DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

オリンピックと思いがけない憤慨とモラル

2016-07-25 16:49:54 | 太平洋情勢乱雑怪奇

米大統領選挙の共和党候補となったトランプの指名受諾演説の内容にNATOの通称自動参戦の規定を覆すかのような文言が入っていたもんで、その話がじわりじわりと、いやもう音を立てて騒ぎになっている。

トルコの進展も目が離せないという、なにか非常にNATOの将来が危ぶまれる事態となっている今日この頃だけど、どうもその話は日本にはあまり届いていないような気もする。

それよりも、オリンピックにロシアを出すのか出さないのかという、考えるまでもなく奇妙な問題が重要らしい。とりあえずIOCは一律にロシア選手を排除することは止め、各競技の委員会に任せた。だからロシア選手はトラック以外は個人個人、検査を受け、また過去に違反のあった人はダメというルーリングだったようだ。

つまり、あの訳の分からないアメリカとカナダのWADAとかいう組織とアメリカの関係者が熱望する、ロシアを追放する! という壮大なプロジェクトはほぼ失敗に終わったと言っていいでしょう。

が、しかし、NHKなんかはよかったとは思ってないらしい。

ロシア 厳しい条件付きで五輪出場へ IOC理事会決定
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160724/k10010607071000.html

(中略)
また、IOCのバッハ会長は今回の決定の理由について、「連帯責任と個人の権利のバランスを重視した」と説明していますが、ロシア以外のオリンピック委員会が相次いでロシア選手団の出場に反対の意向を示していることから、こうした声にIOCがどう対応するのかも注目されます。

 

「こうした声」は動機が卑しい雑音なので気にしないでくださいとIOCにメールでも出そうか?

とりあえず、NHKという奇妙な集団はそう書いているし、夕べもこれに近いようなことを言っていたんだが、一方、タス通信を見たら、日本の竹田さんが、

「(ドーピングに)関与してない選手がオリンピックに行ける道が開けたということで決定はポジティブ」

と語り、また、鈴木大地さんは、

IOCは「アスリート個人の権利を尊重した」と語ったと書いてる。


"The decision is positive because it opens the way to the Olympics for those athletes whose non-involvement (in doping) can be proved by international federations," he said.

Head of the Japan Sports Agency Daichi Suzuki said that IOC "respects individual rights of athletes."

http://tass.ru/en/sport/890359

 

私はこれらのコメント(断片ではあるけど)を歓迎しますし、ああ、日本人だな、とうれしくも思いました。誇らしいと言ってもいい。

(でも、これはNHKとかに知られたらマズイことかもしれないので、内緒で楽しむことにしましょう)

だって、私たちの多くは、オリンピックは個人個人の素晴らしい演技やら実技やらを楽しませてもらうところであって、国ごと対決やってるわけではない、みたいな姿勢を正しいと教わってきてると思うのね。

でもって、テレビは国別対決を煽っても、国籍にかかわらず個人的に好きな選手を応援するとか、声援を送るってな態度はむしろ、昔のNHKなんかは奨励していたように思う。そうでなかったらあんなに教育テレビ枠を使ってマイナーな競技をずっと丁寧に放映してないんじゃないでしょうか。

それが一体いつから、国籍が一緒なら全員一律に有罪だという、いまどき連座制かよ、という処遇がどこからともなく(この人たちに何の権利があるのかさえ不明)持ち込まれるような大会になったんだろうかと非常に悲しく思っていた。

また、今回のオリンピック選手のドーピングの結果の問題じゃなくて、あろうことか冬季オリンピックのロシア選手がドーピングをしているのだというストーリーを今の人を有罪にする根拠にするって、おかしいでしょう。エビデンスがちゃんとそろってるって言えない話を報道(ドイツのドキュメンタリーあたりだと思う)を先行させてムードを作ってから有罪に追い込むというその手法も、まったくフェアとは言えない。

ロシアのオリンピック関係者のうちのどれだけの人が悪人なのか知らないけど、それを言うならスポーツ・ビジネス先進国のアメリカで、ジョイナーだのアームストロングだのという大物選手がドーピングであげられた時、あんたら何か「連座制」適用したの?ともいいたい。つか、もっといえば、カール・ルイスとベン・ジョンソンのどっちがクリーンか教えてよ、とも言いたい。

 

モスクワに行けなかった山下選手

と、私は私なりに腹を立てていたけど、夕べは思いがけない人が物凄く怒っていた。母なんです。

夕べ、時間7時のNHKがついた部屋で食後ぐじゃぐじゃ話していたら、件のロシアのオリンピック問題が流れ、母が、やにわに血相を変えという感じで、どうしてこんなことをするのと言い出すのでちょっと驚いた。

母は私がウクライナ危機の時に、テレビがなんと言おうと今回はプーチンは悪くない、ロシア国民は頑張っているとかいろいろ言っても、納得したかのように見えてもすぐに「だってプーチン怖いもの」に戻ってしまうという、まぁ日本の標準的なレンジにすっぽり入ってる感じの態度を崩さなかった。

だから、ロシアがらみだと、やっぱりソ連はダメだわとかになるのかと思いきや、なぜ関係ない個人を出場させないなどというバカなことがあるのかと、それはもう切々と説かれて、なんで私が怒られないとなんないのよ、状態だった。

母曰く、選手は一人ひとり、そしてそれを支える人もこの大会のためと思って練習してきてるの、その努力をどうしてこんな風に国がダメならあなたもダメなんてやり方で無にするようなことをするの、情けない、と。

いろいろ言われても私も返事に困るんだけど(笑)、いや、だから、アメリカとかカナダにはロシアに意地悪をしたい人たちがいて、それが背景として大きいの、など私がうっかりしたことを言ったもんだから、さらに怒りに火がついて、「それが選手に何の関係があるの!」になった。(ネオコン勢力の人たちに母を送りつけようかと思った ^^;)

さらに、こんなことで出れなくなる選手のことを考えてみなさいと言って、1980年のモスクワ五輪に行けなかった柔道の山下選手がどれほど悔しかったか、それを見てみんなしてもらい泣きしたことを忘れたのかとかとか、もう大変な騒ぎでございました。

ご存じない若い方のためにいえば、こういう話です。

こちらにとても詳しいお話を書いてらっしゃる方がいらしたので、リンクさせていただきます。

1980年7月に開催されたモスクワ五輪は、とても淋しいオリンピック 大会となりました。ソ連のアフガン侵攻に抗議し、アメリカが先導するかたちで西側諸国の多くが参加をボイコットしたからです。最終的な参加国数は80カ国 (84年のロサンゼルス五輪は140カ国)。スポーツと政治の関わりが鮮明になる契機となった点も含め、近代五輪の歴史を語る上で大きなニュースの一つと いえるでしょう

http://www.onfield.net/1980/01.html


私もさすがにこのへんは大人じゃなかったのでよくわかってないかったので、むしろ後から何度もテレビなどでこの話を見て知ったような感じでしたが、上のサイトさんのお話で当時の日本国民が、選手が五輪に行けないことを一緒になって悲しんでたんだなというのがわかりました。いい時代でしたね。

 

そういうわけで、というのもなんだけど、この話って、今は報道がインチキ風味で勝手に意味不明な煽りをかけてるけど、少し経ったらやっぱりヘンな話だったということになるんじゃないかと思う。ロシアは、独自の調査委員会とか立てていくようだし。

 

■ オマケ

上の記事を読ませていただきつつあらためて気がつくに、1980年の問題は、ソ連がアフガニスタンに侵攻したことに対して抗議して、西側がボイコットしたわけですね。

で、現在は、アメリカが、過去15年間に、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、イエメン、ウクライナ等々を正面から侵略したり、クーデターしかけたりとやりたい放題やっているわけです。

そしてその中では、100万人以上の人が死に、その数倍の人が傷つき、住む土地を失って現在世界各地で難民などというステータスを得なければならない境遇に追い込まれている。

これに対しては、オリンピック出ていけとは誰も言わないのね。これは人々は大人になったってことなの? なんてかほんとに白ける。

 

欧米のロシア人に対する態度は、もはやヘイト・クライム的でさえあるのに、これ以上組織が束になってヘイト促進運動をやったら、もうナチはすぐそこ状態に拍車がかかるという意味でも、今回の事態は少し安心した。

 

■ 関連記事

「オリンピックを政治問題化するアメリカ」と the Westの価値毀損

 


 

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「新中東」マップ再び+都議... | トップ | 宴の始末(4)  「四文字ワー... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『戦争煽り屋NHK』 (ローレライ)
2016-07-25 21:04:10
オリンピックと四川省蔵相会議を『露中への敵意の昂揚』に利用する『戦争煽り屋NHK』の姿がクローズアップされたこの一週間でした。
NHKは変わった (ブログ主)
2016-07-26 06:21:00
庶民はあんまり変わってないんですが、NHK他の報道は本当に変わったな、とあらためて思いましたね、今回。モラルの標準が変わったと思う。
ボリス・ジョンソンの、信頼と恥のポイントが共有されていないと一体にはなれない、ってのを思い出しました。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

太平洋情勢乱雑怪奇」カテゴリの最新記事