻の拉致に関与したとされる北朝鮮の工作機関「対外情報調査部」(現35号室)の幹部2人が、実行犯に拉致を指示した疑いがあることが10日、警察当局の調べでわかった。警察当局はこの幹部2人が金正日総書記の側近だったとみている。一連の拉致事件で金総書記と直接接点のある政府幹部の関与疑惑が浮上したのは初めてで、立件に向けた詰めの捜査を進めている。日本側が「拉致問題の進展」を求めている日朝国交正常化交渉にも大きな影響を及ぼしそうだ。
関係者によると、幹部は対外情報調査部の李完基(イ・ワンギ)・元部長と姜海竜(カン・ヘリョン)・元副部長。これまでの調べで、2人はそれぞれ部長、副部長だった78年ごろ、日本人の拉致を計画、指示した疑いが持たれている。調査部の工作員辛光洙(シン・グァンス)容疑者(78)=地村さん夫妻と原敕晁(ただあき)さんを拉致した容疑で国際手配=や通称チェ・スンチョル容疑者=蓮池さん夫妻拉致容疑で国際手配=らに男女のアベックの拉致を指示し、実行させた可能性がある。地村さん夫妻は78年7月7日に福井県小浜市で、蓮池さん夫妻は7月31日に新潟県柏崎市でそれぞれ拉致された。
警察当局は調査部の実態解明を進める過程で、今年2月中旬、78年に北朝鮮に拉致された韓国の女優崔銀姫(チェ・ウニ)さんから事情を聴いた。関係者らの証言とも総合した結果、(1)調査部は金総書記直属の機関で、拉致を計画・実行する部門だった(2)李・元部長らが拉致を指示する立場にあった(3)元部長らが地村、蓮池両夫妻の拉致について「指示したのは自分だ」と関係者に話している――ことが分かり、地村、蓮池両夫妻の拉致を指示した疑いが強まったという。警察当局は、金総書記と李・元部長がともに写った写真なども確認しており、金総書記が拉致について何らかの情報を持っている可能性があるとみている。
警察当局は元部長らについて国外移送目的略取、国外移送などの容疑を固めるため、さらに複数の関係者から事情を聴くなどの捜査を進めている。
日本政府は、「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決」するとの日朝平壌宣言(02年9月)に基づき、6者協議の日朝国交正常化作業部会などを通じて交渉を進めてきた。北朝鮮側には、すべての拉致被害者と特定失踪(しっそう)者の生存者の全員帰国、真相究明、拉致実行犯の引き渡しを要求している。北朝鮮側は、02年9月に小泉首相(当時)が訪朝した際に、金総書記が「特殊機関の一部の妄動主義者による犯行」と述べたが、その後は「拉致問題は解決済み」との立場を取ってきた。
指示にかかわった幹部の存在が浮かんだことで、北朝鮮が2人の現在の消息や、金総書記と2人の関係について、どう説明するかなどが今後の日朝交渉の焦点となる。ただ、日朝国交正常化作業部会は、核問題をめぐる6者協議の停滞もあり、昨年10月以来、開かれていない。
北朝鮮は、核開発の申告などの見返りに、米国のテロ支援国家指定の解除を求めているが、日本政府は解除に当たって拉致問題の進展を考慮するよう米国側に要請。米政府も、2月に訪日したライス国務長官が拉致問題について「日本と相談していく」と述べている。
http://www.asahi.com/national/update/0310/TKY200803100332.html
荒木和博
今日付の朝日新聞に1面トップで「地村・蓮池さん 拉致工作 2幹部浮上 ーー警察当局調べ 総書記の直属」という記事が掲載されていました。最近拉致問題の記事が少ない中でこのように紙面をさいてくれたことに感謝しながら、一方読んでいて複雑な思いにとらわれました。
記事の中には「警察当局は、金総書記と李・元部長がともに写った写真なども確認しており、金総書記が拉致について何らかの情報を持っている可能性があるとみている」とありました。そして、最後は「指示にかかわった幹部の存在が浮かんだことで、北朝鮮が2人(李完基・元対外情報部長と姜海竜・元副部長)の現在の消息や、金総書記と2人の関係について、どう説明するかなどが今後の日朝交渉の焦点となる」と結ばれています。
基本的にはこの記事の内容には間違いはないと思います。そして、警察もそのように考えているのでしょう。しかし、問題は、「それじゃあ、どうやって助け出すんだ?」ということなのです。
この記事の前提で、政府が本当にやる気があるなら、警察が北朝鮮に乗り込んで2人の幹部あるいはに金正日に事情聴取をしなければならないはずです。それができると思っているのか。そんなことはないでしょう。そして、外務省は交渉の中で「こういう情報があるが」と聞くのが関の山ではないでしょうか。
そんなことに北朝鮮が答える訳はありませんし、答えたところで、聞くのは地村さん、蓮池さん拉致に関わる真相究明のことだけです。それ以外の拉致被害者について何も出てくるはずはありません。そして、これと別筋で拉致被害者の救出をしようとしているかと言えば、ほとんどノーに近いというのが日本の現実です。
政府はこの虚構をいつまで続けるつもりなのでしょうか。助ける意志や能力がないならないで正直に言うべきであり、「一所懸命やっています」と言って国民に期待を持たせるだけなら、戦前の「大本営発表」と何も変わることはありません。やる気があるのであれば、もっと具体的な策が講じられるはずです。お役所にもそれぞれの官庁に優秀でやる気のある人間は山ほどいるのですから、彼らをもっと活用すべきだと思います。もちろん自衛隊も同様でしょう。
なお、記事の内容について一言言えば社会面の最後のところで「捜査幹部が腹立たしいのは『政治的な思惑で事件を利用しようとする動きがあること』だ。捜査をさらに困難にする要因は少なくない」とあることです。これは、要は「強硬な主張をする連中がいるから北朝鮮が話し合いに乗ってこない」ということなんでしょうが、語った警察の幹部は「役所の仕事をじゃまするな」と言いたいのでしょうか。それなら、助けられなかったときに警察庁の屋上で切腹でもする位の責任感を持っているのか。そうではないと思います。
警察幹部の発言も、記事のこの結論も、何か勘違いしているのではないかという気がしてなりません。
特定失踪者問題調査会ニュース
---------------------------------------------------------
〒112-0004 東京都文京区後楽2-3-8 第6松屋ビル401
Tel 03-5684-5058 Fax 03-5684-5059
email: chosakai@circus.ocn.ne.jp
調査会ホームぺージ: http://www.chosa-kai.jp
戦略情報研究所ホームページ: http://www.senryaku-jouhou.jp
発行責任者 荒木和博 (送信を希望されない方、宛先の変更は
kumoha351@nifty.com 宛メールをお送り下さい)
*******************************************
地村・蓮池さん拉致工作、2幹部浮上 総書記の直属
2008年03月11日朝日新聞
北朝鮮による日本人拉致事件で、地村保志さん(52)夫妻と蓮池薫さん(50)夫妻の拉致に関与したとされる北朝鮮の工作機関「対外情報調査部」(現35号室)の幹部2人が、実行犯に拉致を指示した疑いがあることが10日、警察当局の調べでわかった。警察当局はこの幹部2人が金正日総書記の側近だったとみている。一連の拉致事件で金総書記と直接接点のある政府幹部の関与疑惑が浮上したのは初めてで、立件に向けた詰めの捜査を進めている。日本側が「拉致問題の進展」を求めている日朝国交正常化交渉にも大きな影響を及ぼしそうだ。
関係者によると、幹部は対外情報調査部の李完基(イ・ワンギ)・元部長と姜海竜(カン・ヘリョン)・元副部長。これまでの調べで、2人はそれぞれ部長、副部長だった78年ごろ、日本人の拉致を計画、指示した疑いが持たれている。調査部の工作員辛光洙(シン・グァンス)容疑者(78)=地村さん夫妻と原敕晁(ただあき)さんを拉致した容疑で国際手配=や通称チェ・スンチョル容疑者=蓮池さん夫妻拉致容疑で国際手配=らに男女のアベックの拉致を指示し、実行させた可能性がある。地村さん夫妻は78年7月7日に福井県小浜市で、蓮池さん夫妻は7月31日に新潟県柏崎市でそれぞれ拉致された。
警察当局は調査部の実態解明を進める過程で、今年2月中旬、78年に北朝鮮に拉致された韓国の女優崔銀姫(チェ・ウニ)さんから事情を聴いた。関係者らの証言とも総合した結果、(1)調査部は金総書記直属の機関で、拉致を計画・実行する部門だった(2)李・元部長らが拉致を指示する立場にあった(3)元部長らが地村、蓮池両夫妻の拉致について「指示したのは自分だ」と関係者に話している――ことが分かり、地村、蓮池両夫妻の拉致を指示した疑いが強まったという。警察当局は、金総書記と李・元部長がともに写った写真なども確認しており、金総書記が拉致について何らかの情報を持っている可能性があるとみている。
警察当局は元部長らについて国外移送目的略取、国外移送などの容疑を固めるため、さらに複数の関係者から事情を聴くなどの捜査を進めている。
日本政府は、「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決」するとの日朝平壌宣言(02年9月)に基づき、6者協議の日朝国交正常化作業部会などを通じて交渉を進めてきた。北朝鮮側には、すべての拉致被害者と特定失踪(しっそう)者の生存者の全員帰国、真相究明、拉致実行犯の引き渡しを要求している。北朝鮮側は、02年9月に小泉首相(当時)が訪朝した際に、金総書記が「特殊機関の一部の妄動主義者による犯行」と述べたが、その後は「拉致問題は解決済み」との立場を取ってきた。
指示にかかわった幹部の存在が浮かんだことで、北朝鮮が2人の現在の消息や、金総書記と2人の関係について、どう説明するかなどが今後の日朝交渉の焦点となる。ただ、日朝国交正常化作業部会は、核問題をめぐる6者協議の停滞もあり、昨年10月以来、開かれていない。
北朝鮮は、核開発の申告などの見返りに、米国のテロ支援国家指定の解除を求めているが、日本政府は解除に当たって拉致問題の進展を考慮するよう米国側に要請。米政府も、2月に訪日したライス国務長官が拉致問題について「日本と相談していく」と述べている。
http://www.asahi.com/national/update/0310/TKY200803100332.html
ま、B層右翼界的には、駝鳥が砂に頭を突っ込んだ状態でいる事が求められてる訳で。
そういう意味で、結構な記事だし、北からの勲章で有名な工作員のお仲間が興奮してるのも結構じゃないか?
国益からは程遠いが。