搭乗口まで、さ迷った。
パリに着いてからも大渋滞に巻き込まれた。
車は大混雑。
娘夫婦と別れた。
ハネムーンを終えて帰国したのだ。
途端に雨が来た。
こちらに来て、快晴続きだったのに雨男復活だ。
おかげでえらいめに合った。
日本人パフォーマーと飲んだ帰り、歩いて帰るつもりがタクシーに乗る羽目に。
運転手に言葉が通じないからバルセロナ市内をぐるぐる。
まあ、結果的にホテルで寝てるから、よしとしよう。
グエル公園で出会ったワンマンバンドの大道芸人と呑む約束をしていた。
カタルーニャ広場で小林友哉くんと20時に待ち合わせ、会った。
宿泊しているユースホステルが近いという繁華街ランブラス通りのカフェテリアに席を取った。
新宿・歌舞伎町周辺の雰囲気だ。
週末のハナキンとあって、大にぎわい。
チキンの入ったパエリアとビールを注文。
三重出身の長男。38歳独身。
今は愛知・半田市在住。
初めはバンドを組んでいたが、目指す音楽が違うので一人でやり出した。
ワンマンバンドを始めた24歳から、もう14年になるという。
担いでいる太鼓は重さ18キロ。
背中に太鼓、口にハーモニカ、手にギターの全身運動の重労働。
疲れたのかビールを美味しそうにあおった。
日本ではキーボードを加えるそうだ。
輸送に荷がかさばり、移動に手間がかかるので、今回は持って来なかった。
ご両親は70を越えている。
息子が大道芸人稼業をしていることは、半ば諦めているそうだ。
自衛隊出身の父親も最初は怒っていたが、今は何も言わない。
妹は兄の生き方をうらやましがってる、と笑う。
ビートルズの曲が好きで、演奏の中心だ。
顔はやっぱりジョン・レノンに似てると言われるそうだ。
「国境もなく、人種差別もない」
「イマジン」を好んで取り上げる。
とりとめもない、楽しい話で盛り上がった。
「で、ナンボ稼いだ?」
「日本円で2万6000円位ですね。持ってるとコインばかりで重いし、銀行で明日の朝、紙幣に交換しないと」
結構稼げるものなんだ。
次の日もグエル公園で場所取りのため、朝10時に行くそうだ。
あと2週間、大いに稼いで欲しい。
「マネージャーやろか」
「いや、何だかかすめ取られそう」
楽しい一期一会を大笑いして別れた。