JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

早く出てこい物忘れの素

2008年07月08日 | m-o

今日の昼飯は、たまたま近くにいたもので自宅で済まそうかとまわってみると、
「あれ?何できたの?えっ?ご飯?ご飯なんか無いよ」
「え~~~!!!!!」
たしかに、突然帰って「めし」というほうも悪いんですが、そこはそれ「なんかはあるだろう」と思うじゃないですか。
「あっ、素麺ならあるわ、自分で茹でて食べてけば」
「・・・・・・」

まっ、昨日は七夕、一日遅れの『七夕素麺』も良いかと、仰せの通りお湯を沸かし、キュウリ、鶏肉、卵に蟹足・・・そんな具なんかあるわきゃない、それでも
「薬味薬味・・・・お~い、ネギもねぇの?」
「庭から大葉でも採ってくれば」
結局は、大葉とおろし生姜を薬味に『素・素麺』を食べるハメになりました。
せめて、我が家に細々と生えている茗荷でも顔を出てれば良かったんですけどねぇ。

とある宿場の大きな宿屋の婿養子、先代が生きているうちはよく働いてましたが、亡くなった後は放蕩三昧、ついには宿屋を手放すハメになりました。
今ならすぐにでも嫁が「離婚よ!」ってところでしょうが、何故かこの夫婦、仲だけはいい。
そんな夫婦が、わずかに残ったお金を元手に宿場からずいぶん離れた場所で、小さな宿屋『茗荷宿』を始めます。婿も心を入れ替えて働きましたが、そこは宿外れの宿、客も少なきゃ宿代も安い、貧乏暮らしは仕方がありませんな。

そんなある日、『茗荷宿』には似つかわしくない上等な身なりの客がやってまいりました。客から預かったずしっと重い荷物、女将は思わず中を確かめてしまいます。
絹の反物と三百両もの小判の入った財布を目にした女将は
「おまえさん、大変だよぉ、いゃ違った、大金だよぉ。・・・・いっそのこと猫ばばして逃げちゃおうか」
「いやいや、それで捕まっちゃぁもともこもねぇや、よし、名案がある。」
てんで、その客に
「今日は先代の命日でございまして、毎年この日には屋号にちなんだ茗荷づくしの料理でおもてなしすると決まっておりますが、よろしいでございましょうか?」

『茗荷を食べると物忘れがひどくなる』てなことを昔から言いまして、茗荷をたんと食わせれば、預けた荷物を忘れていくだろうという算段であります。
「お客様、料理の味はいかがでございましたでしょう」
「おお、ご亭主、じつに美味かった。全部食べてしまったぞ」

翌朝、よほど先を急いでいたのでしょう、お客はわらじも履かずに宿を飛び出します。
「しめた!」
ところが、客はわらじを履き忘れたことに気が付き戻ってきました。こんどはわらじをしっかり履いて出ていきます。
「思い出したかと冷や冷やしたけど、上手くいったなぁ」
ホッとしていると、またまた客は戻ってきて
「街道を歩き始めて、皆が荷を持っていることに気付きまして・・・危なく忘れ物をするところでした。」
渋々、荷を渡して、客を送ると
「おまえさん、残念だったねぇ、上手くいったと思ったのに・・・ところでおまえさんも旨い旨いって茗荷をたらふく食べてたけど、物忘れは大丈夫かい?」
「・・・・あっ、いけね!宿賃もらうの忘れてた。」

落語『茗荷宿』でございまして、

「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」という言い伝えは、お釈迦様の弟子であった、麻迦槃特(まかはんどく)周梨槃特(しゅりはんどく)という兄弟の伝説からきたそうでありますな。
兄の麻迦はじつに物覚えも良く優秀だったそうですが、弟の周梨の方はどうにも物覚えが悪く、自分の名前さえも忘れてしまう始末、しまいには首から名札(茗荷)を掛けさせられるほどだったそうです。
そんな周梨も後に悟りを開き高僧となるのですが、死後、彼の墓のまわりには山のように茗荷が生えてきたそうで、ここから「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」という話が生まれたのだとか。

何処かで、素麺や冷や奴の薬味に茗荷が付いていたり、刺身にそぎ茗荷が付いてきたときなんか、ちょっとした話の種に使っていただければと・・・・
えっ?そんな話しをしたら、「おやじはこれだから・・・・」ってさらに嫌われるって?
う~~~~ん、じゃあ、この話は無かったことに、茗荷をたらふく食べて忘れてやって下さい。(笑)

ともかく、
「我が家の庭の隅に根付いた茗荷、いずれ我が口に入るまでになるかなぁ?早く出てこい物忘れの素!
大葉と生姜を薬味に『素・素麺』をすすりながら、そんなことを思った今日の昼食でした。

さて、今日の一枚は、ジャッキー・マクリーンです。

ジャズメンに停滞は許されない、これはどのプレーヤーを見てもうなずけますよね。ただその変貌が吉と出るか凶と出るかはそれぞれですし、「○○以降の××はどうも」との嘆きも良く聞きます。(昨日のアート・ペッパーもですし、マイルス、コルトレーンにしてもそうでしょ)

この時期のマクリーンまた、アバンギャルドな世界への試みを続けていたまっただ中といって良いように思います。
サイドを先日紹介した17才のトニー・ウイリアムスはじめ若手で固め、意欲満々のマクリーンを聴くことが出来るアルバムだと思います。

それにしても、少しでもフリー傾向に走るとそれだけで毛嫌いしてしまう方もいらっしゃいますが、このマクリーンのようにバランスの取れた演奏を耳にすると、考え方が少し変わってくるのではないか、てなことを思ったりします。
ピアノレスのクインテットが作り出す世界は、刺激的なアルトと、ほんとに17才かぁ?というドラム、ボビー・ハッチャーソンのチョット不思議なバイブ、もちろん他のメンバーも含め、それらが織りなす、一つの物語のようにも聴こえてきます。

ONE STEP BEYOND / JACKIE McLEAN
1963年4月30日録音
JACKIE McLEAN(as) GRACHAN MONCAR Ⅲ(tb) BOBBY HUTCHERSON(vib) EDDIE KHAN(b) ANTHONY WILLIAMS(ds)
1963.4.30
1.SATURDAY AND SUNDAY
2.FRANKENSTEIN
3.BLUE RONDO
4.GOHST TOWN



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