木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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デザインも基本は事業計画書(その2)

2012年10月23日 | デザイナーとの付き合い方(相談室)
<最近デザイン開発をお手伝いした製品>


◆デザインも基本は事業計画書 (その2)
90:【デザイン相談室】第90発


 こんにちは!
 中小企業のデザインコンサルタントの木全(キマタ)です。
 中小企業の方々に向けて工業デザインのエッセンスについて、毎週更新してお知らせしています。

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お仕事をお断りする基準

 前回のブログで、中小企業からの製品デザイン開発の依頼を請けた際には、基本的には事業計画書の内容を受注の判断基準にしているという話をしました。

 そして、次のような場合には、お断りするようにしているとお伝えしました。



【売上目標】
 BtoBの場合、業界にもよりますが、1件あたりの受注金額は決して小さくありません。小さくても100万円、大きいと数億円。従って、売上目標に1000万円~1億円という金額が出てくる場合が多いようです。
 (もちろん、新規事業を始めるのですから、そのくらいの意気込みは必要です。)

【利益率】
 利益率も所属する業界の標準で設定される場合が多いようです。
 一般的にBtoBよりもBtoCのほうが利益率は高くなっています。BtoCがハイリスクハイリターンといわれる所以です。

【希望販売価格】
【ターゲット】
 希望販売価格とターゲットについては、あまりイメージできていない場合が多いのですが、アイデア商品の場合、店頭小売価格がワンコイン(500円)前後で、ユーザーは日本人全員という感じが多いようです。

【人件費】
 人件費は、担当者一人の空いた時間。忙しくなれば専任になるけれど、今は既存業務が忙しいという場合が大半です。



なぜ断るのか

 上の事例では曖昧な部分が多いですから、もう少し具体的にしてみます。

 BtoBの金属加工メーカーが、自社で調達可能な素材と設備で、生活用品のアイデア商品の試作を開発したとします。

 その商品についての心づもりは次のようなものです。

 【売上目標】 初年度売上1000万円
 【利益率】 未定
 【希望販売価格】 500円
 【ターゲット】 日本人全員(誰でも使える)
 【人件費】 当分担当者の空いた時間



 では、上記のような計画で想定される結果をいくつか挙げてみます。

 以下の想定を読んでいただければ、お断りする理由もご理解いただけると思います。



●コストが倍になる

 売上目標を達成するための数量は下の式で簡単に出ます。

 1000万円(目標)÷500円(販売価格)=2万個

 これは、ユーザーに直販する場合の数量です。

 流通を持たない企業が直販するためには、行商するのでなければ、ネット直販しかありません。

 ネット直販の場合、商品を個々のユーザーに個別郵送するのですが、宛名書き梱包郵送に1件当たり5分かかるとすると2万個郵送するのに1666時間必要になります。1日8時間労働で計算すると、郵送作業だけで200日以上かかります。とても担当者の空いた時間でこなせる仕事量ではありません。専任一人をつけたら、売上1000万円では人件費が出ません。

 1年間で2万個の製品を担当者がユーザーに直販することは不可能です。従って、流通業者に卸売することになります。

 卸売の場合、卸売価格(下代)は大まかに店頭価格(上代)の50%程度ですから、500円の製品の卸売価格は250円です。すると、生産数量が倍になります。

 1000万円(目標)÷250円(卸売価格)=4万個

 売上は変わらないのに、生産コストが倍です。これでは、最初に考えていた利益は確保できません。



●営業先が定まらない

 卸売をするにも、卸先を見つけなければなりません。

 しかし、ターゲットを日本人全員としているため、反ってどこに営業をかけていいかわからなくなります。

 東急ハンズやロフトに営業に行けばいいと考えるかもしれませんが、昔と違い大企業に成長したそれらの販売店の口座を開くのは、並大抵の努力では足りません。とても、担当者の片手間でできる仕事ではありません。

 かといって、ターゲットが定まっていないため、それ以外の売り先も思い浮かばず、営業活動も思うように進まなくなる場合が多いです。



●やる気がなくなる

 前回の書いたように、BtoBでの下請業務に長年従事していると、冗談ではなく、どんな製品でも自分が作れば、在庫も残らずすべて売れると考えてしまう場合が多く、売り先が見つからないうちに、とりあえず作ってしまうことが間々あります。

 しかし、まったく残念なことですが、競合商品があふれるBtoC市場で、知名度のない中小企業が初めて作った製品を、在庫も残さず売り切るなんて、奇跡です。

 売り先もなく作ってしまうと、当然売れませんし、金型代も償却できず、倉庫に在庫がいつまでも残ります。

 開発当初は、積極的にBtoCの新しい取組に頑張っていた担当者も、いつまでも回収できない金型代や、いつまでもなくならない在庫の山にうんざりして、徐々にやる気を失ってしまいます。

 どんな仕事も担当者がやる気を失ってしまうと長続きしません。



 
 しっかりした事業計画書がないと往々にして上記のような結果が待ち受けています。

 上記のような理由から、事業計画書のないデザイン開発依頼は請けないことにしています。

 BtoCのオリジナル商品を開発しようと考える際には、是非しっかりした事業計画書を作成していただきたいと思います。


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