はて、久保栄と言っても、現代では知らない人の方が多いようだ。ちなみに我が家ではだれ一人知らなかった。
なんてこった!
![Kubo_sakae Kubo_sakae](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/6d/e732daabb8bd382dd88394da95c3da5e.jpg)
久保栄は小説家で劇作家、1958年に58歳の若さでなくなっている。代表作は「火山灰地」「日本の気象」「「林檎園日記」など。
![Kubosakae Kubosakae](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/0d/dc4ed0925ce06c07d62ab9fc5762760c.jpg)
久保栄全集はかつて書店の仕事をしていたときに、三一書房の営業が、棚卸しで余ったので安く譲りたいと言うので引き受けた。ただし、全12巻のうち11巻と12巻はないという。ないのはそのうち古本屋で探せばいいからと、引き受けることにした。
代金は給料が入ったら払うからと言って半月ほど経ち、営業に電話したら退職したという。本の代金を払いたいというと、それはやめた営業が清算していったから本人に払ってくれという。
しかしその営業とはその後まったく連絡が取れず、結局そのままになってしまった。たしか1000円だか2000円だかだったので、どうでも良かったのだろう。
今から40年以上も前のことだ。
ところが、11巻と12巻が容易には入手できなかった。11巻はまだしも12巻にいたってはたまに古書店に出ても、その1冊だけで1万5千円とか2万円とか、実にばかばかしい値段が付けられていた。
11巻と12巻は書簡や覚書のようなものを集めた巻で、研究者でもなければ絶対に必要なものでもない。もともと発行部数も少なかったのだろう。
だものだからあえて積極的に探求しなかったせいもあって、これはもう自分が生きているあいだに揃うことはないだろうと思っていた。
それが5年ほど前に11巻が古本屋のウェブサイトに4000円で出ていた。すぐに注文した。
ところがほどなく、「既に売れていて、サイトから削除するのを忘れていました、申し訳ありません」と返事が来た。
ああやっぱりダメかと思っていると、一昨年の暮れにふたたび安価で出た。いささか傷んでいたが、とにかく入手できたので、それならばと12巻に網を張っていたのだ。
ところが、たまに出てもすこぶる高い。万単位の金額を払ってまで欲しいものではないので、まあ何かの間違いで安く出るのを待とうと、ずっとおもっていた。
それが数日前に、間違いと言ってしまっては古書店に失礼だが、Amazonの中古でなんと2000円で出ていたのだ。相場の十分の一である。
今日、それが到着した。なんと45年をかけて全巻完結。(実際の刊行は1961年11月から1963年の4月まで)
この全巻を自分が読破することはまずあり得ない。あとは芝居をやっている娘や息子たちが大切にしてくれることを祈るばかりだ。
![Uno_jukichi Uno_jukichi](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/e4/c1b411bbd7a72d1d6e80f4cd680d2063.jpg)
久保栄と言えば「火山灰地」、「火山灰地」と言えば劇団民芸。砂防ホール(都市センターホールだったか)で上演されたときの、宇野重吉の朗読が印象的だった。
先住民族の言語を翻訳すると
「河のわかれたところ」を意味するこのまちは
日本第六位の大河とその支流とが
真二つに裂けた燕の尾のように
まちの一方の尖端で合流する
鋭角的な懐に抱きかかえられている。
北海道、十勝平野を舞台にした壮大なドラマである。
もっとも最近では、知っている限り2005年に劇団民芸が上演したのが最後である。しかし、久保栄を知る人が少なくなった昨今、上演されることはもうないかもしれない。
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久保栄は小説家で劇作家、1958年に58歳の若さでなくなっている。代表作は「火山灰地」「日本の気象」「「林檎園日記」など。
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久保栄全集はかつて書店の仕事をしていたときに、三一書房の営業が、棚卸しで余ったので安く譲りたいと言うので引き受けた。ただし、全12巻のうち11巻と12巻はないという。ないのはそのうち古本屋で探せばいいからと、引き受けることにした。
代金は給料が入ったら払うからと言って半月ほど経ち、営業に電話したら退職したという。本の代金を払いたいというと、それはやめた営業が清算していったから本人に払ってくれという。
しかしその営業とはその後まったく連絡が取れず、結局そのままになってしまった。たしか1000円だか2000円だかだったので、どうでも良かったのだろう。
今から40年以上も前のことだ。
ところが、11巻と12巻が容易には入手できなかった。11巻はまだしも12巻にいたってはたまに古書店に出ても、その1冊だけで1万5千円とか2万円とか、実にばかばかしい値段が付けられていた。
11巻と12巻は書簡や覚書のようなものを集めた巻で、研究者でもなければ絶対に必要なものでもない。もともと発行部数も少なかったのだろう。
だものだからあえて積極的に探求しなかったせいもあって、これはもう自分が生きているあいだに揃うことはないだろうと思っていた。
それが5年ほど前に11巻が古本屋のウェブサイトに4000円で出ていた。すぐに注文した。
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この全巻を自分が読破することはまずあり得ない。あとは芝居をやっている娘や息子たちが大切にしてくれることを祈るばかりだ。
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「河のわかれたところ」を意味するこのまちは
日本第六位の大河とその支流とが
真二つに裂けた燕の尾のように
まちの一方の尖端で合流する
鋭角的な懐に抱きかかえられている。
北海道、十勝平野を舞台にした壮大なドラマである。
もっとも最近では、知っている限り2005年に劇団民芸が上演したのが最後である。しかし、久保栄を知る人が少なくなった昨今、上演されることはもうないかもしれない。
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