不合理ゆえに我信ず

文(文学・芸術・宗教)と理(科学)の融合は成るか? 命と心、美と神、《私》とは何かを考える

社会の実相・人間の本質・自由意志

2014-04-26 12:49:33 | インポート

社会とは何かを考えるとき、「社会の実相」というような言われ方をすることがある。この「実相」という言葉も「本質」という言葉同様、考えれば考えるほど難しくなっていく。

社会は一人ひとりの個人から成っていて、どの個人も一人残らず、たかだか70~80年の寿命で、そして自分の経験(読書等も含む)のみから社会観や人間観を形成している。歴史をもれなくずっと見続けていて、全てを知っている存在者はいない。

では「社会の実相」や「人間の本質」は、各々の個人の思い込みがあるだけで、真実としてのそれは存在しないのか。私は違うと思う。思考をここで中止したくない。

人間は集合的存在であるというのも事実だ。だからツイッターがこんなに流行る。人はつながりを求める。その中で自分の存在を主張したり表現したりする。

私は私なりに「社会の実相」・「人間の本質」と考えるものを持っている。もう何年も前だが、それを議論サイトで述べたら、論客(一般人)たちにことごとく反駁された。

その議論を通じて感じたことは、論客たちは皆、いかにも現代風な虚無主義に毒されているということだった。でもそれを彼らに言うと、侮辱されたと思われて、ものすごく感情的に反発されるのが常だった。

しかし私は、反駁されたり、反発されたりすることで、逆に彼らの自由を感じた。彼らも決して現代風な虚無主義の奴隷ではない。虚無主義を語りはするが、彼らも自分の意見と、守るべき自分をもっている。その意見の中身自体は問題とはならない。

人間が人間であることを離れて、宇宙における純粋客観者の立場に身を置くなら、人間に自由意志はないと言える。しかし人間が自分で、人間に自由意志はないと言うのは、おかしいし、正しくないと思う。宇宙における純粋客観者というのも、思考実験としても、存在し得ない。

純粋客観者というのは、地球はもちろん宇宙における全ての事を、主観的なものが一切なく、完全に純粋に客観的な立場で認識している存在者、という意味。

しかし純粋客観というのは言語矛盾だ。観るためには必ず認識形式が必要で、ある認識形式を導入したら、もうそれは客観ではなくなるからだ。

万物の未来は確定しているという決定論も、おそらく正しくない。それは単に既知の物質法則だけを基に軽々しく推論した予想に過ぎない。

人間の行動を考えるとき、行動を起こすのは「自分」であって、「原因」のかたまりや連鎖が起こすのではない。

無生物にはそういう「自分」がない。人間の起こす行動と無我な自然現象は、同列に扱えない。同列に扱えるのは純粋客観者だけだが、前述のように、そういう存在者はあり得ない。

結局、「自分」というものが、果たして存在するのか、という話になってくる。私はもちろん存在すると考えている。

生物は『「自分」を有するもの』と定義できる。しかしこの「自分」が、どうしても科学の言葉で記述できない。(免疫学では、自己・非自己という概念があるのだが。)

自由意志否定論は、「自分」までも「原因」の側に入れてしまっている。

生物も人間も、自分を守り、自分の仲間を守り、存続させるために行動する。この行動意志は、本能でもあるが、物質性質や機械的アルゴリズムに還元されるものではない。

この「本能」はまさしく「自分」の「意志」の最基層にあるもの。人間は本能の奴隷である(だから自由意志はない)という言い方は、自分は自分の奴隷だと言うのと同じで、意味のない自己再帰と思う。

「自分と自分の仲間を守る」という「本能」は、アルゴリズムそのものではないかと反論されるかもしれない。ではその「自分」をアルゴリズムの中で記述できるだろうか。できない。

ロボットの身体にセンサーを張り巡らして、身体を外的危害から守るように行動させるためのプログラムを書いて、ロボットの人工頭脳に搭載するのは簡単な事だ。でもその身体は単なる設備にすぎず、センサーシステムはビルの防犯システムと同じようなもので、生物身体や生物本能とは似ても似つかないものだ。

ロボットには外部からの危害を「傷み」という「クオリア」で感じる主体がない。ロボットには「生命」も「自分」もない。

人間には、身体の傷みだけでなく、心の傷みも感じる「自分」がある。

そして相手(親しい人)の心の傷みまで、自分の心の傷みと同じように、感じてしまう。

人間の自由意志というのは、成長とともに高次元化していく。「自分」だと感じる範囲が拡大し、「本能」による意志行動が高度化していく。

「生命」と「本能」と「自分」は、分離不可な一体物。この神秘をまだ誰も解き明かしていない。解き明かせる見通しもない。


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