大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第161回

2014年12月23日 14時07分06秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第160回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第161回




連休に入り1日目は掃除やカーテンを洗ったりと一日が潰れた。 夜、翌日から実家へ行くための準備をしていると携帯が鳴った。

「あ、理香ちゃんだわ」

「もしもーし、先ぱーい 理香でーす」

「はいはい、分かってるわよ。 どうしたの?」 笑顔で答える琴音。

「えへへ 先輩、聞いてください。 昨日、やっと両親が彼を認めてくれたんです!」

「まぁ、そうなの!? 良かったじゃない。 ちゃんとご両親と話したのね」

「最初は渋い顔をしてたんですけど彼が粘ってくれたんです。 理香はブチ切れそうでしたけど」

「もう、理香ちゃんったら」

「それでね、5日に入籍するんです」

「え? 昨日認めてもらってもう入籍なの?」

「だって、一日でも早く彼のお嫁さんになりたいんですもん」

「ご両親にはちゃんと言ったの?」

「もう好きなようにしろって言われました」

「まぁ、ご両親がご存知ならいいけど・・・5月5日に入籍なのね。 おめでとう」

「うふ。 有難うございます。 でね、お式は二人っきりでハワイの教会でするんですね」

「ええ? もうそんなことまで決めてるの?」

「下調べ万端です! それで披露宴はしないから新居が決まったらどうしても先輩をご招待したいんですけど来てくれます?」

「あ・・・勿論だけど、ご両親はお式や披露宴のことを知ってらっしゃるの?」

「思いっきり反対されましたけど言い切っちゃいました。 理香は長い間我慢したんだからねー! これからは理香の思ったとおりにするのー! って」

「理香ちゃん・・・」 思わず頭を抱えて (また桐谷さんが説得してください。 って言いに来そうだわ) と心の中で呟いた。

「とにかく5日の入籍のことを一番最初に先輩に言いたかったから。 それと・・・先輩ありがとう」 

「え? なあに? 何が?」

「先輩が理香に言ってくれたから先走らなくて両親にちゃんと紹介することができたんだもん」

「ちゃんと認めてくださったご両親に感謝するのよ」

「はい。 じゃあ、一応ご報告まで。 今度連絡する時は新妻の手料理をお披露目しちゃいますね」

「楽しみに待ってるわね。 じゃあね」 携帯を切った。

「理香ちゃんくらい自分のしたいことに突っ走られると自由でいいんだろうなぁ。 ある意味、見習うべき所よね」 座椅子にもたれ理香の可愛らしいウエディング姿を想像していると 急にそのドレスの裾をたくし上げて走り出す理香の姿が浮かんだ。

「うふふ・・・やっぱり清楚に静かにっていう想像は出来ないわね」 開けている窓から涼しい風が入ってきた。 レースのカーテンが揺れている。 

暫く揺れているカーテンを見ていた。



翌日実家に行くと相変わらず母親が大歓迎をしてくれる。 

そうしてくれる事は嬉しい、今までは唯それだけであったが琴音が来ることだけが楽しみになっているのではないかとふと寂しさを感じた。


夕飯時。

「お母さん、何か趣味を持たないの?」 煮物に箸をのばしながら母親に問いかけた。

「え? 何なの急に。 そうねぇ、趣味って言えるかどうかは分からないけど編み物は好きよ。 どうしたのよ急に?」  

「うん、ちょっとね。 編み物はそうだけど。 そうじゃなくてもっと外に出かけて遊んだり何かしたくないの?」

「遊ぶって、この歳になって何をするって言うのよ」 母親の箸が止まった。

「だって、毎日お父さんのご飯を作って掃除、洗濯それだけでしょ? 週に1回でも何かを習いに行こうとかって思わない?」

「こんな田舎で誰が何を教えてくれるって言うのよ。 それよりいったい何なの?」

「う・・・ん。 お母さんにも何かをして楽しんで欲しいなって・・・」

「ちょっとだけど野菜を植えたり花を植えたり、それで充分楽しいわよ」 箸をのばし始めた。

それを聞いていた父親が

「方向音痴のお母さんがどこかへ出かけられるはずないだろう」

「まぁ、失礼ですね。 行こうと思えば行けますよ」 またもや箸が止まった。

「どんなもんだか。 まぁ、琴音の言うように何かしたいことがあればするといいよ。 反対はしないから好きにすればいいからな」

「お父さんに言われたくないですよ。 朝から晩まで新聞を舐めるように見てるだけじゃないですか」

「あぁ! 喧嘩しなくていいから。 私の一言で喧嘩なんてしないでよね」

「喧嘩なんてしてません」 里芋に箸をグサッと挿して口に入れた。

「そう、そう。 お母さんが勝手にカリカリしてるだけだ」

「カリカリなんてしてませんよ!」

「またぁー・・・もう今の話はなかったことでいいから仲良くご飯食べよう」 少しブルーな空気の夕飯となった。

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