まずは2012に出された論文で巨大津波メカニズムに関する論文(脚注1)である。
この論文の要旨は、極めて大きくプレートがずれた(水平距離で50m)。これが長時間、長周期で起こり、これによる海底変動が、海水を大きく揺り動かし、2つの波のピークを作り、これが合成されて大津波を発生させたということである。
以下本文から引用する。(1部本文通りでありません)
「宮城県沖では通常の海溝型地震と巨大地震の 2つのサイクルが存在する。海溝型地震は、プレート境界で完全に断層が滑り切るので はなく、滑り残る部分ができる、ゆっくりとした(エネルギー)解 放(silent earthquake)で、巨大地震は、滑り残りの部分の歪みを数100年 蓄積し一気に解放されたと考えられる、いわば 「スーパーサイクル」として発生する。東北地方太平洋沖地震は後者であった。」
「東北地方太平洋沖地震の発生機構も少しずつ明らかに なっている。日本海溝寄りの領域での断層滑り が約 100 秒間も続いたことが挙げられる(八木、 2011)脚注(2)。そこでは、同じ領域が長く滑り続けた ことで断層滑りが拡大し、さらにいくつかの破 壊(断層滑りのことだろう)の段階が存在していると分析されている。第 一段階での断層滑りは、震源の宮城県沖から始 まり 20 ~ 30 秒ほどで、想定宮城県沖のエリア に到達していた。しかし、その後も破壊は継続 し、さらに 30 ~ 40 秒で様相が変わったようで ある。三陸沖南部海溝寄りから日本海溝寄りに 断層滑りが拡大し(東側に広がったということだろう)、この 10 秒間で 8.9 m の巨大 滑りが発生したと推定されている。この結果、 同じ場所で100秒も滑り続け、平均で30 m以上の断層すべりが生じたことになる(国土地理 院が推定した最大値は 59.2 m に及んでいる)。」
「東北地方太平洋沖地震のような巨大地震が海底で生じると津 波が発生する(首藤ら2007) (脚注3)。いま、特に津 波波形を利用した断層運動の推定(例えば、藤 井・佐竹、2011;東北大学、2011)(脚注4)が行われて いるが、特徴としては、宮城・福島沖での海底 変化(断層のすべり量)が大きいこと、しかも、日本海溝沿いの値が大きいことが示唆され ている。深い海域で大きな海底変化が生じる と、それだけ大きな規模の津波が発生する。」
「図 2 に示されるように釜石沖での海底津波計の記録は興味深く、30 分程度の押し波の成分(2 m 程度)の上に、5 分程度の短い成分(3 m 程度) が重なった波形が見られる。この2つの成分が三陸沖に伝播する中で、押し のピーク(波の山)の位相を一致させて6 mも の波高を発生させたのだろうと考えられる。」
1)東北地方太平洋沖地震における津波発生のメカニズム今村文彦 、日本学術会議連携会員、東北大学災 害科学国際研究所教授・副所長 専門:津波工学
2) 八木勇治, 東北地方太平洋沖地震「地震波形から見た震源像」, パリティ , vol. 26, 11 月号 , pp. 28-33, 2011.