夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『海洋天堂』

2011年07月31日 16時44分30秒 | Weblog
 水族館で働くシンチョンは、妻を亡くしてから、自閉症の息子と二人で暮らしてきた。息子のターフーは既に21歳となり、公的な施設への入所は難しい。だがある日、シンチョン自身が末期ガンで余命いくばくもないことがわかる。一度は、ターフーと死ぬことを考えるシンチョンだが、失敗する。そして、自分が死んでしまっても、ターフーが普通に暮らしていける環境を整えたい。そう願うシンチョンは、ターフーが一人で生活していけるように、丁寧に丁寧に日常を過ごしていく。
 息子を愛してやまない平凡な父と、父のことが大好きな息子の日常を描いた物語。淡々と流れる日常だからこそ、胸を打つ。“天堂”は“天国”を意味する。
 映画に登場する人は、いい人ばかり。障害者がかかえる問題は、答えがなく、終わりもないのであろうが、この映画はただ、一つの家族の物語として捉えたい。周りの人の力を借りながら、ターフーは成長していくが、その関係と距離感が絶妙である。
 脚本・監督は『北京のヴァイオリン』の脚本を担当したシュエ・シャオルー。シンチョンを演じるのはジェット・リー。アクション俳優としてハリウッドでも有名な彼が 、ヒーローではない普通の父役を演じているのが驚きだ。アクション俳優とは思えない、その演技に注目である。そして、自閉症のターフーを演じるのは、ウェン・ジャン。この映画を特別なものとしてでなく、さりげない日常を描いたものだと思わせるのは、彼の存在が大きい。名作と言える1本。
 第13回上海国際映画祭メディア部門 最優秀作品賞、新人監督賞(シュエ・シャオルー)、主演男優賞(ウェン・ジャン)を受賞した作品。

『シャンハイ』(試写会)

2011年07月26日 11時58分04秒 | Weblog
 イギリス、フランス、アメリカ、日本の共同租界地として位置していた上海。そこは、栄華を誇っていたが、欲望や妖しさを持った都でもあった。1941年の上海を舞台に、国々の陰謀と野望の中で、時代に翻弄される男女を描く。
 米国諜報員のポールは、同僚のコナーが殺害された件で上海にやってくる。しかし、捜査線上に浮かび上がるのは謎に包まれた人物ばかりだった。ポールをつけ狙う日本人軍の大佐・タナカ。コナーの恋人のスミコ。日本と闇取引をする上海三合会のボスのアンソニーと、その妻のアンナ。やがて事件は、太平洋戦争へとつながっていく。
 冒頭の、港に船がつかない…という行に注意。あとは、事件のカギを握るスミコが、いつ出てくるか、彼女が話す内容が真相を導く。愛と野望の果てに残るものは…。
 注目の配役は、アンソニー・ランティンにチョウ・ユンファ、アンソニーの妻アンナ・ランティンにコン・リー。ポール・ソームズには『2012』のジョン・キューザック。そして、コナーの恋人で事件の鍵を握る娼婦に菊地凛子。タナカ大佐に渡辺謙。香港映画を観てきた人は、ある種の懐かしさを感じこともあるだろう。監督は『ザ・ライト‐エクソシストの真実‐』のミカエル・ハフストローム。コン・リーの妖艶さは、さすが。菊地凛子は少ししか出てこないが、彼女のポジションがこの映画の要のはずだ。しかし、彼女が何を語ったかは…?この映画、何かが足りないような気が…。
(7月25日、エル・シアターにて試写会。8月20日、公開)

『ワラライフ!!』

2011年07月19日 12時59分37秒 | Weblog
 吉本興業のお笑い芸人にして、料理人など多才なところを見せているキム兄こと木村祐一。彼が企画し、監督したのがこの『ワラライフ!!』である。
 東京で結婚しようと部屋を探す修一と恋人のまり。同時期に家族が引っ越すこともあり、実家に手伝いに行くと、なぜだか子どものころのことが思い出されてきて…。
 子どものころを振り返りながら、今の自分を見つめ直して前に進もうというストーリー。子どものころの小さいエピソードの積み重ねが物語の軸。小さいことだけど、自分には大事な出来事だった、と思わせたいんだろうがしかし、このエピソードがショートコントにしか思えない。ショートコントをたくさん見せられても、飽きて疲れてしまう…というのが正直なところか。
 冒頭のシーンのあと、タイトルが出る前に修一とまりが二人で坂道を歩いて上っていく。そして、空が映る。それが一番いい場面で、映像の描き方も理解できる。
 主人公の古川修一には、しずるの村上純。修一の恋人・綾城まりには香椎由宇。ほかには、田畑智子、高岡蒼甫、鈴木杏樹、吉川晃司などが出演している。
(2011年1月29日公開作品。タナベキネマにて7月22日まで『わさお』と2本立てで上映中)

『大鹿村騒動記』

2011年07月16日 20時31分03秒 | Weblog
 長野県大鹿村。ここには、300年以上続く伝統芸能・大鹿歌舞伎がある。それは、作るのも演じるのも村人たち。日々練習に励み、本番が5日後になったころ、事件は起こる。歌舞伎の主演を演じる、シカ料理店のオーナー・善ちゃん(原田芳雄)のところに18年前に駆け落ちした妻と幼なじみの治がやってきた。妻は脳の病気で、記憶がなくなってきつつあるという。治は、自分の手に負えないからと、妻を善に返しにきたのだ。しかも、リニア新幹線の誘致の問題も起こり、歌舞伎どころではなくなるが…。
 そんなこんなの大騒動を人情たっぷり、ユーモアたっぷりに描いている。
 主演である原田芳雄の企画ということで、さすがに大人を楽しませてくれる。昔なつかしい雰囲気を醸し出す良質の作品。それぞれの人間模様と、大鹿歌舞伎に注目しよう。
 善の妻に大楠道代、善の妻と駆け落ちする善の幼なじみに岸部一徳。他のキャストも三國連太郎、佐藤浩市、松たか子、石橋蓮司、瑛太などと豪華である。監督は阪本順治。遊び心いっぱいで、この映画は特別価格。いつでも誰でも千円で観ることができる。個人的には、佐藤浩市のコメディアンぶりを楽しんでもらえたら…と思う。

『コクリコ坂から』(試写会)

2011年07月08日 10時15分13秒 | Weblog
 海(主人公)は、信号旗を毎日上げている。旗は「uw」(安全な航行を祈る)である。海は、あるタグボートから旗信号に返礼があるのを、まだ知らずにいた。
 1963年。横浜のある高校では、明治時代に建てられたクラブ・ハウスを取り壊すべきか、存続するかで論争がおきていた。そんな事件の中、16歳の少女・海と17歳の少年・俊は、想いを寄せていくようになる。しかし、俊には出生の秘密があった。
 東京オリンピックを控え、活気づく日本。高度成長期を背景に、さまざまな価値観と生きる形を映し出す。日々、安全に生きられるように、安全に航行できるように、普通に生きていけることの大切さがメッセージとして伝わる。『ゲド戦記』以来、宮崎吾郎が約5年ぶりに監督を手掛けた。ファンタジーは描かれていない。企画・脚本は宮崎駿、原作は高橋千鶴・佐山哲郎。上映時間は91分。
 声の出演は、長澤まさみ、岡田准一、竹下景子、石田ゆり子、香川照之など。
 雑感-誰が…というわけではないが、プロの声優がいいのでは? 俳優陣の顔がチラついてしまい、ストーリーに集中できない(∋_∈)というのが難点??
(7月7日エル・シアターにて試写会、7月16日公開)