一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ブラック・スワン』

2010-02-05 | 乱読日記
この本は昨年話題になったときに読んでいたのですが、この本のカバーする範囲がとても広く、また僕自身に特に数学的・経済学的な知識が不足しているので、うまくレビューがかけそうになかったので放置していましたが、朝青龍の引退というニュースをきっかけに書いてみようかと。

「ブラック・スワン」(=黒い白鳥)とは、現実にはありえそうにないが、それが存在しないことを証明することができないものを象徴しています。

そして、世の中では往々にして黒い白鳥が現われる=経済理論や経験に基づく予測をはるかに超えたありえそうもないことが起こることがある。
実はその予測自体がそもそもバイアスがかかっているが、我々はその予測を裏打ちする「普通の日常」に慣れてそれを信じ切ってしまうがゆえに、「ありえないこと」が起きたときの衝撃が大きい。
その反面、一度それがおきてしまうと、それを説明するもっともらしい理屈が現われ、なんとなく分かったような気になってしまう。
そしてまた、普通の日常で普通の予測になじんだ生活を送るうちに、またいつか黒い白鳥が現われる。

と、抽象的に言えばそのようなことを言っています。

この本は「何が正しいか」ではなく「人は往々にしてどのように誤るか」を語っているので、経済理論や確率論が分からなくても、世の中の物事や自分の行動に対する見方を開いてくれるという意味で非常にためになります。


たとえば、芸術家・スポーツ選手・思想家・科学者などの分野は、成功がほんの一部に集中し、彼・彼女らが大半の稼ぎや名誉を手にする。その結果は能力の差よりもはるかに大きい。

スポーツ選手だと朝青龍(やっと出てきた)やタイガーウッズ、小説家だと村上春樹なんかがそうですね。

そして、リスクというのは予想外のところにある、という例として、あるカジノが存亡の危機に瀕したリスクというのをあげています。
それはイカサマ師の集団に狙われたことでも、大富豪が大金をかけて大勝ちされたことでもなく、会計処理のミスにより不正を疑われ認可を取り消される直前まで行った、とか、処遇に不満の従業員がカジノに爆弾を仕掛けたとかと、通常のリスクマネジメント(コンサルタントがお勧めする「リスクマップ」とか)では想像もつかないことが原因になってます。


これも、朝青龍やタイガー・ウッズに当てはまりますね。
選手生命を危くする怪我やスランプ、モチベーションの低下、強力なライバルの登場とかでなく、日常生活のトラブル--それも、後から見ればとんでもないことでしょうが、本人はそれが「とんでもない」と非難されるまで普通のようにやっていたこと--が原因となったというわけです。


ことほど左様に、いろいろと示唆に富む本ですので、読まれていない方はぜひご一読を。





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