日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

それでも、『大絵巻展』はよかったと思えるのですよ。

2006年06月03日 | その他の日々
山陽電鉄の明石駅の改札を出たらすぐに、格安チケット屋さんがある。
そこで、京都までの切符を買ったら、990円だった。

どのくらい割安になっているのか知らないけれど、
「東大阪歌会へいくよりも安いじゃん……」と、
愕然とする。

京都には、乗り換えもスムーズだったので、一時間半で着いた。
市バスもすぐに来た。

「こんなものか」と安堵した。

京都、畏れるに足らず。

     ★

が、しかし、安堵するのはまだ早かったのだ。

会場につくと、係りの人が叫んでた。

―――な、なんだって!!!一時間待ち???

くらっとした。

反射的に、
会場内にある喫茶店を探し、
「しゃあないなぁ。コーヒー飲んで、一時間待とうか……」と
ナチュラルに思うほど、
どっと疲れがでた。

―――ちゃうやろ。
    並んでやっと、1時間待ちであって、
    コーヒー飲んだらもっと遅くなるやんか!

と、寸でのところでハッとする。

くらくらくらくら……。

喫茶店のドアをくぐらず、
急カーブを描いて、長蛇の最後尾へ。

     ★

待つ人の上には、テントが貼られ、日影を作っていたが、
それよりはみだして、人々は列を成していた。

係りの人が、雨傘ではあるが、親切にも、傘を配布していた。

私は文庫本が読みたかったし、
なによりも、その傘は着物に似合わなかったしで、
受けとらなかった。

とはいえ、紫外線は女の敵。

何気に前の人がさす日傘の影にあやかろうと、
マメに列を詰めたりしていた。

……まぁ、傘の骨が頭のてっぺんに、
ツンツンと、落ちてくるだけで、
どのくらい紫外線対策になったかわからないが。

って、いうか、なってなかったと思います。ツンツン。

     ★

博物館内に入ってからも、苦難の長蛇の列だった。

もしもこれが、絵画なら、
人が少ないところから
絵を見ていくという方法もあるけれど、
絵巻物なので、
最初から並んで順番を追って見ないと意味がない。

物語を味わえない。

草履の鼻緒を挟む、親指と人差し指が、痛くなってくる。

『源氏物語絵詞』に至っては、30~40分待ちと言う。

くらくらくらくら……。

もう、見なかった。
えぇえぇ。見ませんでしたとも(泣)

『鳥獣戯画』も最前列では見なかった。
えぇえぇ、人だかりの頭の間を、
右へ左へ傾けて……うるうる。

     ★

途中で何度も休憩用の椅子に座りながら見終えた時は、
五時半を回っていた。

はぁ……と、まだ気を抜くわけにはいかない。
帰路につかなくちゃいけない。

バス停では、満員のバスを二回見送った。
もちろん、立ったままで。

三度目の正直で乗ったバスは、
行きには止まらなかった停留所に止まっていくので青ざめた。
もちろん、立ったままで。

JRの駅まで、このバスが行ってくれるのか、
ものすごく不安になったので、
京都タワーが見えたから念のため降りて、
JRの駅を目指した。

ふ、ふくらはぎが痛い……。

     ★

駅に着いたのは6時を回っていた。
改札に入ってから思う。

仕事帰りの人達と
電車に乗る時間帯がぶつかってる……。
きっと、立ったまんま、明石まで……。

その時の絶望感を甘えとは言わないでほしい。

財布の中は一気に寒くなったけど、
改札内の『みどりの窓口』の誘惑には勝てなかった。

西明石駅までの新幹線の切符を購入してしまった。
両方あわせて、約3200円
行きとの落差、激しすぎ。
なんとかならんのか、JR。

すっかり、行きに思った印象は掻き消される。

京都、恐るべし。

     ★

京都→新大阪→新神戸→西明石

各駅停車の「ひかり」には、
40分ほど乗っていた。

で、本来なら、
西明石駅から、
ひとつだけ大阪方面の駅である、
明石駅を目指し、
山陽電鉄に乗り換えて、
自宅から3分の駅に着くのが、
一番早いのである。

なのに何故か、その時、
「大久保駅から、コミュニティバスに乗ってみようかな」
と、思いつく。

何故、そこで、思いつくのか、
そんなことは、わからない。
わからないけど、そう思ったら、
やらなければ、気がすまない。

西明石駅から、
ひとつだけ姫路方面の
大久保駅へ行く、
各駅停車の電車に乗った。

たった一駅の乗車だったけど、
とてもとてもすし詰めで、
新幹線の偉大さが沁みた。

だけど、このたった一駅の
乗り越しが、
京都からだったというだけで、
360円になってしまうのは、
なんとかならんのか、JR。

それでも、時間的には、
京都から、45分で明石に戻っていたのは、
重力こそ感じなかったが、
宇宙戦艦でワープをしたくらい、
すごいことだな、と思えた。
自由席とはいえ、ちゃんと座れて、
足も、少し楽になったし。
それなりの価値はあったかな。

だから、どうせだったら、ここで、
コミュニティバスも、
スムーズに来てくれたら、それに越したことはないな、と思っていた。

バス停へ行き、時刻表を見る。

今7:15。バスの時間は7:45

なんと、30分待ち。
新幹線の価値も、一気に下がるってーもんだよ。とほほ。

     ★

もう、お財布の中はすっからかんだった。
端から見ると、着物のマダムだったが、
おなかもすいて、ひもじかった。ぴぃぴぃ。

喫茶店に入ることも諦めて、
大型量販店内のエスカレーターの横にある、
休憩用のベンチに座って、
文庫本の続きを読むことで、時間を潰す。

―――本に集中……。本に集中……。
    手作りパン屋さんが斜め前にあるのは、気のせいよ。
    あれは、悪魔の入口なのよ。

そんな気持ちのマーブル模様で、
本の中身など、頭に入ってくるものか。

バスが来る、数分前になって、立ち上がった瞬間、
何かがふっ……と、切れて、
80円ほどの小さなパンを買っていた。

バスの中で座って、むしゃむしゃと食べる。
「餓鬼」って感じだった(笑)

コミュニティバスの、
親切すぎるほどのこまごまとした停留所を経て、
ようやく家の近くについた頃には、
8:10は、過ぎていた。

着物を脱いで、一度死んで、晩ご飯を作り始める。

ヘトヘトな一日となった。

それとこれとは、別としてでも、
『大絵巻展』は、見れてよかったと言いたい。

夫に新幹線に乗ったことは、言わないけどね。

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