村上春樹を英語で読む

なぜ、こう訳されているのかを考える。

「いちばん安価な棺」関係性

2016-10-03 13:06:03 | 村上春樹を英語で読む
『1Q84』に次のような箇所がある。下はその英訳である。

おそらくいちばん安価な棺なのだろう。カステラの木箱をいくらか丈夫にした程度の、いかにも愛想のない代物だった。
Probably the cheapest coffin available, it was a sullen little casket that looked only slightly more sturdy than the boxes for castella cakes.

原文にないavailableが追加されている。ちなみに、『プログレッシブ和英中辞典』で「カステラ」を引くと、sponge cakeとある。

「この世界から」なぜ「表面から」?

2016-10-03 12:47:34 | 村上春樹を英語で読む


『1Q84』に次のような箇所がある。下はその英訳である。

大事なのは人が一人この世界から消滅したことであり、残された人々はその事実を肝に銘じなくてはならないということだ。
What was more important was that a person had vanished from the face of the earth, and those left behind had to grasp what that entailed.

「この世界から」がfrom the face of the earthと訳されている。また、「その事実」がwhat that entailed(それが含意すること)と訳されている。

「死んだ人が自分で抱えて持っていく」どこまで?

2016-10-03 12:35:45 | 村上春樹を英語で読む
『1Q84』に次のような箇所がある。下はその英訳である。

それは死んだ人が自分で抱えて持っていくしかないものごとだったんだ。
They’re what the dead person has to take with him to his grave.

原文にないto his grave(墓まで)が追加されている。この発想は英語頭のものであるように思える。
 「ゆりかごから墓場まで」は英語の from the cradle to the graveの翻訳であって、妙な言い方であるが、人生のゴールは「墓場」であるという考えは、日本語頭的考えではないのではないか?
 日本語頭の筆者には「抱えて持っていく先」は、「墓場」という具体的な場所ではないように思える。