大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第159回

2014年12月16日 14時16分20秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第150回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第159回



車がマンションの前に止められ車から降りた琴音がドアを閉める前に運転席を覗き込んで

「有難うございました。 気をつけて帰ってくださいね」

「こっちこそ今日は有難う。 それじゃあね、お休みなさい」 ドアを閉め、走っていく車を見送りながら

「ヒーリングって・・・私にどんな力があるって言うのかしら」 一言呟き部屋に戻った。



会社に行けば明日から5月の連休だが今年は3日間しかない。  


始業時間が始まるなり会社の電話が鳴った。

「悠森製作所でございます。 あ、社長。 お早うございます。 ・・・はい、はい、それでは午後からですね。 皆さんに伝えておきます」
 そう言って電話を切り少し大きめな声で

「社長が風邪をひかれたみたいなので病院へ寄ってから来られるそうです。 午後くらいに来られると思います」 事務所には琴音を入れて3人しかいない。

「はーい、分かりましたー」 とそれぞれが返事をし、そして一人の社員が

「僕今から工場に降りますから工場には伝えておきます」

「有難うございます。 じゃあ、お願いします」 事務所に残ったのは琴音と 以前、芹沢が年末ボーナスを聞いてきたときに一緒に話していた社員の二人だけだ。 そして武藤が来た時に武藤と奥の事務所に入っていったのが芹沢。 その様子を見て二人の様子がおかしいと言ったのも今事務所にいるこの社員だ。

事務所のドアが閉まり社員が一階の工場に下りて行った。 それを確認してから

「織倉さん、ちょっといいですか?」 椅子に座ったまま琴音の背中に話しかけた。

「はい、何でしょう?」 振り返る。

「芹沢が辞めた時に織倉さん社長と応接室に入って行ったでしょ? あの時社長何か言ってました?」

「退職の処理は初めてだから出来るかどうかのお話でしたよ」 持っていたペンを置き、椅子を回転させ社員の方に向き直った。

「そうなんだ。 じゃあ、何も聞いていないんですね」

「特には・・・」 社長から釘を刺されたことは言わない。

「社長かなりショックを受けてたみたいだから、もしかして女性の織倉さんにポロッと話してるかと思ったんですけどね。 多分、今日の風邪って言うのもショックから体力が落ちてきてたんじゃないかな」

「え? そんな大変な話なんですか?」

「織倉さん以外は全員知ってますよ。 社長も気が良いっていうか・・・良すぎっていうか。 普通なら解雇ですよ」

「解雇って・・・」

「せっかくチャンスをあげたのにそれを棒に振って・・・ホント、馬鹿なヤツですよ」

「チャンスですか?」 何のことか分からないといった琴音の顔を見て

「奴ね・・・あ、芹沢ね。 設計図を持ち出していたんですよ」

「持ち出すですか? 断れないお客さんに何か聞かれて説明するためにでしょうか?」

「違いますよ」

「設計図は持ち出し厳禁ですからそれ相応の理由があったんじゃないんですか?」 社員にすれば琴音の言葉が的を得ない返事にしか聞こえない。

「あれはね、確か1月だったと思うんですけど・・・。 あ、あの日ですよ。 織倉さんが雨なのに窓を開けててあちこちビチョビチョになった日、あの日の前日ですよ」

「ああ、あの重かった日ですか?」 琴音が事務所に入ったときに腰が曲がるほど空気の重さを感じたあの日の前日だ。

「え? 重いって?」

「あ、何でもありません。 あの日の前日ですか?

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