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今更なぜか「プロジェクト・フラ」

2017-12-30 16:30:30 | 参考資料-昭和(前期)

何をいまさら、という話が唐突に出て来た。なんで?

ソ連の北方四島占領、米が援助 極秘に艦船貸与し訓練も
12/30 05:00

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/154416

【根室】1945年8、9月に行われた旧ソ連軍による北方四島占領作戦に、米国が艦船10隻を貸与していたことを、根室振興局が米国とロシアの専門家による研究成果などを突き合わせ、明らかにした。米国はソ連の対日参戦に備え、大量の艦船の提供だけでなく、ソ連兵の訓練も行っており、米国の強力な軍事援助が四島占領の背景にあったことが浮かび上がった。

 振興局の調査結果によると、樺太南部の返還と千島列島の引き渡しと引き換えに、ソ連の対日参戦が決まった45年2月のヤルタ会談の直後、ともに連合国だった米ソは「プロジェクト・フラ」と呼ばれる合同の極秘作戦をスタートさせた。

 

プロジェクト・フラが現実に始まったのはヤルタ会談の直後かもしれないが、話し合いは会談の前にもたれているし、そもそも、これが必要になったのは、ソ連がドイツの敗戦が秒読みになったため、ようやく極東方面の対日作戦に参加してもいいよ、と言ってくれたから(連合国視線で、だが)。

アメリカは最初から極東の北部方面を自分で片づける気がない。だから、ソ連がドイツ側と戦争している時から、英米は対日参戦を促すんだが、ソ連は東西からの挟み撃ちになる可能性を危惧して断固断ってきた。

その前に、そもそも欧州戦線で、イギリス、フランス側からドイツを攻撃しろ、つまり第二戦線を開けてくれとスターリンは言い、でも開けてくれないイギリスさんだった。

しかし、1942年末から43年初頭にかけてスターリングラードの戦いでソ連優位が確定して、こりゃもう勝敗は明らかだなとなったので、イギリス+アメリカはノルマンジー作戦を計画して、既に弱ったドイツを叩いて欧州の西側から西部ドイツまで米英は移動した、解放した、占領した。他方、ソ連は中・東欧諸国地帯を移動、解放、占領し、ドイツ東部を流れるエルベ川で米ソが出合いました、と。これが名高いエルベの誓い、エルベの邂逅、エルベ・デーというやつ。

これが1945年4月25日で、この1週間後にベルリンが陥落して、欧州戦線はお終いになった。

下は、米兵とソ連兵@トルガウ

 

 

ここに到達する2カ月前に、ヤルタ会談があって、スターリン、ルーズベルト、チャーチルが会って要するにこの大戦争のクロージングを話し合った。

そこに極東方面の作戦も入って、そこではおおむねソ連の要求をアメリカが呑んだ。だから、ここでいきなりソ連の対日参戦が話題になったと考えるのは誤りだし、ここでいきなり米ソが手を組んだみたいにも取れる書き方(上の記事なんかそんなニュアンスがある)もまったくの誤り。一緒にWW2のクロージングに向かってた。

ただ、その直後ルーズベルトが4月に死んだので、そこから米ソの冷戦的な趣が強くなってきたことは事実だし、なんとかしてソ連やアメリカを出し抜こうと狙ってた、英国民のというより資本家の代理人チャーチルが糞な奴なのも事実。しかし、連合軍としては誰かが満洲をなんとかしないと話は終わらないんだから、ここで米ソ対立してる場合ではない。

にもかかわらずここでチャーチルは、いわゆる アンシンカブル作戦を立案。1945年7月1日を決行日として、ソ連に英米の意思を押し付けるのだとの主張の下、軍事作戦を展開しようとする。米、英、ポーランド、ドイツの兵隊がソ連駐留部隊を急襲しようという作戦。

上で肩組んでた米ソ兵はどうするんだよって話なんだが、イギリス参謀本部はソ連の戦力が大きくてそんなのできないと5月末には有害だとして退けるがチャーチルはまだ諦めない。その後米は極東方面にパワーを割いて(まだ沖縄戦やってるわけだし)、終戦方向に力を注いでいくため、イギリスが一人でそんなことやっても無駄でもあり、さらに8月にはソ連が対日参戦して話が終わってしまうのでこの話はなしになった。しかし、ここらへんで芽生えた(または確定した)不信感も、翌年からのいわゆる米ソ対立に寄与していく。ちなみにこの作戦は1998年まで公開されていなかったらしい。

が、最近ちらちらと話に上る。私はこれはイギリスのポーランドに対する「おべんちゃら」なんだと思うな。できもしない約束をして1939年に戦争に入ったのもポーランドがらみ。だから最後にも一応騒いでみせたといったところなんじゃないのかと思う。もちろん、いつものように自分でできずに、米兵だのみで考えてるイギリスをアメリカ人は見透かしている。

 

それはともかく、プロジェクト・フラは、既にwikiにさえ記述があるのに、なんで根室振興局の調査結果みたいなことを書いているのか、謎だ。

Project Hula

 

ソ連参戦の全体像のwikiの項目はここらへん。このへんを主軸に全体ピクチャーをとらえて、個別を補うというのが良い学習方法ではなかろか。

Soviet–Japanese War

ソ連の対日オペレーションは、満洲、サハリン、千島と3つ計画、実行されている。

Khingan-Mukden Offensive Operation (August 9, 1945 – September 2, 1945)
Harbin-Kirin Offensive Operation (August 9, 1945 – September 2, 1945)
Sungari Offensive Operation (August 9, 1945 – September 2, 1945)

South Sakhalin Operation (ru) (August 11, 1945 – August 25, 1945)
Soviet assault on Maoka
Soviet assault on Tōro (ru)
Seisin Landing Operation (August 13, 1945 – August 16, 1945)
Kuril Landing Operation (August 18, 1945 – September 1, 1945)

 

で、この処遇はヤルタ会談で主に米ソが合意して行われたわけだが、日本ではこの処置を遺憾とするならともかく、何か不正であるかのように言う人々が後を絶たない。

冷静に考えれば、実にバカげた話。だって、勝ってる側が戦争状態を終結させようとして、お前あっちから、俺はこれを担当する、みたいなことをやっているそのやり方が気に入らないと負けた側が言ってどうなるの?という話だから。

しかしこれをまた、アメリカが使うわけですよ。そうだろ、ルーズベルトが悪かったんだよな、みたいなやり方で、ブッシュが東欧側に謝ってみたりする。

しかし、現実の1944年、45年のアメリカに他にやりようがあったのかというと、実はそれほどない。もちろん、米兵をあと50万でも100万でも死なせていいとか、陸上の作戦遂行能力に乏しい米陸軍を入れてぐじゃぐじゃにしつつでも終結しようというのなら、できないことはなかったでしょう。しかし、アメリカ人にそれほどのやる気もなかったからこそソ連に頼ったわけですよ。それなのに、終わると、ソ連って酷い人よねと日本人にすり寄る怪しいアメリカ(笑)。

 

前にも書いたけど、私はこれを断固言い続けようと思う。アメリカ覇権とはソ連の人々2700万人の死体の上に載っている、と。

といって私は別にアメリカくたばれとか思って言ってるのではない(そう思うこともままあるが ^^;)。そうではなくて、アメリカも普通に立派な国になるのなら、もう少し名誉を重んじたらどうだろうと思うわけですよ。自己の名誉を重んじることと他者の名誉を重んじることは同じ精神に由来すると私は信じます。

第二次世界大戦の死者数

 

もう遅いかもしれないが、アメリカにはチャーチル率いるイギリスみたいな屑な国にはなってもらいたくないと思う気持ちが私にはある。チャーチルってほんと、ありとあらゆるエピソードが絶望的にひどい。

しかしこのチャーチルを日本の保守派と言われる人たちは、反共であったという一点で尊敬してるわけでしょ。そりゃ日本人の思考回路が行き詰まるのも当然ちゃ当然だと思う。

 

■ 参考

混乱を無視して進むドイツ流

「ソフト占領」:米の占領下にあり続けるドイツ


■ オマケ

今、Elbe Dayでgoogle画像を見たら、写真があるある

この人たちはみんな、ナチこの野郎と思って戦友を失いつつ戦ってきたわけでしょ。だからこそ解放を喜び合っている(日本人やドイツ人が何を思おうとそれは別として)。そんな中で、今後のイギリスはどうなるとチャーチルが心配したからといって、いきなり踵を返してドイツ兵と組んでロシア人を殺しに行けと言われたって、米兵には従う義理なんかないでしょう。少なくとも兵は納得しないだろう。というわけで、unthinkable作戦は少なくともこの現場では無理だったとしかいいようがないし、隠しておいたイギリス当局は恥を知っていたのだろう。

 


 


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『広島原爆にリンクしたソ連軍進撃』 (ローレライ)
2017-12-30 20:46:23
『広島原爆にリンクしたソ連軍進撃』の資料が出れば『原爆で地上戦支援』の好例となる。
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通説を支持しますけど、なくはない (ブログ主)
2017-12-30 21:26:41
ローレライさん、
一瞬意味がわかりませんでしたが、
通説は、米はソ連参戦の前に原爆で日本を降伏させようとした、→米ソは既に対立していた
ですが、ひょっとしてそんなものではなかったかも、というご示唆ということでしょうか。

今のところ見たことはないですし、ソ連は国連で原爆なんか落としやがってそんなの不要だったろうと米をなじってたりするので、なんかありそうにない気もします。が、虚心坦懐考えてみれば全くあり得ないとは言えないところはあるかも。気にとめておきたいと思います。
返信する
東京陥落・・てこれは1000年前の話。 (忠武飛龍)
2017-12-31 16:49:59
アンシンカブル作戦って、北宋が滅亡した靖康の変を思い出す作戦ですよな・・・
それも北宋の自滅・・・。

靖康の変 
https://ja.wikipedia.org/wiki/靖康の変

なにか、英国も人種差別的なものをもっているのを感じます。

なにせ阿片戦争やってのけた国ですから・・・。

で、北宋は東京開封府の陥落で、滅亡・・・

今度は、日本の東京が陥落かな・・・

ではまた。
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面白いことを教えていただきました (ブログ主)
2017-12-31 20:39:58
忠武飛龍さん、
はじめまして。

宋vs金→宋敗れる、の成り行きがこのようなものだったとは知りませんでした。ありがとうございます。でも、確かにキャラ的に宋はイギリスとかぶると私も思ってました。

「夷を以て夷を制する」ってまるっきり、ドイツとロシアの争いに対するイギリスの態度ですね。

人種差別というか、別に人種には限らないでしょう。なんだっていいんですよ、分断させられれば。分断、不安、カオス、混乱、不信、かく乱から相手を弱体化させて支配権を取る(買弁政治家を送る)というのがよく鍛えられた手口といえるんじゃないでしょうか。

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