『週刊金曜日』発、読者のみなさまへ
~緊急市民集会のパフォーマンスと『週刊新潮』の記事を発端とした一連の経緯について
「『皇室中傷』芝居」との大見出しで、本誌主催の緊急市民集会(一一月一
九日)でのパフォーマンスの一部を「不敬で下劣」と批判した『週刊新
潮』(一二月七日号、一一月三〇日発売)の記事を発端として、本社には
この間、二十数本の抗議・質問の電話が鳴り、政治結社など六団体が直
接の抗議行動に訪れたほか、二十数台の街宣車が本社の入るビルの周囲
をめぐった。
一方、本社前には警視庁神田警察署の藍色のワゴン車が一台、四囲に
目を光らせる場所に終日配備され、師走に入ったばかりの、それでなく
とも慌ただしい出版社ひしめくビル街の一角に張りつめた風景を出現さ
せた。
抗議は、集会全体ではなく、電車の中吊り広告にも使われた「悠仁親
王は『猿のぬいぐるみ』『陛下のガン』も笑いのネタに」という、皇室
をめぐるパフォーマンスの一部の表現・言動に集中している。かつての
一時代を想起させる「不敬」という字句を磁力のようにして、氏名を名
乗らない者が大半の中、氏名のみならず住所・番地さえも電話口で告げ
て「皇室を崇拝する愛国者」と名乗る男性が言う。
「皇室を批判することは自由だが、下品な椰楡やからかいはまずい。あ
んた方がこんなことをやれば喜ぶのは自民党だけだ。やるならもっとま
ともな批判をしなさい」
政治結社など諸団体の直接的な抗議は、その印象から受ける強面の、
図太く頓れた声ではなく、むしろきちんと襟を正し、「言論の自由がある
国だから、批判は許す。あんたらがわれわれの主張とは相容れないこと
は分かっている。しかし節度がなければいけない」と、説諭めいた比較
的穏やかな「鉄槌」もあれば、エレベーター前の狭い空間から非常ドア
を突き破り寒空に響くような憤怒と激昂の怒号まで、取り囲む数人の公
安警察の存在に臆することなく、それらは展開された。一連の対応をし
たのは副編集長の土井伸一郎と同・片岡伸行の二人。直接行動は、本誌
発行人・佐高信の、本社と離れた個人事務所にも向けられた。
同様の抗議は「さる高貴なご一家」を上演してきた劇団「他言無用」に
も向けられ、同劇団は八日、ホームページに「お詫び」を掲載して皇室
パフォーマンスの「封印」を宣言した。インターネット上では「佐高の
実家に火をつけてやれ」とけしかける書き込みが氾濫した。埼玉で予定
されていた片岡の講演は埼玉県警が主催者に「街宣車が来るかもしれな
い」などと告げたことで急きょ中止に。本誌編集長・北村肇は苦悩する。
「本誌の言論に直接向けられた攻撃なら正面から受けて立つ。しかし今
回は違う。しかも、『新潮』の記事には事実誤認の部分があるとはいえ、
表現行為の一部に演技者自らが認めざるを得ない不適切な言動があった
のは事実。表現の自由の範疇とするのには無理がある」
名古屋で予定されていた一五日の「他言無用」の公演も中止を余儀な
くされた。
本誌はこれまで、タブーなき言論を標榜し、天皇制についても真正面
からの批判・論評を展開してきた。であるからこそ、人権侵害や差別に
つながる表現についてはこれを深慮し、行なわない方針を貫いてきた。
一三日朝、社員が会議室に集まった。これまでの経過と対応、社の見解を
めぐって最終的な詰めの議論が続いた。風刺とパロディ、笑いと人権、
判例、椰楡と中傷、言論・表現の自由…:・。
「本誌の言論とは直接の関わりがないが、集会主催者として真摯な対応
をし、率直な見解を表明すべきだ」
「パフォーマンスは全体としては温かな表現で、皇室批判を意図したも
のではないと思う。しかしそれが誰であれ、人権侵害につながる表現は
まずい。今回指摘された点を肝に銘じ、パフォーマンスを続けてほしい
という声もある。表現の幅を狭めてはまずい」「アドリブが多いパフォー
マンスや出演者の発言の細部にわたり事前に把握するのは無理だとして
も、一定の品位を保つよう綿密な打ち合わせをすべきだった」「読者から
『まずいことはまずいと表明することで信頼を高める。頑張れ』との声
も寄せられている」「正当な批判や主張をも自己規制する流れができては
まずい。そのためにもこの状況をきちんと受け止め、読者の理解を得る
必要がある」
そうした議論の末、まとめられたのが「集会主催者として配慮を欠い
たことを率直に反省しおわびする」とした見解の表明文書であり、この
誌面である。
「11・19」緊急市民集会について
このたび弊社主催の「教育基本法改悪、共謀罪、改憲」をテーマとした「ちょっと
待った!」緊急市民集会(11月19日開催)に関し、さまざまなご意見・ご批判を受け
ましたことについて、下記のとおり見解を表明いたします。
記
集会は、教育基本法の改悪や共謀罪の新設、改憲といった潮流に対して反対する立
場から、10人の出演者がそれぞれの思いを語ることをメインに開催したものです。そ
の内容については12月1日号の本誌で紹介したとおりです。しかしながら、集会の中
で演じられた皇室をめぐるパフォーマンスの一部に「人権上問題あり」と指摘・批判
される表現・言動がありました。
本誌はこれまで、皇室あるいは天皇制の問題について一切タブー視することなく正
面から取り上げ、さまざまな意見・論評を載せることで、社会的な議論を深めるべく
努力をして参りました。その一方で、人権侵害や差別につながる表現については、こ
れを行なわない方針を貫いてきました。
しかし、上記のパフォーマンスは、人権およびプライバシー上、一部の表現に行き
過ぎや不適切な言動があったことで、誤解や不快の念を生じさせてしまいました。集
会主催者として配慮を欠いたことを率直に反省しおわびするとともに、今後開催する
集会等の運営には十分に留意をして参ります。
言論・表現の自由は、民主主義社会の存立・発展のために、他の諸権利に優位する
ものとされています。弊社は今後も、タブーなき言論・表現活動が民主主義の成熟に
つながることを確信し、その実現のために努力していく所存です。
2006年12月13日
『週刊金曜日』発行人・佐高信
編集長・北村肇
「ちょっと待った!」緊急市民集会
本誌が主催した緊急市民集会は教育基本法の改悪、共謀罪の新設、改
憲に反対の立場から「ちょっと待った!」と題して、本誌編集委員・佐
高信が司会役となり城山三郎、小室等、田中優子、内橋克人の各氏をは
じめ、会場からの発言者を含めてそれぞれの思いを語ってもらうのがメ
インだった(一二月一日号で既報)。
時代の潮流への危機感の共有。会場となった日比谷公会堂は二〇〇〇人
弱の聴衆で埋まった。
集会が四時間半という長時間に及ぶため、三〇分ほどのパフォーマン
スを依頼した。諸事情で出演できなくなった方もいたことから、後半は
急きょ永六輔、矢崎泰久、中山千夏の三氏の掛け合いという形になった。
当日は「東京国際女子マラソン」の日。交通規制で永さんの到着が遅れ
たため、矢崎さんと中山さんが寸劇終了後に場をもたせるために舞台に
出て、即興による掛け合いをした。終了後、矢崎さんと中山さんの二人
のトークに移ってからしばらくして永さんが到着し、二人に合流した。
集会は午後四時前に終了。会場の外は終日雨が降っていた。
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悠仁親王は「猿のぬいぐるみ」! 「陛下のガン」も笑いのネタにした「皇室中傷」芝居 (週刊新潮 12月7日号 30-32ページ)
その瞬間、あまりの下劣さに観客も凍りついた。11月19日、日曜日。
東京の日比谷公会堂で開かれた『週刊金曜日』主催の「ちょっと待った!教育基本法改悪 共謀罪 憲法改悪 緊急市民集会」である。会場を埋めた2000人近い観客の前で、悠仁親王は「猿のぬいぐるみ」にされ、天皇陛下のご病気もギャグにされる芝居が演じられた……。
その日、東京は冷たい秋雨が降っていた。
高橋尚子が参加した東京女子マラソンがあり、交通規制が都内に敷かれていたその時間に、日比谷公園の一角にある日比谷公会堂でそのイベントの幕は開いた。
安倍政権への対立姿勢を鮮明にする左翼系週刊誌の『週刊金曜日』が主催する緊急市民集会である。同誌の本田勝一編集委員の挨拶から始まった集会で、問題のパフォーマンスがおこなわれたのは、午後2時半頃からである。
司会を務めるのは、同誌の発行人でもある評論家の佐高信氏だ。
「えー、今日は特別な日なんで、とても高貴な方の奥さんにも来ていただきました。この会場のすぐ近く、千代田区1丁目1番地にお住まいの方です」
佐高氏がそう言うと、舞台の右袖から、しずしずと美智子皇后のお姿を真似たコメディアンが出てきた。
黒いスカートに白のカーディガン、頭には白髪のかつらと、帽子に見立てた茶托を乗せている。そして、顔は顔面だけおしろいを塗って女装をした男である。
会場は、拍手喝采だ。
「本日は雨の中、多くの国民が集まっている中、なんの集会だかわかりませんが」と切り出すと、大きな笑いが起こった。
「そう言えば、先日、主人と一緒に、ソフトバンクの王貞治監督にお会いしたんです。王さんは“日の丸のおかげで優勝できました”と、仰っていましたが、この人が日の丸のおかげなんて言うのは、おかしいんじゃありませんか?」そう言って、コメディアンは笑いをとった。先日の園遊会で、王監督が、天皇陛下に話した内容を皮肉ったのだ。
続けて、「そう言えば、去年は皇室典範を変えるとか変えないとかで、マスコミがずいぶん騒がしかった。でも、ウチの次男のところに男の子が生まれたら、それがピタッとおさまっちゃいましたね」と悠仁親王のことを話題に。
そして、「今日は、実はその子を連れてきているの。ちょっと連れてきて」と言うと、スタッフが舞台の下からケープに包まれた赤ちゃんの人形のようなものを壇上の“美智子皇后”に無造作に手渡した。
よく見ると、猿のぬいぐるみである。
“美智子皇后”は、そのぬいぐるみに向かって、「ヒサヒト!ヒサヒト!」と声をかけながら、その猿の顔を客席に向けたり、ぬいぐるみの腕を動かしたりする。
場内は大爆笑。
大受けに満足の“美智子皇后”の芝居は続く。
やがて、抱いている猿のぬいぐるみに向かって、 「ヒサヒト! お前は、本家に男の子が生まれたら、お前なんか、イーラナイ!」と叫んで、舞台の左側にポーンと放り投げるパフォーマンスが演じられた。
だが、このシーンで場内は静まり返った。
若者の中にはクスクスと笑いを漏らす者もいたものの、さすがにここまで来ると観客の大半が凍りついてしまったのである。
そして、ここで登場したのが『話の特集』の元編集長でジャーナリストの矢崎泰久氏と、作家であり、タレントでもある中山千夏さんだ。二人は何十年もの間、行動を共にしている“同志”である。
★静まりかえる観客
「これはこれは、さる高貴なお方の奥さんではないですか。その奥さんにお聞きしたいことがあるんです」と、矢崎氏。
「天皇なんてもう要らないんじゃないですか。天皇なんてのは民間の邪魔になるだけでしょ?」と聞く二人に“美智子皇后”は、「あら、アタシは民間から上がったのよ」と、応える。
中山女史が、「そもそも天皇になれるのが直系の男子だけという方がおかしいでしょ? 男でも女でも、長子がなれるようにすべきじゃないでしょうか。それで、ハタチぐらいになったら、本人の意志で天皇になりたければなり、なりたくなければ一般人になってそれで終わり。普通の市民のように選挙権も持てるようにすればいい。そうしていけば、天皇家というウチはなくなります」と、持論を展開。
すると、矢崎氏が、「そう言えば、今日はご主人が来てませんね?」と“美智子皇后”に尋ねる。「ハイ」
「どこか悪いの?」と、矢崎氏。
「ハイ。知っての通り、病でございまして。マエタテセン?じゃなかった、えーと、あ、そうそう、前立腺を悪くしまして。あまり芳しくないのですよ」
「それはご心配でしょうねえ」
「そうなんです」
そんなやりとりが続いた後、突然、矢崎氏が、「それであっちの方は立つんですか?」と、聞く。
“美智子皇后”は面食らいながら、「私の記憶では……出会いのテニスコートの時は元気でございました」と、応える。
場内はシーンと静まりかえった。
天皇のご病気までギャグにされたことで、さすがに観客がシラけてしまったのだ。
「笑い声なんてなかったですよ。何て下劣なことを言うのか、と思わず拳を握りしめてしまいました」と、当日、イベントに参加した観客の一人がいう。
「その後も園遊会で来賓とお話をする両陛下の物真似で、笑いをとっていましたね。憲法や教育基本法の集会だと思っていたのに、結局、この人たちがやりたかったのは、安倍晋三のこきおろしと、皇室を中傷することだけだったんですね」
だが、あきれるばかりの内容は、まだ続いた。
今度は、元放送作家でタレントの永六輔氏が舞台に登場。永氏は、「ここ(日比谷公会堂)は、昔、社会党の浅沼稲次郎さんが刺殺されたところなんです」「君が代は、実は歌いにくい曲なんですよ」などと語り、アメリカの「星条旗よ永遠なれ」のメロディーで『君が代』を歌うというパフォーマンスを見せるのである。
当日、集会に来ていた白川勝彦・元自治大臣がいう。
「永六輔さんが、はっきりとした歌声で、君が代を『星条旗よ永遠なれ』のメロディーで歌いました。うまかったので、自然に聞こえましたよ。へえ、こういう歌い方があるんだ、とびっくりしたというか、妙に感心してしまいましたね」
君が代を『星条旗よ永遠なれ』のメロディーで歌う──
それは、この緊急市民集会とやらの“正体”がよくわかるものだったのである。
★“反権力”に酔う人々
今回“美智子皇后”を演じたのは、劇団『他言無用』に所属する石倉直樹氏(49)である。永六輔氏に可愛がってもらって、全国各地のイベントで活躍している芸人だ。
「僕たち(注=メンバーは3人いる)は、テレビではできないタブーに切り込む笑いをやっているんです。持ちネタは、色々ありますよ。杉村太蔵や橋本龍太郎、それに創価学会だって、やってます」と、石倉氏がいう。
「中でも最近は美智子様の芸が目玉になってきてますね。実はお笑い芸人として活動を始めた頃、ちょうど昭和天皇がご病気になって、歌舞音曲慎め、と仕事が次々キャンセルされたことがありましてね。その時、これはおかしいぞ、と思いました。16年経った今も、お世継ぎがどうのこうの、とやっている。何とも言えない怖さを感じます。美智子様のことは好きなんで、出来ればキレイに演じたいんですけどね」
悠仁親王を猿のぬいぐるみにしたことには、「この小道具はよく使うんです。普段は、名前をそのまま言わないんですが、あの集会では、ついフルネームで言ってしまいました。(ご病気については)矢崎さんと中山さんに下ネタをふられ、乗せられてしまいました。僕は基本的に下ネタは好きではない。永六輔さんには以前、永さんがやっておられた渋谷の劇場にも出させてもらいましたし、去年は沖縄公演にも京都のコンサートにも出させてもらいました。京都では、僕が皇后で、永さんが侍従の役で、色々やりましたよ。僕自身は、これを(市民)運動としてやっているつもりはないし、あくまで自分が面白いと思うことをやっているつもりです」
お笑い芸人としてタブーに挑戦する──石倉氏は腹を据えて演じているらしい。
だが一方、司会を務めた佐高氏の反応は全く違う。
「皇后を中傷する劇? いやいや、そもそも劇の中で皇室なんて一言も言ってませんよ」と、こう語るのだ。
「あくまで“さる高貴なお方の奥様”としか言ってないんですから。だから皇室の中傷などではありません。それは受け取る側の見方ですから、こちらがコメントする理由はありませんよ。そんなこと言うなら核議論と同じで、こっちも封殺するな、と言いたいですね」
永六輔氏は、何というか。
「僕はあの日、3時に来いと言われて会場に向かったんですけど、車が渋滞して遅れ、3時半に到着したんです。だから、そのコント自体、見てもいないし、全然わからないですよ。だから『週刊金曜日』に聞いてくださいな」と、知らぬ存ぜぬだ。
石倉氏に比べて、二人は何とも歯切れが悪い。矢崎氏と中山女史に至っては、取材申し込みに対して、梨の礫だ。
永氏は、かつて、童謡『七つの子』など野口雨情の名作を根拠もなく「強制連行された朝鮮人の歌」などと言ってのけ、関係者を激怒させた“前科”がある。
その関係者の一人、作曲家のすぎやまこういち氏は、今回のことをこう語る。
「そうですか。まだ(永氏らは)そんなことをやっているのですか。呆れますね。下品です。自分に置き換えて考えてみればいい。自分の孫が猿のぬいぐるみにされて、放り投げられたり、病気のことを揶揄されたりしてごらんなさい。人権に対する意識も何もない。彼らは、いつもは人権、人権というくせに、実はそれが彼らの正体なんですよ。」
主催者である『週刊金曜日』の北村肇編集長は、同誌の編集後記でこの集会の模様をこう記している。
<冷たい秋雨の中、2000人近い人びとが集まった。不思議なほどに穏やかな空気が会場には流れ途切れなかった。永田町の住人に対する、満々たる怒りを深く共有しながら、しかし、そこに絶望はなかった>
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http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/d45f54889bed6cb4355f31f97fa7dc68
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/7b34842ff13fe338153a3b46ab4561d7
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http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/161d5d3369caeff973897102ce9214a1
~緊急市民集会のパフォーマンスと『週刊新潮』の記事を発端とした一連の経緯について
「『皇室中傷』芝居」との大見出しで、本誌主催の緊急市民集会(一一月一
九日)でのパフォーマンスの一部を「不敬で下劣」と批判した『週刊新
潮』(一二月七日号、一一月三〇日発売)の記事を発端として、本社には
この間、二十数本の抗議・質問の電話が鳴り、政治結社など六団体が直
接の抗議行動に訪れたほか、二十数台の街宣車が本社の入るビルの周囲
をめぐった。
一方、本社前には警視庁神田警察署の藍色のワゴン車が一台、四囲に
目を光らせる場所に終日配備され、師走に入ったばかりの、それでなく
とも慌ただしい出版社ひしめくビル街の一角に張りつめた風景を出現さ
せた。
抗議は、集会全体ではなく、電車の中吊り広告にも使われた「悠仁親
王は『猿のぬいぐるみ』『陛下のガン』も笑いのネタに」という、皇室
をめぐるパフォーマンスの一部の表現・言動に集中している。かつての
一時代を想起させる「不敬」という字句を磁力のようにして、氏名を名
乗らない者が大半の中、氏名のみならず住所・番地さえも電話口で告げ
て「皇室を崇拝する愛国者」と名乗る男性が言う。
「皇室を批判することは自由だが、下品な椰楡やからかいはまずい。あ
んた方がこんなことをやれば喜ぶのは自民党だけだ。やるならもっとま
ともな批判をしなさい」
政治結社など諸団体の直接的な抗議は、その印象から受ける強面の、
図太く頓れた声ではなく、むしろきちんと襟を正し、「言論の自由がある
国だから、批判は許す。あんたらがわれわれの主張とは相容れないこと
は分かっている。しかし節度がなければいけない」と、説諭めいた比較
的穏やかな「鉄槌」もあれば、エレベーター前の狭い空間から非常ドア
を突き破り寒空に響くような憤怒と激昂の怒号まで、取り囲む数人の公
安警察の存在に臆することなく、それらは展開された。一連の対応をし
たのは副編集長の土井伸一郎と同・片岡伸行の二人。直接行動は、本誌
発行人・佐高信の、本社と離れた個人事務所にも向けられた。
同様の抗議は「さる高貴なご一家」を上演してきた劇団「他言無用」に
も向けられ、同劇団は八日、ホームページに「お詫び」を掲載して皇室
パフォーマンスの「封印」を宣言した。インターネット上では「佐高の
実家に火をつけてやれ」とけしかける書き込みが氾濫した。埼玉で予定
されていた片岡の講演は埼玉県警が主催者に「街宣車が来るかもしれな
い」などと告げたことで急きょ中止に。本誌編集長・北村肇は苦悩する。
「本誌の言論に直接向けられた攻撃なら正面から受けて立つ。しかし今
回は違う。しかも、『新潮』の記事には事実誤認の部分があるとはいえ、
表現行為の一部に演技者自らが認めざるを得ない不適切な言動があった
のは事実。表現の自由の範疇とするのには無理がある」
名古屋で予定されていた一五日の「他言無用」の公演も中止を余儀な
くされた。
本誌はこれまで、タブーなき言論を標榜し、天皇制についても真正面
からの批判・論評を展開してきた。であるからこそ、人権侵害や差別に
つながる表現についてはこれを深慮し、行なわない方針を貫いてきた。
一三日朝、社員が会議室に集まった。これまでの経過と対応、社の見解を
めぐって最終的な詰めの議論が続いた。風刺とパロディ、笑いと人権、
判例、椰楡と中傷、言論・表現の自由…:・。
「本誌の言論とは直接の関わりがないが、集会主催者として真摯な対応
をし、率直な見解を表明すべきだ」
「パフォーマンスは全体としては温かな表現で、皇室批判を意図したも
のではないと思う。しかしそれが誰であれ、人権侵害につながる表現は
まずい。今回指摘された点を肝に銘じ、パフォーマンスを続けてほしい
という声もある。表現の幅を狭めてはまずい」「アドリブが多いパフォー
マンスや出演者の発言の細部にわたり事前に把握するのは無理だとして
も、一定の品位を保つよう綿密な打ち合わせをすべきだった」「読者から
『まずいことはまずいと表明することで信頼を高める。頑張れ』との声
も寄せられている」「正当な批判や主張をも自己規制する流れができては
まずい。そのためにもこの状況をきちんと受け止め、読者の理解を得る
必要がある」
そうした議論の末、まとめられたのが「集会主催者として配慮を欠い
たことを率直に反省しおわびする」とした見解の表明文書であり、この
誌面である。
「11・19」緊急市民集会について
このたび弊社主催の「教育基本法改悪、共謀罪、改憲」をテーマとした「ちょっと
待った!」緊急市民集会(11月19日開催)に関し、さまざまなご意見・ご批判を受け
ましたことについて、下記のとおり見解を表明いたします。
記
集会は、教育基本法の改悪や共謀罪の新設、改憲といった潮流に対して反対する立
場から、10人の出演者がそれぞれの思いを語ることをメインに開催したものです。そ
の内容については12月1日号の本誌で紹介したとおりです。しかしながら、集会の中
で演じられた皇室をめぐるパフォーマンスの一部に「人権上問題あり」と指摘・批判
される表現・言動がありました。
本誌はこれまで、皇室あるいは天皇制の問題について一切タブー視することなく正
面から取り上げ、さまざまな意見・論評を載せることで、社会的な議論を深めるべく
努力をして参りました。その一方で、人権侵害や差別につながる表現については、こ
れを行なわない方針を貫いてきました。
しかし、上記のパフォーマンスは、人権およびプライバシー上、一部の表現に行き
過ぎや不適切な言動があったことで、誤解や不快の念を生じさせてしまいました。集
会主催者として配慮を欠いたことを率直に反省しおわびするとともに、今後開催する
集会等の運営には十分に留意をして参ります。
言論・表現の自由は、民主主義社会の存立・発展のために、他の諸権利に優位する
ものとされています。弊社は今後も、タブーなき言論・表現活動が民主主義の成熟に
つながることを確信し、その実現のために努力していく所存です。
2006年12月13日
『週刊金曜日』発行人・佐高信
編集長・北村肇
「ちょっと待った!」緊急市民集会
本誌が主催した緊急市民集会は教育基本法の改悪、共謀罪の新設、改
憲に反対の立場から「ちょっと待った!」と題して、本誌編集委員・佐
高信が司会役となり城山三郎、小室等、田中優子、内橋克人の各氏をは
じめ、会場からの発言者を含めてそれぞれの思いを語ってもらうのがメ
インだった(一二月一日号で既報)。
時代の潮流への危機感の共有。会場となった日比谷公会堂は二〇〇〇人
弱の聴衆で埋まった。
集会が四時間半という長時間に及ぶため、三〇分ほどのパフォーマン
スを依頼した。諸事情で出演できなくなった方もいたことから、後半は
急きょ永六輔、矢崎泰久、中山千夏の三氏の掛け合いという形になった。
当日は「東京国際女子マラソン」の日。交通規制で永さんの到着が遅れ
たため、矢崎さんと中山さんが寸劇終了後に場をもたせるために舞台に
出て、即興による掛け合いをした。終了後、矢崎さんと中山さんの二人
のトークに移ってからしばらくして永さんが到着し、二人に合流した。
集会は午後四時前に終了。会場の外は終日雨が降っていた。
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悠仁親王は「猿のぬいぐるみ」! 「陛下のガン」も笑いのネタにした「皇室中傷」芝居 (週刊新潮 12月7日号 30-32ページ)
その瞬間、あまりの下劣さに観客も凍りついた。11月19日、日曜日。
東京の日比谷公会堂で開かれた『週刊金曜日』主催の「ちょっと待った!教育基本法改悪 共謀罪 憲法改悪 緊急市民集会」である。会場を埋めた2000人近い観客の前で、悠仁親王は「猿のぬいぐるみ」にされ、天皇陛下のご病気もギャグにされる芝居が演じられた……。
その日、東京は冷たい秋雨が降っていた。
高橋尚子が参加した東京女子マラソンがあり、交通規制が都内に敷かれていたその時間に、日比谷公園の一角にある日比谷公会堂でそのイベントの幕は開いた。
安倍政権への対立姿勢を鮮明にする左翼系週刊誌の『週刊金曜日』が主催する緊急市民集会である。同誌の本田勝一編集委員の挨拶から始まった集会で、問題のパフォーマンスがおこなわれたのは、午後2時半頃からである。
司会を務めるのは、同誌の発行人でもある評論家の佐高信氏だ。
「えー、今日は特別な日なんで、とても高貴な方の奥さんにも来ていただきました。この会場のすぐ近く、千代田区1丁目1番地にお住まいの方です」
佐高氏がそう言うと、舞台の右袖から、しずしずと美智子皇后のお姿を真似たコメディアンが出てきた。
黒いスカートに白のカーディガン、頭には白髪のかつらと、帽子に見立てた茶托を乗せている。そして、顔は顔面だけおしろいを塗って女装をした男である。
会場は、拍手喝采だ。
「本日は雨の中、多くの国民が集まっている中、なんの集会だかわかりませんが」と切り出すと、大きな笑いが起こった。
「そう言えば、先日、主人と一緒に、ソフトバンクの王貞治監督にお会いしたんです。王さんは“日の丸のおかげで優勝できました”と、仰っていましたが、この人が日の丸のおかげなんて言うのは、おかしいんじゃありませんか?」そう言って、コメディアンは笑いをとった。先日の園遊会で、王監督が、天皇陛下に話した内容を皮肉ったのだ。
続けて、「そう言えば、去年は皇室典範を変えるとか変えないとかで、マスコミがずいぶん騒がしかった。でも、ウチの次男のところに男の子が生まれたら、それがピタッとおさまっちゃいましたね」と悠仁親王のことを話題に。
そして、「今日は、実はその子を連れてきているの。ちょっと連れてきて」と言うと、スタッフが舞台の下からケープに包まれた赤ちゃんの人形のようなものを壇上の“美智子皇后”に無造作に手渡した。
よく見ると、猿のぬいぐるみである。
“美智子皇后”は、そのぬいぐるみに向かって、「ヒサヒト!ヒサヒト!」と声をかけながら、その猿の顔を客席に向けたり、ぬいぐるみの腕を動かしたりする。
場内は大爆笑。
大受けに満足の“美智子皇后”の芝居は続く。
やがて、抱いている猿のぬいぐるみに向かって、 「ヒサヒト! お前は、本家に男の子が生まれたら、お前なんか、イーラナイ!」と叫んで、舞台の左側にポーンと放り投げるパフォーマンスが演じられた。
だが、このシーンで場内は静まり返った。
若者の中にはクスクスと笑いを漏らす者もいたものの、さすがにここまで来ると観客の大半が凍りついてしまったのである。
そして、ここで登場したのが『話の特集』の元編集長でジャーナリストの矢崎泰久氏と、作家であり、タレントでもある中山千夏さんだ。二人は何十年もの間、行動を共にしている“同志”である。
★静まりかえる観客
「これはこれは、さる高貴なお方の奥さんではないですか。その奥さんにお聞きしたいことがあるんです」と、矢崎氏。
「天皇なんてもう要らないんじゃないですか。天皇なんてのは民間の邪魔になるだけでしょ?」と聞く二人に“美智子皇后”は、「あら、アタシは民間から上がったのよ」と、応える。
中山女史が、「そもそも天皇になれるのが直系の男子だけという方がおかしいでしょ? 男でも女でも、長子がなれるようにすべきじゃないでしょうか。それで、ハタチぐらいになったら、本人の意志で天皇になりたければなり、なりたくなければ一般人になってそれで終わり。普通の市民のように選挙権も持てるようにすればいい。そうしていけば、天皇家というウチはなくなります」と、持論を展開。
すると、矢崎氏が、「そう言えば、今日はご主人が来てませんね?」と“美智子皇后”に尋ねる。「ハイ」
「どこか悪いの?」と、矢崎氏。
「ハイ。知っての通り、病でございまして。マエタテセン?じゃなかった、えーと、あ、そうそう、前立腺を悪くしまして。あまり芳しくないのですよ」
「それはご心配でしょうねえ」
「そうなんです」
そんなやりとりが続いた後、突然、矢崎氏が、「それであっちの方は立つんですか?」と、聞く。
“美智子皇后”は面食らいながら、「私の記憶では……出会いのテニスコートの時は元気でございました」と、応える。
場内はシーンと静まりかえった。
天皇のご病気までギャグにされたことで、さすがに観客がシラけてしまったのだ。
「笑い声なんてなかったですよ。何て下劣なことを言うのか、と思わず拳を握りしめてしまいました」と、当日、イベントに参加した観客の一人がいう。
「その後も園遊会で来賓とお話をする両陛下の物真似で、笑いをとっていましたね。憲法や教育基本法の集会だと思っていたのに、結局、この人たちがやりたかったのは、安倍晋三のこきおろしと、皇室を中傷することだけだったんですね」
だが、あきれるばかりの内容は、まだ続いた。
今度は、元放送作家でタレントの永六輔氏が舞台に登場。永氏は、「ここ(日比谷公会堂)は、昔、社会党の浅沼稲次郎さんが刺殺されたところなんです」「君が代は、実は歌いにくい曲なんですよ」などと語り、アメリカの「星条旗よ永遠なれ」のメロディーで『君が代』を歌うというパフォーマンスを見せるのである。
当日、集会に来ていた白川勝彦・元自治大臣がいう。
「永六輔さんが、はっきりとした歌声で、君が代を『星条旗よ永遠なれ』のメロディーで歌いました。うまかったので、自然に聞こえましたよ。へえ、こういう歌い方があるんだ、とびっくりしたというか、妙に感心してしまいましたね」
君が代を『星条旗よ永遠なれ』のメロディーで歌う──
それは、この緊急市民集会とやらの“正体”がよくわかるものだったのである。
★“反権力”に酔う人々
今回“美智子皇后”を演じたのは、劇団『他言無用』に所属する石倉直樹氏(49)である。永六輔氏に可愛がってもらって、全国各地のイベントで活躍している芸人だ。
「僕たち(注=メンバーは3人いる)は、テレビではできないタブーに切り込む笑いをやっているんです。持ちネタは、色々ありますよ。杉村太蔵や橋本龍太郎、それに創価学会だって、やってます」と、石倉氏がいう。
「中でも最近は美智子様の芸が目玉になってきてますね。実はお笑い芸人として活動を始めた頃、ちょうど昭和天皇がご病気になって、歌舞音曲慎め、と仕事が次々キャンセルされたことがありましてね。その時、これはおかしいぞ、と思いました。16年経った今も、お世継ぎがどうのこうの、とやっている。何とも言えない怖さを感じます。美智子様のことは好きなんで、出来ればキレイに演じたいんですけどね」
悠仁親王を猿のぬいぐるみにしたことには、「この小道具はよく使うんです。普段は、名前をそのまま言わないんですが、あの集会では、ついフルネームで言ってしまいました。(ご病気については)矢崎さんと中山さんに下ネタをふられ、乗せられてしまいました。僕は基本的に下ネタは好きではない。永六輔さんには以前、永さんがやっておられた渋谷の劇場にも出させてもらいましたし、去年は沖縄公演にも京都のコンサートにも出させてもらいました。京都では、僕が皇后で、永さんが侍従の役で、色々やりましたよ。僕自身は、これを(市民)運動としてやっているつもりはないし、あくまで自分が面白いと思うことをやっているつもりです」
お笑い芸人としてタブーに挑戦する──石倉氏は腹を据えて演じているらしい。
だが一方、司会を務めた佐高氏の反応は全く違う。
「皇后を中傷する劇? いやいや、そもそも劇の中で皇室なんて一言も言ってませんよ」と、こう語るのだ。
「あくまで“さる高貴なお方の奥様”としか言ってないんですから。だから皇室の中傷などではありません。それは受け取る側の見方ですから、こちらがコメントする理由はありませんよ。そんなこと言うなら核議論と同じで、こっちも封殺するな、と言いたいですね」
永六輔氏は、何というか。
「僕はあの日、3時に来いと言われて会場に向かったんですけど、車が渋滞して遅れ、3時半に到着したんです。だから、そのコント自体、見てもいないし、全然わからないですよ。だから『週刊金曜日』に聞いてくださいな」と、知らぬ存ぜぬだ。
石倉氏に比べて、二人は何とも歯切れが悪い。矢崎氏と中山女史に至っては、取材申し込みに対して、梨の礫だ。
永氏は、かつて、童謡『七つの子』など野口雨情の名作を根拠もなく「強制連行された朝鮮人の歌」などと言ってのけ、関係者を激怒させた“前科”がある。
その関係者の一人、作曲家のすぎやまこういち氏は、今回のことをこう語る。
「そうですか。まだ(永氏らは)そんなことをやっているのですか。呆れますね。下品です。自分に置き換えて考えてみればいい。自分の孫が猿のぬいぐるみにされて、放り投げられたり、病気のことを揶揄されたりしてごらんなさい。人権に対する意識も何もない。彼らは、いつもは人権、人権というくせに、実はそれが彼らの正体なんですよ。」
主催者である『週刊金曜日』の北村肇編集長は、同誌の編集後記でこの集会の模様をこう記している。
<冷たい秋雨の中、2000人近い人びとが集まった。不思議なほどに穏やかな空気が会場には流れ途切れなかった。永田町の住人に対する、満々たる怒りを深く共有しながら、しかし、そこに絶望はなかった>
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http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/d45f54889bed6cb4355f31f97fa7dc68
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じゃぁ、週刊新潮はどんな姿勢を鮮明にする週刊誌でしょうか?
皇室にも人権があったんですね。勿論これは法的な意味においてですよ。誤解さなれませんように。
でも「高貴なお方」でなかったら、週刊新潮は○なんでしょうか?って逆に思ってしまうよ。週刊新潮の記事を検証したくなってきた!
勿論邪論としては、日本国憲法の第1条を尊重する立場ですので、それは誤解なされませんように!これを変更するのは、主権の存する国民の総意が必要です!日本は国民主権の国です。
高貴なお方になるであろう愛子ちゃんの人生をいろいろ、「詮索する」のは、人権上、今後問題になるのでしょうか?「週刊新潮」様!?