ありがとう。ドンちゃん！！

ここ数日、炊飯器がおかしかった。

電源を入れると、普通、
時計が液晶デジタル表示されているところの周囲にある、
「白米」とか「急速炊飯」とか書いてあるとこに、
▼という矢印が出て、
メニューキーを押すと、それがピッピピッピ動いて、
選択して炊飯、なのだが、

電源を入れても
液晶画面に、▼がでない。
つまり、炊飯できない。

リチウム電池が切れ掛かっているのではないか、と思われる。

修理に出すと、
何日、ほかほかごはんから遠ざかるのだろう……。憂鬱だ。

悩みながらも、昨夜も、
ここ最近と同じように、
だましだまし
液晶画面に▼を浮かび上がらせようと、
火花が怖いと思いつつ、
コンセントを入れたり抜いたりした。

３０分経過……。

今だ、コンセントを入れたり抜いたり。
って、だめじゃん！！

どうしよう！！晩ご飯！！

粘るには、あまりにも空腹感が襲ってきたので、
諦めて、
カレーを作るつもりで買っていた食材で、
シチューを作ることにし、
近くのスーパーに駆け込んで、
パンを買う。

それでなんとか、
今日の晩ご飯クライシスは回避できたが、

どうしよう。

このすでに研いだ状態で、
炊かれるのを待っている２合分のお米……。

　　　　　★

翌朝。

『魔法使いチャッピー』という、
アニメを知っているだろうか。
私が小さいときによくやっていたアニメなんだけど。

研いだ２合分のお米だけでも、
炊いてしまいたいと、
コンセントを入れたり抜いたりしている、
自分の耳の中に、
そのアニメのエンディングの曲が流れてきた。

まぁ、思いを重ねたのは、
そのエンディングの画のほうなんだけど。

♪ぼくドンちゃん～コロッコロぉのパンダくん♪

という歌詞が示すとおり、
ドンちゃんという、♪見かけはぁちぃさぁな、クマだけどぉ♪
のクマ（パンダ）さんが、
馬車の原型（？）であるかぼちゃに、
一生懸命魔法をかけ、
馬車に変えようとするんだけれど、
魔法は少ししか使えないので、何度かけても、
馬車になってくれない。

その心境が、この状況と重なって。

あぁ、わかるよ、ドンちゃん。
その気持ち。
この年になって、わかるよ、ドンちゃん……。

　　　　　★

そして、奇跡は起きた。

ドンちゃんのそのエンディングの画のオチは、
音楽が終わる間際に、
かぼちゃを馬車にするのを諦めて、
立ち去ることにしたドンちゃんが、
振り向かないまま、何気に送った魔法で、
とうとう馬車になり、
その気配で、ドンちゃんがハッとする、というので終わるのだが、

それと同じように、

鼻歌を何回か歌いながらも、
かなり諦めの心境で、
コンセントの抜き差しをしていたら、
とうとう液晶画面に▼の表示が浮んだのだ！！

習慣になって、抜き差ししていた手を、
慌てて離す。

炊飯のスイッチを入れると、
ＩＨな感じのウィィィィンという音。

炊飯できたぁぁぁっぁぁ！！！

それからは、欲が出て、
５合分の炊飯を二回ほど炊飯。
ある分のおコメを、全部、
冷凍ご飯にした。

きっと、これは、
見えないところから、
ドンちゃんが魔法をかけてくれたからに違いない。

ありがとう、ドンちゃん！！君の魔法は、最高だよ！！