だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

原発震災(9)大地が汚染されている

2011-03-19 18:48:39 | Weblog

 福島第一原発では懸命な作業が続いている。東京消防庁による放水もさることながら、東北電力からの電源をつなぐ作業は原子炉のすぐ近くまで行って作業しなければならないため、被曝が避けられない。おそらく、短時間での作業をリレーして行っているだろう。それでも相当な被曝線量が避けられないだろう。作業員の皆さんの将来の健康を祈りたい。
 原子炉自体に大きな動きはなく、放水が続けられ、電源が接続されれば、事態はだんだんと終息に向かっていくのではないだろうか。希望的観測であるが、そうなることを祈りたい。

 しかし、原発からはほぼ一週間にわたって相当な量の放射性物質が飛散してしまった。今日の枝野官房長官の会見によれば、福島県産の牛乳、茨城県産のほうれん草から食品安全衛生法の暫定基準値以上の放射能を検出したという。大地が放射性物質で汚染されているのである。
 会見では、「暫定基準値を超えた牛乳を日本人の平均量で1年間摂取した場合、放射線量はCTスキャン1回分、ホウレンソウでは同1回の5分の1分」とのことである。これは皆を安心させようとして言っているのであるが、決して安心できない。CTスキャン1回分の被曝線量をどうみているのか、放射線量を具体的に公表してほしいところである。

 これは私の経験であるが、以前、X線CTスキャンを受けた時に、放射線技師に確認したところでは、1回の検査で2回スキャンをして、合計約50ミリシーベルトの被曝線量であった。なぜか何度もでてくる50ミリシーベルトである。これは業務上認められている年間の被曝線量と等しく、それを1回の検査で浴びてしまうということは、逆にX線CTスキャンの安全性が問われてしまっていると私は考えている。決して妊娠中の女性が受けてはいけないし、健康な人なら安易に検査を受けるべきではない被曝レベルである。

 牛乳を生産した農場は、避難指示や屋内待避指示が出ているところから当然離れた場所であっただろう。その場所での放射能はそれほど高くはないと思われる。それは外部被曝線量、つまり体の外にある放射性物質からの放射線の影響として評価するからである。一方、放射性物質がごく微量でも食品に混入して体内に入ってしまうと、体内被曝ということになり、その影響はきわめて大きくなる。これが、原発から遠く離れた場所で生産された牛乳や野菜に深刻な影響がでるからくりである。

 また、食品でなくても、そこで暮らしていれば、チリ状の放射性物質を口や鼻から吸い込み体内被曝をする可能性がでてくる。福島県内、栃木県北東部、茨城県北部、宮城県南部では、外出するときにはぜひぬれたガーゼ入りのマスクをしていただきたい。放射性物質は時間とともに減少するので、ある期間は気をつけなくてはならない。
 どれくらいの期間か?土壌や植物の精密な放射能測定をして、どういう放射性物質がどれだけの濃度であるか、早急にかつ詳しく調べる必要がある。核分裂生成物質の中で揮発性が高くて飛散しやすく、チリに吸着されて大地に落ちてくるようなもので、放射性ヨウ素の半減期が8日、放射性ストロンチウムの半減期が29年、放射性セシウムが半減期30年である。半減期というのは放射能が半分になるのにかかる時間である。なので、3ヶ月くらいでヨウ素はほぼなくなるだろうが、ストロンチウムやセシウムは長く残ることになる。

 この汚染された大地は少なくとも茨城まで広がっているとすると、広大な面積である。今回の事故は二つの意味で「とりかえしのつかない」ものである。一つは原発で作業する人々と周囲の住民が被曝したこと。被曝した効果をなしにするような薬剤は存在しない。もうひとつは広範な大地が放射性物質で汚染されたことである。いったいどうするのか?私たちは重い現実をかかえてしまうことになった。

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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-03-19 23:19:53
東電によれば、夏には東京都の千代田、中央、港の3区を除く23区でも本格的に計画停電実施の見通し(日経)
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E3EBE2E1E28DE3EBE2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2
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CTスキャンで安心させる? (檜原転石)
2011-03-20 13:00:03
 おじさんが脳挫傷で昔何度もCTスキャンを受け、昔は今より放射線量が多く、そのせいか、その後おじさんはこの頃(約20年後)に脳腫瘍で死にました。脳幹に転移して味覚障害がでるほどの強力な放射線治療もしました。もちろん医療被曝でがんになったとは言い切れませんが・・・。

 さて、枝野らのいう「ヒバクしても安全」は「今すぐには死なない」と同義ですが、ついに枝野は比較対象としてCTスキャンまで持ち出しました。彼らの内部被曝の怖さを無視する手口は際立っていて、持ち出すのは宇宙線とか医療被曝の外部被曝であり、おまけに日本は医療被曝大国(世界平均の3倍?)ですから、こういうときには都合が良いかもしれません。だいたい1回で7~20ミリシーベルトも浴びるCTスキャンは、それが無用の検査なら、それ自体を原因にがん死する確率も高くのなるのですからアホみたいです。日本の肺がんのガイドラインでは喫煙者にさえCTスキャンをすすめていません。放射線被曝にしきい値はなく、今回のような事故で余分に人工的な放射線をたくさん浴びれば、当然がん死する確率を高めます。
 しかし20ミリシーベルトのCTスキャンって、一般人の許容線量限度 1mSv/年の20倍なんですけどね。

>CTスキャン1回分の被曝線量をどうみているのか、放射線量を具体的に公表してほしいところである。

 テレビでよく出るのは6.9ミリシーベルトでは?よって政府も一番低い数値を採用して6.9だと思うのですが・・・。
 
▼2010年04月05日 up
米国で2007年度に行われたCT検査によるがんリスクの増加
http://takasas.main.jp/iryohibaku_topics_100405b.php


▼がん検診ガイドライン 肺がん
http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/haigan.html
■非高危険群に対する胸部X線検査、及び高危険群に対する
 胸部X線検査と喀痰細胞診併用法:推奨グレードB
 死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから、対策型検診及び任意型検診における肺がん検診として、非高危険群に対する胸部X線検査、及び高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法を推奨します。ただし、二重読影、比較読影が必要です。

■低線量の胸部CT:推奨グレードI
 低線量の胸部CTによる肺がん検診は、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診としては勧められません。任意型検診として行う場合には、受診者に対して、効果が不明であることと、被曝や過剰診断などの不利益について適切に説明する必要があります。なお、臨床現場での撮影条件を用いた非低線量CTは、被曝の面から健常者への検診として用いるべきではありません。

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Unknown (こめ)
2011-03-21 09:30:09
ダイズ先生はじめまして。
色々な立場の話を聞いて混乱していましたが、先生の解説はわかりやすくて納得です。ありがとうございます!

ひとつ教えていただきたいのですが、私たちは自然放射線を受けていて、ラドン温泉地などでは通常の40000倍(?)の放射線が出ていると聞きました。
また、世界中には日本よりも遥かに高い放射線量の土地があり、そこに住む人々に癌などが多いということはないと。

自然界にある放射線と、原子力から出る放射線は作用が異なるのでしょうか?
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