ケイの読書日記

個人が書く書評

安達正勝 「物語 フランス革命」 中公新書

2017-08-15 14:21:52 | 時代物
 「バスチーユ陥落からナポレオンの戴冠まで」というサブタイトルが付いている。
 私は昔から、フランス革命が起こって、国王や王妃が処刑された後、国がどうなったかが知りたかった。ロベスピエールの恐怖政治が始まったというように教科書には書いてあったが、あまり詳しく載ってない。もちろん紙面スペースの関係もあるだろうけど、フランス革命という世界史上の大偉業の暗黒面を、教科書の執筆者があまり書きたくなかったんじゃないか?と、子ども心に思ったものだ。

 ロベスピエールとかサン・ジェスト、物語の主人公としては素晴らしいが、生身の人間として自分の隣にいたら…本当に迷惑だろうなぁ。
 ロベスピエールは真に高潔な人物だったのだろうが、高潔すぎる人間が不公正な世の中を正していこうとすると、大きな軋轢を生む。だいたい、不完全な人間が、完全に正しい社会を作り出す事なんか出来るわけないじゃん!!


 王や貴族、高位の聖職者たちを追い払い、さて、今度は自分たちが為政者だ、いままで苦労してきたんだから、ちょっとくらい良い思いをしたってバチは当たるまいとジロンド派の人たちは考えた。
 人間としてすごくまっとうな心理だよね。でも、貧しい人達にとっては、王や貴族がブルジョワジーに変わっただけで、圧政はなくならない、生活は苦しいまま。何のための革命だ、という事になる。

 本書の中には、民衆と国民を分けて書いてある。民衆というのはパリの最下層の貧しい人たち。彼らは武器を持って生活のために戦う。パリ以外の地方では、まだまだ保守的で、王党派の人もたくさんいた。


 ロベスピエールの時代(ジャコバン政府の時代)は、ジロンド派追放からテルミドールのクーデターまでの1年間らしいが、その間、ギロチンはフル稼働。多い時には1日に50人ほど処刑したというが、そんな事可能なんだろうか?それとも、何台もギロチンがあったんだろうか?

 1789年バスチーユ監獄が陥落(フランス革命の幕開け)から、恐怖政治の時代を経て、1799年ブリュメールのクーデターでナポレオンが政権掌握(革命の終息)まで10年。フランス国民はジェットコースターに乗ってるような動乱の時代だった。
 この恐怖政治時代の革命家たちの内部抗争って、あさま山荘事件の内ゲバと似ている。理想を高く掲げすぎる人間が集まると、内ゲバが始まるんだ。

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