森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

人間のこと,社会のこと,未来のこと,いろいろと考えたことを書きます

潜在意識が顕在意識に変わる時

2021-02-04 17:31:27 | 人類の未来

トランプ米大統領は、2021年1月20日に大統領職を辞した。
死刑囚リサ・モンゴメリー(52歳、見出しの写真)は、トランプ大統領辞任の直前、2021年1月13日に刑が執行された。

2004年、リサ・モンゴメリーは妊婦の腹を割いて胎児を取り出し、自分の子どものように扱っていた。その妊婦は死亡。彼女の弁護士は、心神喪失によってリサ・モンゴメリーの無罪を主張した。しかし陪審は5時間足らずで有罪の評決に至り、彼女には死刑判決が言い渡された。死刑執行の日は、2021年1月12日と決められた。

事件に至るまでのリサ・モンゴメリーの凄惨な人生を弁護チームが調べ始めたのは、判決が下された後だった。新たな弁護チームは度重なる面会を経て、何十年にも及ぶ虐待、レイプ、凄惨な拷問の事実が突き止められた。
一言で言えば、彼女は少女の頃から、自分の母親によって支払いの対象とされてきた。分かりやすく言えば、ものを買ったり、家を修理したりすれば当然ながらその支払いが生じる。その支払いとして、リサ・モンゴメリーの身体が与えられた。逆らえば折檻、虐待、少女が母親や継父にあがらう術はなかった。

このような事実が明らかになって、死刑囚リサ・モンゴメリーにインディアナ州の連邦地裁が、死刑執行の前日2021年1月11日に執行延期の判決を出した。

私がこのことを知ったのは、毎日新聞がこのニュースを報じたからだ。
そのニュースはすでに消えてしまったが、Yahooニュースにも出た。
トランプ大統領は、米国において過去60年間の死刑執行の3倍以上を執行し、「急ピッチの連続執行」と呼ばれた。しかし米国の一地方の単なる一人の死刑執行が、わざわざ日本の新聞に掲載され、インターネット(Yahoo)にも掲載されるとは、私には不思議であった。
なぜこの死刑囚ばかりが掲載されるのだろうか??

インディアナ州の連邦地裁が、2021年1月11日死刑執行延期の判決を出したために、1月12日の死刑執行は取り止めになった。
まさに滑り込みセーフだった。
しかし連邦最高裁は、連邦地裁の死刑執行停止を取り消し、翌1月13日、人々に考える間を与えず、あっという間に刑を執行した。
このことも、毎日新聞のみならず、インターネットにも、朝日にも、日経にも、読売にも掲載された。
一体、米国の一地方の一女性死刑囚の刑執行がなぜ日本の大手新聞の総てに掲載されるのだろうか・・。

私は、毎日新聞でこの死刑執行の記事を読んだ時、トランプ政権に対して憤りを覚えた。
政治問題や人間の生き様について議論するMLで、先の米国大統領選挙について議論していたとき、この選挙には大きな不正が行われたと主張するトランプ大統領の応援者から、トランプは敬虔なクリスチャンだという主張があった。
この“敬虔なクリスチャン”という言葉が、死刑台の露と消えたリサ・モンゴメリーのことを、私に思い出させた。

私は以下のような内容の主張をこのMLに送った。
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私はトランプとも、この死刑囚とも、何の私的な関係ももたない。全く無関係の、赤の他人だ。でもこの人は死刑にならなければよいと思った。
インディアナ州の連邦地裁が彼女の精神障害から執行延期の判決を出して、ちょっと心が安らいだ。
それをトランプはあっという間に刑を執行した。
キリストは人の生命を奪えと教えているのか? 
敬虔なクリスチャンとは連邦地裁の判決などへのかっぱ、さっさと殺してしまえと言う人たちのグループなのか?
自分の味方をした人や、あろうことか自分自身にさえ恩赦を出すというのに。
一人の女の生命など知ったことではないというのだろうか。
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これに対して幾多のやりとりを経て、別の方から、以下のような反論が来た。

>トランプさんは神様ではないので、今回の選挙を含む大きな軍事作戦で手一杯で、残念ですがリサさんの不幸に向き合う余裕が持てなかったのではないかと思います。

これに対して以下のような再反論を送った。
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この主張には、私は納得できません。
死刑囚リサ・モンゴメリーには、インディアナ州の連邦地裁が死刑延期の判決を出していたのです。だからトランプ大統領が選挙を含む大きな軍事作戦で手一杯でリサさんの不幸に向き合う余裕がなかったのなら、その地域の連邦地裁といえば権威があるわけですから、その地裁の判決に従ったでしょう。
その地裁の判決をひっくり返して、退任直前にわざわざ殺したのですから、「この女はバイデンに生命の救いを求めているようだから、そんなやつは最後の最後に俺が殺してやる」とその女性に最後まで生命の期待を持たせてその上で殺したのだと私は感じています。残虐だと感じています。
きっとトランプは、自分を追い落とす憎いバイデンにせめて最後の一太刀をと言う気持ちだったのではないかと感じています。一太刀を浴びせるならバイデンに直接すべきだったと思います。自らの力では自分の生命を救うことができない50代の一人の死刑囚、バイデンに対してではなく、自分の生命すらどうにもできない無力の女性に世界最大の力を持った男が剣を振るったのです。
これは、大統領の職務を遂行したのではなく・・、その職務にかこつけて一人の女性の生命を弄んだのだと私は思います。
言葉がありません・・。
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赤の他人の、他国の一死刑囚に対して、私はなぜこんなにも憤ったのか。MLでメールのやりとりをするうちに、私の憤りはどんどんと強くなった。
なぜインターネットや3大新聞、他が、他国のたった一人の死刑囚に対してこれほど書くのか。しかも一々写真付きの記事として。

さらに刑が執行されて10日近くも経った1月22日に『レイプ・虐待被害の女性に死刑執行 「おきて破り」認めた裁判官は誰か』と題して後追い記事が出た。

さらに、2月3日に『女性死刑囚の刑執行をめぐる悲劇、虐待とトラウマと精神疾患』と題して後追い記事が出た(これらの記事は早晩消えてしまうので、PDFで保持)。

他国のたった一人の死刑執行に、なぜこんなに後追いが出るのか。この扱いは一体何だろうか!

この女性は、妊婦の腹を裂いた時は狂っていたのだと思う。でも、それから刑務所で何年もの年月を過ごすうちに自分を取り戻したのだろう。バイデンは死刑執行をしない人だと噂に聞いたのだろう。だから、大統領が変わる日を指折り待っていたのだろうと私は推察する。

彼女の目的は生命への憧れ。すでに罪を犯し死刑を宣告、自分ではどうにもできない自分の生命・・。でも、生命への憧れはある。自分自身を取り戻したのなら、それはなおさら強くなった・・。ここに赤の他人のことが、まるで自分のことのように心を掴まれる仕組みがある。
これは、人間の誰もが心の底に持つ真の利他性である。そんな気がした。

 

 

 

コメント (13)
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