『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第160回
「その日、僕が会社に忘れ物をしてるのを思い出して 夜、会社に来たんですよ。 そしたら事務所の電気が一つだけ点いてたからドロボーかと思ったんですね。 それでそっと事務所を覗いたら芹沢が設計図を沢山出してコピーしてたんです」
「でも設計図を持ち出してなんになるんですか?」
「会社に内緒で自分で商売してたんですよ」
「え!?」
「芹沢って事務職でしたけど現場の人間出身だから修理も出来るんですね。 それで休みの日に客先に出向いて現金扱いで修理したりしてたみたいなんです」
「現金でですか・・・」
「そう。 さすがに大きな会社には手を出してなかったみたいでしたけどね。 だから会社を通さずに自分だけで商売をしていたってことですよ。 それで芹沢が現場に居たとき見てきた物じゃないものは修理しようにもどうしても設計図がないと出来ないんですよ。 それで設計図をコピーして持ち出して小遣い稼ぎをしていたんです。 ほら、ボーナスも出ないからかなりショックを受けてたでしょ?」
「でも、いくらなんでもどうしてそんなことを・・・」
「僕もビックリしましたよ。 とにかくその場では芹沢を叱り飛ばして二度とするなって言ったんですけどね。 でも・・・それにしてもあの時の芹沢の顔は普通じゃなかったな」
「・・・普通じゃない顔」 何か引っ掛かる物があった。
「あ、それで覚えてます? 武藤が来た日の事」
「あ・・・えっと・・・芹沢さんと奥の事務所に入って行ったときですか?」 引っ掛かる物が何なのかと考えていた心の踵を返し返事をした。
「そう。 武藤は芹沢のやってることを知ってたみたいなんですよ」
「え? そうだったんですか? でもどうして武藤さんがご存知だったんですか?」
「武藤も自分で商売をしてますから客先に行ったときに聞いたみたいなんですよ。 芹沢ならもっと安くやってくれるからまけろって話になったみたいです。 それでなんか二人でコソコソとして怪しいと思ってたら 武藤が芹沢に言い聞かせていたみたいなんです。 同じするなら武藤みたいにちゃんと独立してやれってね。 コソコソするんじゃないって」
「そうだったんですか・・・」
「以外と武藤も真面目なやつだったんだなって見直しましたよ」
「でもどうして今回こんな事に・・・公になったんですか?」
「芹沢のやつが武藤にも僕にも言われたのに今度は部品を流そうとしたみたいなんです」
「ええ!?」
「実は棚卸しで数が合わないのがいくらかあったんですけど 多分それも芹沢じゃないかな。 部品自体も流してただろうし、修理をするにも部品が必要ですからね。 でも今回は仕事中に不自然な動きをしていたから見つかってみんなに知られることになっちゃったんです。 それも高額な部品を袋に入れてたらしいんです。 段々と麻痺してエスカレートしていったんでしょうね」
「そんなことがあったんですか」
「まぁ、社長もボーナスを出せないし給料もカットになったままだから責めるに責められないって言うか・・・」
「お給料がカット・・・ですか?」
「そう。 僕らの給料低いでしょ?」
「あ・・・まぁ、初めに見たときはちょっとビックリしました」
「5、6年位前かな? 3割カットされたんですよ。 景気が戻ったら元に戻すって会長が言ってたのにそのままですよ。 ま、景気も戻るどころか悪くなってるから仕方ないんでしょうけどね」
「そんなことがあったら社長もショックですよね」
「でも人が良すぎるでしょ。 普通に退職の処理だったんでしょ?」
「はい、そうです」
「退職金も出たんですよね?」
「はい」
「くっそー、俺も退職金もらって辞めようかなぁー」
「そんな事いわないでくださいよ」
「ファイナルさんのことがあっただけで あとは一日に数本しか電話も鳴らないんですから暇だしなぁ」
「・・・鳴らない日もありますよね」
「潰れ待ちってとこですね。 あ、そう言えば もうそろそろ工場長も定年じゃないんですか? 」
「そう言われれば、確かそうでしたよね」
「あーあ、工場長も退職金貰うのかぁ」 思いもよらない話を聞かされた連休前日であった。
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「でも設計図を持ち出してなんになるんですか?」
「会社に内緒で自分で商売してたんですよ」
「え!?」
「芹沢って事務職でしたけど現場の人間出身だから修理も出来るんですね。 それで休みの日に客先に出向いて現金扱いで修理したりしてたみたいなんです」
「現金でですか・・・」
「そう。 さすがに大きな会社には手を出してなかったみたいでしたけどね。 だから会社を通さずに自分だけで商売をしていたってことですよ。 それで芹沢が現場に居たとき見てきた物じゃないものは修理しようにもどうしても設計図がないと出来ないんですよ。 それで設計図をコピーして持ち出して小遣い稼ぎをしていたんです。 ほら、ボーナスも出ないからかなりショックを受けてたでしょ?」
「でも、いくらなんでもどうしてそんなことを・・・」
「僕もビックリしましたよ。 とにかくその場では芹沢を叱り飛ばして二度とするなって言ったんですけどね。 でも・・・それにしてもあの時の芹沢の顔は普通じゃなかったな」
「・・・普通じゃない顔」 何か引っ掛かる物があった。
「あ、それで覚えてます? 武藤が来た日の事」
「あ・・・えっと・・・芹沢さんと奥の事務所に入って行ったときですか?」 引っ掛かる物が何なのかと考えていた心の踵を返し返事をした。
「そう。 武藤は芹沢のやってることを知ってたみたいなんですよ」
「え? そうだったんですか? でもどうして武藤さんがご存知だったんですか?」
「武藤も自分で商売をしてますから客先に行ったときに聞いたみたいなんですよ。 芹沢ならもっと安くやってくれるからまけろって話になったみたいです。 それでなんか二人でコソコソとして怪しいと思ってたら 武藤が芹沢に言い聞かせていたみたいなんです。 同じするなら武藤みたいにちゃんと独立してやれってね。 コソコソするんじゃないって」
「そうだったんですか・・・」
「以外と武藤も真面目なやつだったんだなって見直しましたよ」
「でもどうして今回こんな事に・・・公になったんですか?」
「芹沢のやつが武藤にも僕にも言われたのに今度は部品を流そうとしたみたいなんです」
「ええ!?」
「実は棚卸しで数が合わないのがいくらかあったんですけど 多分それも芹沢じゃないかな。 部品自体も流してただろうし、修理をするにも部品が必要ですからね。 でも今回は仕事中に不自然な動きをしていたから見つかってみんなに知られることになっちゃったんです。 それも高額な部品を袋に入れてたらしいんです。 段々と麻痺してエスカレートしていったんでしょうね」
「そんなことがあったんですか」
「まぁ、社長もボーナスを出せないし給料もカットになったままだから責めるに責められないって言うか・・・」
「お給料がカット・・・ですか?」
「そう。 僕らの給料低いでしょ?」
「あ・・・まぁ、初めに見たときはちょっとビックリしました」
「5、6年位前かな? 3割カットされたんですよ。 景気が戻ったら元に戻すって会長が言ってたのにそのままですよ。 ま、景気も戻るどころか悪くなってるから仕方ないんでしょうけどね」
「そんなことがあったら社長もショックですよね」
「でも人が良すぎるでしょ。 普通に退職の処理だったんでしょ?」
「はい、そうです」
「退職金も出たんですよね?」
「はい」
「くっそー、俺も退職金もらって辞めようかなぁー」
「そんな事いわないでくださいよ」
「ファイナルさんのことがあっただけで あとは一日に数本しか電話も鳴らないんですから暇だしなぁ」
「・・・鳴らない日もありますよね」
「潰れ待ちってとこですね。 あ、そう言えば もうそろそろ工場長も定年じゃないんですか? 」
「そう言われれば、確かそうでしたよね」
「あーあ、工場長も退職金貰うのかぁ」 思いもよらない話を聞かされた連休前日であった。