D9の響き

Guitarを肴につらつらと・・

Stuff('76)/Stuff

2008-04-23 20:31:40 | band
'76年シリーズでお送りしておりますが、これも絶対外せない音盤です。
この年、正式に結成しレコードデビューを飾ったスーパー・バンド“Stuff(スタッフ)”の1st作。
・・これは名盤中の名盤じゃないでしょうか。

'70年代初期頃から異種ジャンル間での交配が顕在化する中、その担い手は現役ミュージシャン達が中心であったと聞きます。
中でも色々なジャンルで活躍していたスタジオ系ミュージシャンの間ではこの動きが顕著だったようです。
現在“Fusion Music(フュージョン・ミュージック)”と呼ばれる分野でも当時はまだ黎明期であり、“Cross Over Music(クロス・オーバー・ミュージック)”と呼ばれていました。
これも誰かが考えた単なる切り口のひとつであって、詰まるところ“インプロヴィゼーション”に市民権を与える動きだったんじゃないか、と思います。
ジャンルや作法に左右されず、如何に自由に音を表現できるか、と言うことへの渇望がその源泉であり、当然当事者である現役の表現者がその主体だったと・・。
“閉塞感”に煽られる状況が、いつの世でも大きな動きを起こす原動力になってるちゅうことですか。

この作品、本国アメリカではさほど注目を浴びていなかったようですね。
前出の“クロス・オーバー”なんて言葉も、専門家達や日本や欧州の一部でもてはやされただけに留まっていたみたいです。
ただ、同時発生的に同じ系統のバンドが生まれていたという事実は否めない訳で、ひとつのカルチャーを象徴する存在で有ったと言うことは間違いないと思います。
・・実際、ポスト・フラワーであった当時の音楽の存在意義なんてものは、残念ながら娯楽以上の価値を有していなかったような状況ですがネ。
いまで言えば“オタク”の世界の出来事で済まされていたのかもしれません。

で、そのスタッフですが、“The Encyclopedia of Soul”というセッショングループ(日ごとに名前が替わってたそうです)が母体になったようですね。
全員がニューヨークをベースに活躍していた凄腕の連中ばかりですが、ベースのエドワーズがリーダーで、演奏中も必ず彼がアイコンタクトなどで指示を出しながら、ほぼ“ノンストップ”で進行していたようです。
この辺の様子が最近リリースされた“Stuff Live at Montreux 1976”というビデオで確認できます。
(上記フォトのブルーの分がそれ)
ちなみにこのビデオは、1stアルバムリリース前に行われたMontreux Jazz Festival'76での7月2日のステージを納めたもので、アルバムからは2曲が演奏されてます。

話を戻します。
今更説明の必要もない程有名な面子なんで詳述はしませんが、我々の興味の中心は多分に漏れずティーとガッドの存在じゃないかなと思います。

personnel:
Cornell Dupree(g:当時33歳←'42年12月19日テキサス州フォートワース生)
Gordon Edwards(b,per:当時38歳→'38~'39年生)
Stephen Gadd(d,per:当時31歳←'45年4月9日NY州ロチェスター生)
Eric Gale(g:当時41歳←'34年9月20日NY州ブルックリン生、'94年5月25日没)
Christpher Parker(d,per:当時25歳→'51~'52年シカゴ生)
Richard Tee(kb:当時32歳←'43年11月24日NY州ブルックリン生、'93年7月21日没)

tracks:
1.Foots“フーツ”
2.My Sweetness“いとしの貴女”
3.(Do You)Want Some Of This“ウォント・サム・オブ・ジス”
4.Looking For The Juice“ルッキング・フォー・ザ・ジュース”
5.Reflections Of Divine Love“素晴らしき恋の想い出”
6.How Long Will It Last“ハウ・ロング・ウィル・イット・ラスト”
7.Sun Song“サン・ソング”
8.Happy Farms“ハッピー・ファームス”
9.Dixie(traditional)/Up On The Roof“ディキシー/アップ・オン・ザ・ルーフ”

ティーのピアノはゴスペルスタイルと呼ばれてたそうです。
ことある毎にクリシェを刻みながら盛り上げてゆくプレイは、確かにゴスペルに裏打ちされた手癖と言えそうです。
本作では#5“Reflections Of Devine Love”の後半や#9“Dixie/Up The Roof”あたりがそれですね。
彼はライブではもっぱらピアノと格闘してますが、本作では同じくらいのウエイトをローズのプレイが占めてます。
これがまた絶妙にいいんですね・・とろけそうなサウンドに痺れます。
特に#2“My Sweetness”は最高ですね・・言葉を失うプレイです・・もちろん、一押し。
#7“Sun Song”などもロマンチックでいいですね。

邦盤ライナーの小倉エージさんの解説から判断すると、面白いことに、この作品のリリース当時はガッドよりパーカーの方が日本では名が売れてたみたいなんですね。
パーカーはBrecker Bros.のメンバーだったということもあるんじゃないでしょうかネ。
しかも、翌'77年の大貫妙子さんの2nd作を創るにあたり招聘されたのもパーカーだった・・仕事の混み具合もあったとは思いますが、経緯からみて明らかにパーカーありきだったのは事実だったようです。
それが昨今はガッド一点張りで“パーカーって誰?”てな具合ですものね。
ガッドの強烈なスネアワークの様が前述のビデオでもちょっとだけ観れます・・確かに凄いです。
マーチングバンドで鍛え抜いたルーディメンツをモダンドラムの世界で世に広めた功績は計り知れないものがありますよね。
#2“My Sweetness”などで多用してますが“一体何やってるの?”て感じです。

ただね、ツイン・ドラムのはずなんですが、何度聴いても一人分にしか聞こえないんですよね、ほんまに。

ギターの2人、デュプリー&ゲイルらのプレイは余りに渋すぎて、私の手には負えませんので、パス。(笑)
鳶職人&シンプソンズ(笑)みたいな風貌にかなり損されたのは間違い無いはず。
彼等の絶妙の16ビートは、とても真似出来る業では有りません・・#1“Foots”なんかが好例でしょうね。
ちなみに本作では、右がデュプリー、左がゲイルにギターが振り分けられています。

という訳で、#6“How Long Will It Last”あたりが次点ってとこでしょうか。
アップテンポでスタッフらしいノリの良い曲だと思います。
ベースも含めて、すべてのパートがバランス良く凄いですね。


【Stuff LtoR:Gale,Parker,Tee,Dupree,Gadd,Edwards】

ティーとゲイルがいない今となってはもう再現のしようもありませんが、ホントにすばらしいバンドだったと思います。
時代性もあったとは思いますが、彼等のようなあの熱い雰囲気に現在でも触れてみたいと熱望するのは私だけでしょうか?


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6 コメント

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大好き!!!! (FUSION)
2008-04-23 23:41:12
お邪魔します。
仰る様に名盤中の名盤ですネ。本当に良く聴きました。彼たちのサウンドはテクニック云々等では決して語れない純然たるサウンドだと思います。
「フュージョン」と言う音楽のある「特定の一部」が(決して全てでは有りません!)楽器を上達する為の単なるエクササイズに成り下がった時期がありました。そんな時このアルバムを手に取ると、スタッフの曲を眉間に皺寄せながらフレーズをコピーしたりする事が如何に無駄な事か・・・音楽本来の素晴らしさと楽しみ方を教えてくれる・・・私にとってそんな存在でもあります。
>彼等のようなあの熱い雰囲気に現在でも触れてみたいと熱望するのは私だけでしょうか?
同じく私も今でも熱望しています。熱い雰囲気・・・それが何より大切だと思います。一般にクロス・オーバーと呼ばれた時代にはそれを如実に感じさせるサウンドが多かったですネ(因みに私はフュージョンとクロスオーバーの区別はありません・・・がポリシーです・笑)
理屈っぽい長文で失礼しました。
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金字塔 (桃猫)
2008-04-24 02:21:48
なにやら、また懐かしネタですね。アルバムの絵柄を見ただけで、ドン・グロルニックのフェンダーローズが聞こえてきそうです。ちなみに、当時、エリック・ゲイルが好きで、聴きまくりました。コンパクトにまとまっていましたが、完成度合いの高さとニューヨークテイストが相俟ってかなり至高な作品でした。
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お勉強できました~ (evergreen)
2008-04-24 14:17:44
いや~本当にこの時代はこういうのが
熱かったです。皆がフュージョンが
カッコイイと言い出した時期でしたよ。
とにかく暑苦しいのはイモ(すみません)
と言って、それと同時にファッションも
長髪が減って、ジーンズなども小奇麗になってゆきましたよ。横道それていますが
このSTUFF、今でもたまに聴きたくなります。
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FUSION様 (elmar35)
2008-04-24 19:38:34
コメントありがとうございます。
まさにFUSIONさんのための作品て感じですね。(笑)
おそらく山の様に語る事柄が御座いましょうが、貴ブログで続きをお願いしたいです。
なかなか微妙な内容なので、記事が纏まらず苦労しましたよ。(爆)
ほんとに凄い作品ですね。
いつ聴いてもローズのサウンドにウットリしてしまいます。
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桃猫様 (elmar35)
2008-04-24 19:42:44
コメントありがとうございます。
・・すんません(笑)
しかし思い切りNYぽいこのような雰囲気の作品がめっきり少なくなってきましたね。
最近のNYはミクスチュアとか擬似アナログなんてのが流行ってるんですかね。
常に刺激的であることには間違いないとは思いますが・・。
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evergreen様 (elmar35)
2008-04-24 19:50:06
コメントありがとうございます。
貴女がこれに反応して下さるとは・・ちょっと意外というか、とっても嬉しいです。(笑)
奴らのルックスはちょっとイモ系?
演ってることとのギャップが大きすぎるのも、また魅力なんですがね。
今でも私にとっては、朝聴くと一日ご機嫌な気分でいられる数少ない作品の一つなんですよ。(笑)
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