夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

「《ゲキ×シネ 蛮幽鬼》」(試写会)

2010年09月29日 07時48分50秒 | Weblog
 劇団☆新感線の舞台に上川隆也、堺雅人、稲森いずみらが参加。豪華キャストに珠玉の脚本がコラボした。演出も冴え渡る。ド迫力!これを体感しない手はない。
 蛮教を学び、留学を終えた4人の若者たち。国に帰る日が迫ったある日、仲間の一人が殺される。そして、無実の罪で監獄島に幽閉されたのは伊達土門だった。
 10年の時が流れても、土門は監獄島に閉じ込められたまま。最悪な状況の中で、自分に濡れ衣を着せた仲間へ復讐することだけを糧に生きていたのだった。そしてとうとう、島の奥深くに捕らえられていた男・サジの力を借りて脱獄に成功する。
 1年後。国に戻り、もともとの身分を隠し、別人として生きる土門は、復讐へ向けて着々と準備を進めていた。しかし、そんな土門の前にかつて愛していた女・美古都が現れる。
 美古都は、大君の妻となっていたが、大君が死んだことにより、美古都が国を治めることになる。こうして、土門と美古都は敵同士として向き合うこととなるのだが…。
 サジは敵か見方か?土門の復讐は果たせるのか?土門と美古都の真実の心は?

 息をつかせない展開でたたみかける。ラストに向かう殺陣のシーンは、圧巻。迫力は最高潮となる。怒涛のクライマックスだ。そして、最後は感動の渦
 やまない権力争い。政(まつりごと)を裏で手を引くものもいて、真の民のための政とかけはなれていく。また、真の愛とは何か…。物語の中に隠されたメッセージはたくさんある。
 作・中島かずき、演出・いのうえひでのり。そして高田聖子などのお馴染みの劇団☆新感線のメンバーとさらに早乙女太一が加わり、華麗な剣さばきを見せる。伊達土門は上川隆也。サジには堺雅人、美古都には稲森いずみ。ニコニコ笑いながら簡単に人を斬るサジの堺雅人は、なぜだかぴったりの役柄だ。
(10月2日より公開)

「シークレット」(韓国)

2010年09月20日 18時46分15秒 | Weblog
 韓国映画には、元来得意とする分野があると思う。『シュリ』を代表作とする民族間の戦争のもの、光州事件のような独立運動を土台にしたもの、『下女』などのエロチシズム。(男くさい)サスペンス・アクション。この作品は、裏社会と社会正義である警察とのサスペンスだが、伏線がいくつもあり、重層的な話。見ごたえありの作品。
 キム・ヨンスル刑事と妻は、子どもを1年前に亡くしてから、夫婦とは名ばかりの間にある。子どもを亡くした原因はキム刑事の飲酒運転にあった。
 ある殺人事件の現場。そこには、キム刑事の出かけた妻がしていたイヤリングと、服のボタン、妻がつけていた口紅のあとがついたグラスワインがあった。妻が犯人とならないよう、それらの証拠を隠滅し、違う人物を犯人に仕立てあげようとするキム刑事。
 しかし、殺されたのはヤクザの弟で、その兄ジャッカルはどんな手を使っても警察よりも先に犯人を捕まえて痛い目に合わせるという。そこから、妻をヤクザに渡すわけにはいかないキム刑事と犯人を捕らえたいジャッカルとの手に汗握る攻防が始まる。しかし、ジャッカルが追っていたのは弟を殺した犯人ではなく、弟が隠したものだった。
 冒頭から伏線がいくつもあり、展開に驚き。正義と裏切りの連続。次から次とハラハラドキドキして期待する。真実は?そして、妻との本当の関係は?
 すべてはシークレット。本当に怖~い真実は(精神的な怖さ)、エンドロール中にある。韓国社会の構図や家族関係、夫婦関係が濃密な韓国事情、社会背景を知っていると、伏線部分もより理解できるだろう。上質なサスペンスだ。
 キム刑事には『拍手する時に去れ』のチャ・スンウォン、その妻に「ホテリアー」「オンエア」のソン・ユナ。監督は『セブンデイズ』の脚本家ユン・ジェグ。撮影監督は『チェイサー』のイ・ソンジェ。犯罪関係を得意とするスタッフが集まった。
(2009年、韓国公開作品)

「オカンの嫁入り」

2010年09月19日 18時15分10秒 | Weblog
 日常に起こりうることを丁寧に丁寧に描き、ストーリーを積み上げた。主要キャストは5人。シンプルなストーリーながら、邦画の良心のような作品。
 ある日突然、真夜中に母・陽子が「月ち~ゃん、おみやげ~」と言って帰宅する。母は若い男性・研二を連れてきていた。研二は30歳。陽子の結婚相手だという。娘の月子にはそれを受け入れることができず、困惑する。しかし、陽子が病気で余命1年だということがわかり…。なぜもっと早くに病気のことを話してくれなかったのかと、母をなじる月子だったが、母には母の望む人生があった。
 角隠しを着た母が娘に、嫁ぐ挨拶をする。それは同時に娘へのさようならのメッセージであり、これから生きていくメッセージでもある。
 この映画で満足感を得ることができるのは、何と言っても月子を演じる宮崎あおいと母・陽子を演じる大竹しのぶの演技に尽きる。演じているふうでもなく、頑張って大阪弁をしゃべってます、という雰囲気もない。他の出演者が関西出身で芸達者なだけに、力が入るところだが、その二人の自然な演技が生活感を漂わせる。その感覚がこの映画のすべてと言ってもいい。宮崎あおいはこれまで、小資本の映画作品にも積極的に参加している。すなわち作品内容重視で映画を選んできたとも言えるだろうが、この作品は宮崎あおいの代表作の一つになるかもしれない。
 今作を観て、改めて自分の周りにあるものが、当たり前に手に入ったものだと思わずに、見つめ直してみてはどうだろうか。感謝するべきところには、きちんと感謝を。
 研二役には桐谷健太。原作は咲乃月音の「さくら色 オカンの嫁入り」。監督・脚本は『酒井家のしあわせ』に次いで今作が2作目となる呉美保。

「悪人」

2010年09月17日 10時33分07秒 | Weblog
 ある一つの事件や日常に何気なく起こることを丁寧に描くのが日本映画の特徴であり、いいところ。この作品もそんな日本映画の一つ。
 清水祐一は土木作業員。長崎の外れの港町で生まれ育った。母には捨てられ、祖母が祐一を育ててきた。恋人もおらず、いつも孤独感を抱え、車だけが趣味で立派なスポーツカーを乗り回している。
 一方、馬込光代は佐賀の紳士服量販店で働いている。妹と二人暮らし。毎日が店と自宅を往復するだけの日々。しかし、誰かとつながりを持っていたい光代は、出会い系サイトを通じて祐一と出会う。そして、光代は初めて人を愛するということを知る。祐一も光代に「もっと早く出会っていれば良かった」と伝える。祐一には秘密があった。祐一は、光代にその真実を打ち明ける。殺人犯であるということを…。そして、そこから先の見えない逃亡劇が始まる。
 加害者と被害者の家族。その者の孤独感や喪失感だけでなく、その殺人事件が起こるきっかけをつくった者たちの罪も描き出している。最後には、誰が本当の悪人と感じるか、現代を生きる者に課題を残す終わり方となっている。随所に出てくる光る“目”。それらの目から目を離さないように見ることをオススメする。
 原作は吉田修一の同名小説。吉田修一は、監督の李相日とともに脚本も手がけている。殺人犯の清水祐一には、この役をやることにこだわりを見せた妻夫木聡。いい人の役が多かった彼だが、この作品で新境地を見せる。馬込光代には、演技の幅が広く最近は奥深い演技を見せる深津絵里。祐一の祖母には樹木希林。祐一に殺されるOLには、注目の若手女優・満島ひかり。そのOLを翻弄する大学生にはこれまた注目株の岡田将生。これだけのキャストが揃っているが、大作ではない。一つ一つの過程を丁寧に描いたヒューマンストーリーである。
 光代を演じる深津絵里がモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞受賞。この作品に対する注目度をぐんと押し上げた。彼女の息づかい一つ一つが、セリフ以上に言葉を語る。世界が認めた演技を観に行くのを理由に、この映画を観るのも悪くない。

「TSUNAMI-ツナミ-〈吹替版〉」(試写会)

2010年09月16日 22時42分57秒 | Weblog
 地質学者・キムは、ここ何ヶ月も続く海底地震により、“メガ津波”がくると予告していた。しかし、上司は韓国には“メガ津波”どころか“津波”さえくるはずがない、と相手にしてくれない。
 2004年のインドネシアの津波の影響で父を亡くしたヨニ。ヨニのそばで本当の兄のようにいるマンシク。リゾート地・ヘウンデに遊びにきたヒミとヒミに一目惚れをした海洋救助員でマンシクの弟・ヒョンシク。仲違いする母と息子。そして、壊れかけた家族。その4つが物語の柱。
 そして、海水浴に訪れた行楽者たちや釜山市民に、高さ100メートル、時速800キロメートルの津波が襲いかかる。大掛かりなCGの中に、4つの物語が組み込まれ、それぞれの出会いや別れが重なり合う。それぞれ訪れる幸福と試練とは。
 吹き替えは有名タレントではなく、プロの声優がつとめているので吹き替えている人の顔がチラチラと頭に浮かぶことはない。パニック映画だけに、ゆっくり字幕を追えないので吹き替えの方が画面に集中できる。しかし、韓国での独特の言い回しが感じられないのが残念でもある。
 2009年7月に公開され、韓国映画歴代4位の興行記録を樹立した。いわゆるスター主義の映画ではないが、ハリウッドからCGプロデューサーを招くなど、迫力ある映像をつくるためにかなり本気。
 兄と妹のように支え合う幼なじみの二人には、『シルミド』『力道山』のソル・ギョングと『セックス イズ ゼロ』「ファン・ジニ」のハ・ジウォン。他に、イ・ミンギやパク・ジュンフンなど。監督は『マイ・ボス マイ・ヒーロー』『セックス イズ ゼロ』のユン・ジェギュン。韓国映画ならではの展開だ。やりすぎ!と思うところは、迫力の体感ということで。
(9月25日公開)

「東京島」

2010年09月05日 19時20分42秒 | Weblog
 サバイバルを生き残れる強さがあるかどうかは、この世知辛い世の中、重要なのかもしれない。そして、サバイバルを共有する仲間との共感や共存が必要で、生きていくための規則も必要となってくるだろう。脱出を図ろうとする者、現実を受け止めようとする者がいる。サバイバルも長く続くと、狂気を生み出すこともあるだろう。
 無人島に漂流した23人のうち、ただ一人の女である清子。過酷なサバイバルに耐えられなかった清子の夫は、崖から転落死する。清子は、生き抜きくために2番目の夫、3番目の夫を向かえ入れる。どうしても脱出しようと、力強く生活していく中国人の漂流者たちに対して、その日暮らしで計画を立てながら生活できない日本人の漂流者たち。それでも日々、精一杯生きていくしかないのが現状だ。そして、少しずつ環境が変わっていく中で、清子は自分にとってのベストの結論を出すことになる。
 この展開は、ミステリー?ヒューマン?はたまた、ラブコメ?いろいろな要素が満載と言えばそうなのかもしれないが、どっちつかずで、悩んでしまう。清子の生きる力はわかる。しかしヒューマンものと考えるなら、ストーリーが冗漫かも。
 “不幸な役が似合う女優”木村多江がいよいよ単独主演。これまで難役を多くこなしてきた彼女ならではの演技は秀逸。失礼だが、この作品で“美”を求められていない、役がぴったりでもある。
 原作は桐野夏生の同名小説。監督は『おかえり』の篠崎誠。ところで、久しぶりに窪塚洋介を見た。何か問題を抱える謎めいた人物を演じていたが、はっきりとした背景がわからず、残念な気がした。清子と同じようなにおいをもちながら、清子とは反発しあうワタナベを演じる。
 清子の真実の戸籍上の夫は鶴見辰吾、無人島で3番目の夫になるのは、福士誠治。夫によって、木村多江は違う人物かのように演じきる。