眠り姫の長女が、収入ゼロはさすがに厳しい、なんとかせねばと、バイト時代の古巣に電話をかけたのは、退職が決まったすぐの翌日。
古巣といったってふた月しか経っていないので、「仕事したいです」と言ったら常に人手不足の職場なので、難なく再び採用になった。
就職おめでとう、と寄せ書きやプレゼントを戴いて送り出してもらった手前、出戻りはとても恥ずかしかったと言っていたが、ある程度の収入を得なければ携帯代や病院代も払えずに次の就活の運転資金もないのだから、背に腹はかえられないのだろう。
どうするか考えて動きなさい、と私は笑って言うだけなものだから、娘なりに立ち向かって進めている様子。
そもそも、家から早く出て、自分の居心地いい生活をしたい、という希望が原動力にもなっている。
ママがこう言うから、パパが怒るから、それだけの理由で無難とおもうやり方を、生きるための舵取りで選んではだめ。
社会との接点を絶ち切らないためにも、彼女の今のメンタル状況からすれば、理解ある仲間がいるなか、やり慣れた仕事で馴染みの職場からのリスタートは、合っていたと思う。
ふた月離れていただけだから、すぐに仕事の感覚が戻り追いつく。
そこまで板についているなら、いっそそこへ就職してしまえばと思うが、残念ながら、あっちの会社に吸収され、すぐにこっちの会社に吸収され、社員がどんどん辞めて社内に覇気がなく、15連勤はざら、社員はブラックでバイトはホワイトの状況下。
ならばやっぱり繋ぎで考えていたほうがいい。
なかなか上手くはいかないもんだね、バイトするにはいいところだけどね、そう娘は割りきっている。
先も見据えて、心療内科で先生と話しをしたらしく、手帳申請してその枠で就活をしようと動き出している。
そこは主人は疑問を持っていて、楽を知れば楽をしたくなるのが人間、手帳に頼るようになったら手帳なしの生活には戻れなくなるぞ、と主人は私との会話では否定的態度でいる。
たしかに身近でも、手帳を我欲のままに都合のいい道具で使う者を見てきている。
でもそこは、他人がどう言おうとも本人の考えひとつ、善く生きる姿勢にかかっている。
どんなに飲酒運転を規制し罰則を強めても、本人のお酒とのつきあい方と車の使い方の考えひとつにかかっているのと同じこと。
もう娘には教えることはみんな教えたし、大人なのだからという気持ちもあり、本人には直接あれこれは言わずに見守っているところもある。
娘の交遊関係に、今どきなのかメイドカフェやガールズバーで働いている女の子が割合多くいて、仕事に誘われたりもするようだけど、自分の気質では仕事にならないからと断っている様子。
選り好みなどではなく、自分の特性を知っているということは、自分を活かす強みになる。