木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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80対20の法則

2006年05月23日 | デザイン相談室


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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■80対20の法則
28:【デザイン相談室】考え方7

 「80対20の法則」 これは、業務効率改善の際には、必ず出てくる法則です。書籍もたくさん出ていますし、ネットで調べても、いろいろなところで解説されています。たとえば、Wikipediaでは、パレートの法則で紹介されています。


パレートの法則

 「80対20の法則」は、一般に「パレートの法則」が原点だと言われています。(でも、本当は違うみたいですね。)

 「パレートの法則」はイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した所得分布の経験則で、

 「イタリアでは、人口全体の20%程度の高額所得者が社会全体の所得の約80%を占める」

 ということに気がついたことが最初だ、と言われています。

 その法則が、面白いようにいろいろな分野の経験則に適用でき、特に大量生産・大量消費の時代にマッチして普及していきました。曰く、

・ ビジネスにおいて、売上の80%は全顧客の20%が生み出している
・ 所得税の80%は、課税対象者の20%が担っている。
・ 都市の交通量の80%が都市全体の道路の20%に集中している。
・ 癌、脳障害、肺炎の3つが死因の80%を占める。

 社会システムや市場などのように、大量の小さな要素により構成されているシステムは、詳細な解析がものすごく大変です。

 そんなときに、「80対20の法則」を適用すると、なんとなく経験則にあっているし、統計的にもそこそこ有効性があるため、一般化しました。「ムーアの法則」と同じような感じのものですね。


「80対20の法則」は有効か?

 最近、ネットの世界の「ロングテール現象」の顕在化により、「80対20の法則」の分が悪いですが、リアルの世界の商品開発では、まだまだ、効力があります。

 商品開発の分野で言えば、

・ 売上の80%は20%の製品からもたらされる。
・ 使用者の80%は、製品の機能の20%としか使わない。
・ 故障の80%は、全部品のうち20%に原因がある。

 と言う感じですね。まだまだ、いろいろな組合せがあると思います。

 「80対20の法則」は便利ですが、問題もあります。

 「80対20の法則」は「何事も大切なのは少数(20%)であり、大多数(80%)は切り捨てていい」「取るに足らない80%は切り捨てて、大切な20%に集中すれば、経営は効率化する」と言い切っている部分があり、それがすべてではないだろうとは、思います。そういう切り捨て方は、やはり、問題がありますよね。

 しかし、短時間で何かを決断しなければならないとき、「80対20の法則」が示す指標は、大変有効です。

 たとえば、下のような分析は、まだまだ有効ですし、判断の基準になってくれます。

 商品開発の段階では、20%の主要顧客を見つけること、そして、彼らの特性が判れば、まだ顧客ではない同じ特性を持った潜在顧客を探すことができる。

 デザイン、実施設計の段階では、使用性を向上させるのは、80%の使用頻度がある20%の機能の使用性を向上させるほうが、残りの80%を向上させるよりも、開発効率が高い。


「80対20の法則」の落とし穴

 「80対20の法則」は、まだまだ有効なのですが、使う際にはやはりそれなりの技術が必要です。何が本当の20%かを見極めること。これは、実は大変難しいです。

 たとえば、私の経験なのですが、家電メーカーにいた頃、学生用の関数電卓の商品デザイン開発をしていました。

 顧客の学生たちは真面目なので、ちゃんと顧客カードを書いて、いろいろな要望を書いてきてくれました。こんな関数がほしい、液晶を大きくしてほしい、キーピッチが狭い、などなど。

 それらのアンケートを解析して、製品化に反映させる際に、「80対20の法則」を適用していたわけです。アンケート結果の上位20%の要望に応えれば、80%の顧客が満足すると言うわけです。

 そして、1年に1回製品をリニューアルしていましたので、どんどんそれらの要望を取り入れて、高機能化させていきました。

 しかし、、、、

 実は、私も学生時代、関数電卓を使っており、凄く不満に思っていたことがありました。

 そこで、その不満を解決したモデルを作り、実際に高専や大学にアンケートに行ったところ、大変好評で、翌々年に製品化されました。

 その不満とは、それまでの関数電卓の電池はボタン電池で、交換すると凄く価格が高く、貧乏学生にはなかなかの負担だったこと。そこで私は、単3電池で駆動する関数電卓のモデルを提案したわけです。

 学生は、買ったら、すぐに顧客カードを書いて送ってくれます。そのときに、電池切れのことは思い浮かばない。だから、顧客カードにボタン電池のことは書かれなかった!

 これは、「80対20の法則」に問題があるわけではないです。調査方法の問題、「何が20%か」を見極めることの難しさを物語っているのだと思います。

 「何が20%か」、それを的確に取りだすこと。それができれば、「80対20の法則」はまだまだ有効です。


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