夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

「ハゲタカ」(試写会)

2009年05月29日 12時40分52秒 | Weblog
 07年のNHK土曜ドラマで、大反響を巻き起こした「ハゲタカ」の映画化。当時、゛企業買収゛というテーマで話題となった。
 今回の映画化にあたっても、ドラマの主要キャストはそのままで、ドラマの゛世界観゛は映画にも表れている。
 銀行員時代での苦い思いでを抱きながらも、ハゲタカとして冷徹に日本企業を買い叩いていた鷲津政彦であったが、大空電気買収騒動の最中、米国本社から解任される。その後、鷲津ファンドを設立したが、日本のマーケットに絶望し、一線から退き海外生活を送っていた。そこに、かつての盟友・芝野が突然現れ、「アカマ自動車」が買収されてしまう…と鷲津に告げる。「アカマ」を買収しようとしているのは、中国系ファンドの゛赤いハゲタカ゛劉一華。鷲津は、劉が米国時代の同僚であったことを思い出し、日本の危機を感じとる。そして鷲津は、゛アカマ゛のホワイトナイトとなる。
 しかし、劉のバックには、中国政府が絡む巨額の資本があった。
 ドラマから発展して映画化されるということは、スケール感を含めてドラマと映画の違いをつけるということ。海外を飛び回るシーンを取り入れる方法というのは安易だ。この作品でも、中国やドバイが登場する。しかし、シーンとしての必要性は感じる。ただ、ドラマだとじっくり描くことができたであろう、その人間の背景、どうしてそういう生き方を選んだかということが、映画では観るものの判断に委ねらているので、もう一押しあってもよかった。
 天才ファンドマネージャー鷲津政彦を演じるのは、ドラマ同様に大森南朋。芝野健夫にはこれもドラマ同様に柴田恭兵があたっている。また、松田龍平や栗山千明の役どころもドラマ同様で要所で出演している。劉一華は、ドラマのファンであったという玉山鉄二が演じている。

「グラン・トリノ」

2009年05月22日 21時48分38秒 | Weblog
 あらすじで説明すると、差別意識が強いとか、貧富の差が激しいから犯罪が起こるとか、暴力は新たな暴力を産むだけとか、ありきたりな言葉の羅列になる。ただ、そんな言葉を思いながらも、最後に心に響いてくるものは何なのだろう。
 『ミリオンダラー・ベイビー』から4年、名優クリント・イーストウッドの今作は、またまた奥が深い人間ドラマだ。
 愛する妻に先立たれ、一人で暮らすことになった頑固者の老人・ウォルト。他人のやることなすことが気に入らず、二人の息子たちにも、孫たちにも煙たがられている。
 ウォルトの隣に住む゛モン族゛の少年タオは、従兄弟にけしかけられ、ウォルトが所有するヴィンテージ・カー(グラン・トリノ)を盗もうとするが失敗。しかし、そこから、不思議な友人関係が成立していく。
 そして、思いもよらないラストが待ち受けている。
 人種問題について、正面から向き合ったストーリーと言えるだろう。他にも、細々挙げるとありきたりのことになるけれど、いろいろなことすべてを゛いつまで続けるつもりや~゛と、伝えているのだと思えた。
 製作・監督・主演を務めるのは、クリント・イーストウッドである。

「消されたヘッドライン」(試写会)

2009年05月15日 12時54分50秒 | Weblog
 イギリスBBCテレビで2003年に放送された人気サスペンスドラマを映画化したもの。当初、主演のラッセル・クロウはこの役を引き受けるつもりはなかったが、監督のケヴィン・マクドナルドの人柄と、脚本の面白さにひかれて出演を決めたとのこと。
 
 ある企業の兵器の購入に絡む汚職事件を追求しようとする国会議員のスタッフが地下鉄の駅構内で死亡する。被害者女性は、国会議員コリンズの愛人であった。ワシントン・グローブ紙の記者であるカルは、被害者女性と国会議員の関係をさぐるうちに、前夜に起こった別の殺人事件とつながりがあることを見つける。渦中の人物である国会議員のコリンズとカルは大学時代からの親友で、カルは事件からコリンズを守ろうと真実を探し出すために動き始める。兵器購入に絡む企業とある国会議員との癒着。亡くなったスタッフ女性の背後などが絡み、事件は複雑になっていく。編集長からコリンズに関する記事を書くよう迫られるカルだが、ありきたりのゴシップのような記事よりも、真実を書きたいと思い、奔走していた。
 そこに待ち受けていた、本当の真実とは…。
 『運命を分けたザイル』や『ラストキング・オブ・スコットランド』で独特の映像と世界観をみせたケヴィン・マクドナルド監督の注目の一作。緊迫感のあるストーリーとなっている。
 共演は、国会議員のコリンズにベンアフレック、ワシントン・グローブ紙の編集長に『クイーン』のヘレン・ミレン。 ラッセル・クロウは、おっさんになったなぁと思いつつ、観てしまいますが、これはきっと役柄でしょう。

「闇の子供たち」(DVD)

2009年05月10日 17時55分39秒 | Weblog
 この原作を読んだときの衝撃は、言葉にできないほどだった。何度も本から目を離し、ため息をついた。自分の国とは違うところで行っている恐ろしいこと、気づいてはいたけれど、目をつぶろうとしていたこと。臓器移植、この現実から目をそらすことができますか?
 タイ・バンコクのスラム。少女が一人売られ、その父が男からお金を受け取る。少女の姉も、こうして売られていった。少女の名はセンラー。ブローカーの男に手を引かれながら不安そうな顔をみせるが、連れて行かれる。
 新聞記者の南部は、タイで密かに行われている臓器移植について調べていた。死んだ子どもの遺体をブローカーが密かに買い取って闇で移植をする。そう考えていたが、事態はもっと深刻で恐ろしいことだったことが徐々にわかっていく。
 チェンライの売春宿では少女がエイズにかかっていた。治療も受けさせてもられず、まだ生きているのにゴミ袋に入れられ、ゴミ収集車に投げ込まれる少女。しかし、最後の力を振り絞り、少女は故郷へ向かって歩きだしていた。それが、センラーの姉であった。
 南部は、タイで日本人の子が心臓の移植することを知る。
 一方、姉と同じように売春宿で働かされるセンラーだが、ある日突然、自分だけの待遇がよくなることに驚く。だが、それは更なる恐怖が起こる前触れにすぎなかった。
 幼い子どもが売買されることに絡む大人たち。警察もブローカーも、現地人のボランティアも、医者も、はたまた国も、すべてがグルではないか??富裕国の発展途上国に対するわがままと傲慢ぶりに憤りながらも、無力であることを痛感させられる。
 原作前半のえげつない子どもへの性的虐待場面は、映画では限界があるのか、詳しく描かれていない。その分、臓器移植の問題をクローズアップしている。
 また、ラストは原作とは異なっている。
 小説の内容にあまりの衝撃さもあり、映像化は難しいとされていたが、社会化作品の映像化には定評のある阪本順治監督が映画化した。
 日本の子どもの臓器移植法について、問題を投げかけた作品。
 新聞記者・南部に江口洋介、臓器移植手術の証拠写真を撮るカメラマン・与田に妻夫木聡。また、NGOに日本からボランティアとしてやってくる音羽恵子に宮崎あおい。病気の我が子をタイで臓器移植をさせようとする梶川夫妻には、佐藤浩市と鈴木砂羽が扮する。原作は、梁石日。
 とても重い内容で観るのに覚悟は必要だが、原作のスケール観が頭をよぎることも確かで、映画化の難しさも感じられた。

「チェイサー」

2009年05月02日 00時08分51秒 | Weblog
 最近、韓国映画では映画館を女性が席巻しているが、この「チェイサー」は男性客が目に付く。しかり…ハ・ジョンウが血も涙もない猟奇的な人間を演じている。内容も重いサスペンス。
 ハリウッドが絶賛し、リメイクされることが決定している作品。
 言うなれば、『復讐者に憐れみを』や『殺人の追憶』のテイスト。
 連続殺人犯で逃げる男と、その男を追う元刑事。デリヘルを経営している元刑事ジュンホの下から雇っていた女性たちが次々と失踪する。
 携帯電話の通話記録から、ジュンホはヨンミンという男を割り出す。女たちを売り飛ばしたと思い、警察に突き出すジュンホだが、ヨンミンが連続殺人犯だとわかり…。
 最初は、連続殺人犯を連続殺人犯だと認めないジュンホがもどかしくなる。しかし最後は、やりきれない気持ちがこみあげる。良質の一作である。
 アホな権力の傍らで罪のない市民が被害者になる…どこの国にもある話だ。悲しくて虚しい。
 この話がハリウッドで製作されると、殺人のシーンの描き方が変わってくるはず。そうなると、まったく違う映画になってしまうであろうと思われる。ひと頃、韓国映画はハリウッドを目指し、作品の内容は海外資本に向いていた。スターを使えばヒットするというそんな考え方。しかし今、韓国映画はバブルがはじけたこともあり、衰退。それがきっかけで低資本だが、良質な映画が作られるようになったとも言われる。新たに歩きだした韓国映画ということが言えよう。
 ヨンミンを追う元刑事は、ベテラン俳優のキム・ユンスクが扮し、見ごたえのある映画となっている。
(2008年、韓国)