大福 りす の 隠れ家

小説を書いたり 気になったことなど を書いています。
お暇な時にお寄りください。

みち  ~道~  第150回

2014年11月14日 14時23分21秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第140回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ






                                             



『みち』 ~道~  第150回




実家に着くと母親が跳んで出てきた。

「わ! 何? お母さん、なにお洒落してるの?」 母親が一張羅を着ている。

「え? 琴ちゃん一人なの?」 琴音の後ろを見るが誰も居ない。

「何言ってるのよ一人に決まってるじゃない。 ただいま」

「なんだ、そうなの。 お帰り」 肩を落として琴音をおいたまま玄関に向かった。 その後姿を見ながら

「なんだって何なの?」 車から荷物を出し家に入ると父親が新聞を広げていた

「お父さん ただいま。 電話ありがとうね」

「お帰り。 道は大丈夫だったか?」

「うん。 何ともなかったわ。 それよりお母さんどうしたの?」 琴音のその言葉に母親が着替えている部屋の方をチラッと見て小声で答えた。

「笑うぞ。 琴音が誰か男の人を連れてくるに決まってるって着替えまでして待ってたんだ」 

「ええ? どうしてそんな話になるの?」

「知り合いと会ったからちょっとお茶を飲むって電話を入れてきただろう」 新聞を畳みだした。

「うん」

「それをお母さんに言ったらきっと男の人を連れてきていてうちに帰る前にその人とお茶を飲んでるんだってきかなかったんだよ」

「ちゃんと知り合いに会ったって言ってくれたの?」

「言ったよ。 それなのにそれは嘘で絶対だれか連れてきてるってきかなかったんだよ」 綺麗に畳んだ新聞を横に置いた。

「もう、お母さんったら。 連れてくる時にはちゃんと言うわよ」

「え? 琴ちゃん、やっぱりそんな人が居るの?」 着替えを終え、割烹着を片手に母親が会話に入ってきた。

「居ないわよ。 もう、お母さんお洒落までしてって・・・」

「こんな格好で迎えられないでしょ。 お父さんにも着替えなさいって言ったのにこの格好よ」

「結局は着替えが必要なかっただろう?」

「そりゃそうですけど、いざとなったらどうするんですか」

「いざの時はちゃんと言います」 溜息混じりに言うと

「そんなことを言うって事はやっぱりいい人が居るんじゃないの?」

「居ないってば」 琴音の返事を背中で聞きながら母親が割烹着の後ろを結びながら台所に向かった。

「ねぇ、お父さん お母さんってこの一年で若くなってきてない?」

「若いって言うか・・・口うるさくなってきたな。 琴音に今日の夜は冷えるって電話をしたのもお母さんに言わないで電話をしたもんだから気に入らなかったみたいだしなぁ。 後でグチグチ言われたよ」

「なに二人で人の悪口を言ってるの? お腹空いたでしょ? 琴ちゃん台所手伝って」 台所から大声で母親が叫んだ。

「はい、はい」 思いもしない迎えられ方をして年末年始の実家での生活が始まった。



夜、布団に横になろうとした時

「あ、野瀬さんの伝言 忘れてたわ」 携帯で野瀬の伝言を聞くと

『野瀬です。 今仕事が一段楽したんですけどお時間がありましたら縄文談義をしませんか?』 こんなメッセージが入っていた。

「更紗さんも言って下さってたし、もう返事はいいわよね」 携帯を閉じ

「さ、野瀬さんとちゃんとお話が出来るように明日から本を読まなくっちゃ」 今日はもう疲れたようでそのまま寝入った。


実家での生活は母親の話し相手が主な目的だがいつも通りしっかりと本を持ってきていて読書の時間もとる。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« みち  ~道~  第149回 | トップ | みち  ~道~  第151回 »
最新の画像もっと見る

小説」カテゴリの最新記事