木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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21世紀こそデザインの時代

2008年01月22日 | 工業デザインとは(相談室)
<自動車の外観とエンジンルームの変遷>


◆21世紀こそデザインの時代
50:【デザイン相談室】第50発 考え方16


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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 記事の目次
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日本人のデザインセンスは世界最高水準

 工業デザインとは、身の回りにある製品のデザインをすることです。自宅ならテレビなど家電製品や家具・洗面台・システムキッチン・ユニットバス。外に出れば自動車・バイク・電車、会社にはコンピュータ・電話・事務机・コピー、工場にはさまざまな生産設備、病院には医療機器など、それらはすべて工業製品であり、我々は工業製品に囲まれて暮らしており、それらの製品はほぼすべてデザインされています。

 そして、日本は製品を世界中に輸出することで成り立っている貿易立国のため、わが国の製品デザインのレベルは世界最高水準です。そうでなければ世界での販売競争に勝ち抜くことができません。

 従って、そのような優れたデザインに毎日触れている我々のデザインセンスも世界最高レベルです。気がつかないうちにセンスが磨かれています。(アジアに行って、何かと「洗練されてないな」と感じるのは、その優れたデザインセンスのお陰です。)

 日本の工業デザインの歴史は、第2次大戦後に始まりました。たった60年の歴史しかありません。たった半世紀で、何もない焼け跡から、これだけ洗練された製品デザインに囲まれた暮らしに変わりました。(そういう意味では、アジアだって、あっという間に日本に追いつくはずです。)

 では、その「たった60年」のうちの一体いつ、日本人のデザインセンスが変わったのでしょうか?


外観デザインとエンジンルーム

 かなり、大雑把な設問で、国民全体のセンスが数年で変わるわけがないですから、60年間かけて徐々に変わってきたのだと考えるのが一般的だと思います。

 もちろん、その答えも間違いではありません。

 でも、違う考え方もあります。

 上の写真を見てください。
 トヨタのカローラとクラウンの写真です。それぞれの以下の通りです。

 1966年(40年前) 初代カローラ
 1995年(10年前) 8代目カローラ
 2007年( 1年前) クラウン

 CADや加工技術の進歩で、外観が大きく変わっています。これが、デザインの進歩だということができます。

 でも、外観の違いは、ユーザーの好みに左右される部分が大きいものです。私は、現在の車のデザインも好きですが、80年代の直線を基調としたカッチリとしたデザインも好きです。

 日産とワーゲンの初代サンタナやシトロエンの初代エグザンティアなんて良かったですよね。写真の初代カローラもなかなか可愛らしくて捨てがたいものがあります。今のデザインとどちらが好きかといわれても、一概には言い切ることができません。

 しかし、エンジンルームを覗くと、ちょっと違います。

 1966年と1995年のエンジンルームを比べると、時代を追うに従い複雑になっていますが、どちらもエンジニアが設計したエンジンルームと言う感じがします。しかし、2007年のエンジンルームは全く違います。細部までデザインされています。


21世紀こそデザインの時代

 では、エンジニアではない一般消費者が、外観ではなく、エンジンルームを見比べて、どちらが洗練されていると感じるでしょうか?

 ほとんどの方が、2007年のクラウンのエンジンルームのほうがいいと感じるはずです。(エンジニアだと、昔のエンジンのほうが好きな人が多いかもしれません。)

 最近の自動車メーカーは外観だけではなく、エンジンルームの内部までデザインすることで、それが、安心感や信頼感や愛着に結びつくことに気がついたのです。

 しかし、エンジンルームが美しいだけではエンジンの性能も安全に走る性能も使いやすさも保障していません。それでも、それはユーザーにとっては大切な要素です。エンジンルームのデザインにまで気を使うメーカーであれば、きっと性能も良いに違いないという安心感や、所有する喜びや愛着を感じてもらうことができるのです。

 外観の新しさや奇抜さを追いかけるのではなく、エンジンルームなど普段見えないところまで気を使ってデザインすること、ユーザーの優越感をくすぐるだけではなく、安心感を与えること、それが大切であり、それが「デザインの質」を高めるのだということがやっと浸透してきたのが、現在の状況です。

 上の写真を見ればわかるとおり、日本一のトヨタですら、それに本当に気がついたのは21世紀に入ってからです。21世紀になってやっと、「デザインの質」の転換が浸透してきたのです。

 つまり、21世紀こそ、「デザインの質」が問われる時代なのです。



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