ケイの読書日記

個人が書く書評

藤木稟 「バチカン奇跡調査官」 角川ホラー文庫

2016-10-02 19:46:25 | 藤木稟
 このシリーズ、前から気になっていた。バチカンに奇跡を調査する部署があることは知っていたし、いかにもライトノベルっていうカバーイラストも気に入っていた。舞台は中世ではありません。現代です。念のため。

 2010年、イタリアの小さい村の教会で、ミサの最中に角笛が鳴り響き、虹色の光に包まれる不思議な現象が起こった。村の教会から申請された奇跡の調査に赴いた2人のバチカン調査官。
 1人は天才科学者の平賀・ヨゼフ・庚神父、もう1人は古文書・暗号解読のエキスパート、ロベルト神父。この美青年コンビが、難解な謎をさらさらと解き、巨悪に立ち向かい、敵をバッタバッタとなぎ倒す痛快なお話で、深読みしなくていいのが嬉しい。
 どんでん返しが続いて、読むのに疲れるなんて事はない。
 だいたい、このシリーズでは、どんな奇跡も、どんな巨悪も、どんなストーリーも、お話の魅力には関係ないのだ。この二人さえ登場すれば、読者はそれでOK!だと思う。

 それに、こういう本を読むと、雑学の知識が増えるのが嬉しい。
 例えば『ハーメルンの笛吹男』。この話って、グリム童話で有名だけど、1284年に実際おきた事件を基にしているんだってね。

 ネズミの害で困り果てていたハーメルンに『ネズミ捕り』と名乗る男がやってくる。金と引き換えにネズミを退治しようと村人に持ち掛け、村人たちはそれを了承する。男は笛を吹きならし、ネズミの群れをひきつけ、川におびきだして、残さず溺れ死にさせた。
 しかし、村人たちは約束を破り、お金を払わなかった。
 怒った笛吹男は、笛を吹きならし、ハーメルンの子どもたちを皆、町から連れ去り、洞窟の中に誘い入れた。その数、およそ130人。そして、笛吹男も子供たちも二度と戻って来なかった。

 こういう話は、ドイツだけでなく、ヨーロッパ各地にあるそうなのだ。そして一番有力な仮説は、東ヨーロッパの植民地に連れていかれたという説。
 自分で一旗揚げようと思って行ったか、親たちに売られて行ったか、業者に誘拐されたか…。親としては、さすがに売ったとは言えないので「笛吹男に連れ去られた」事にしたんだろう。

 そういえば『ヘンゼルとグレーテル』の童話も、2人が道に迷って帰れなくなった事になっているが、本当は、大飢饉のとき、家に食べ物がないので、親によって森に置き去りにされたらしい。子捨て・子殺しというのは、世の東西を問わず、民話の重要なテーマだったんだ。

 これから、この平賀とロベルトコンビのシリーズをせっせと読むだろうが、こういったトリビアが読めるのは、すごく嬉しいです。
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