ケイの読書日記

個人が書く書評

伊坂幸太郎 「フィッシュストーリー」

2017-02-14 10:59:27 | 伊坂幸太郎
 『フィッシュストーリー』の内容紹介で、「最後のレコーディングに臨んだ売れないロックバンド。いい曲なんだよ、届けよ誰かに。テープに記録された言葉は未来に届いて、世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が胸のすくエンディングへと一閃に向かう」と書いてあったので、すごーーーく期待して読んだが、たいして胸はすかなかったなぁ。設定は面白いがリンクが足りないと思う。でも、これって映画化されたんだよね。確か。

 他に『サクリファイス』『ポテチ』に、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍と書いてあるが、この本業・空き巣で、たまに探偵をやる黒澤って、そんな人気あるの? ちょっと貴志祐介の防犯探偵・榎本を思い出した。あの人も、本業は泥棒だから。
 この黒澤は、容色が整っていて、性格もヒドくないが、とらえどころがない。ハッキリ言うと魅力に乏しいような気がするなぁ。
 考えてみれば、伊坂幸太郎の主要キャラって、美男美女が多いような…。(たいして読んでないが)書きにくくないかな。美男美女キャラって。

 『動物園のエンジン』は…叙述トリックが仕掛けられていて「彼」が自分の思い込んでいた人物とは全く違うのには驚いたが、それ以外は無理があると思う。


 以上、あれこれマイナスの面ばかり書いた。確かに、伊坂幸太郎にしてはイマイチというだけで、水準高い作品集。
 一番良かったのは『サクリファイス』。黒澤が、人を探すため宮城と山形の県境にある小さな村に出掛けるが、そこには「こもり様」という奇妙な習慣が残っていた。現在は洞窟にこもるだけだが、昔は生贄をそこに閉じ込め、岩でふたをして神にささげた。
 人柱などもそう。この生贄の風習は、全国各地にあったろうが、その選び方は…。そうとう恣意的な物だったろうね。だって、村の有力者の息子が生贄になったなんて話、聞いた事が無い。
 権力者からみて、邪魔もの、死んでほしい者をを生贄に祭り上げるのだ。「葉を隠すなら森の中」じゃないが、殺したい相手がいるから、生贄をでっち上げた、なんてことが起こっただろうと推測される。
 不都合な真実を、宗教がらみでカムフラージュするって、よくあるだろうね。
コメント
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