大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第189回

2015年03月31日 14時45分50秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第180回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第189回



夕飯を終えお茶を飲みながら本を片手に寛いでいると携帯が鳴った。

「あ、文香だわ」 着信音で相手が文香と分かる。 

「あ、琴音? 私よ」

「久しぶりじゃない。 どうしたの?」

「今からそっちに行っていい?」

「え? 別にいいけどもう夜よ。 大丈夫なの?」

「へへ、実はもう近くまで来てるの。 久しぶりに琴音の顔を見たくって」

「まぁ、こんな顔でよかったらいつでもどうぞ」

「ありがと。 じゃ、すぐに行くわね」

「うん、気をつけてね」 簡単に辺りを片付けているとすぐに文香がやってきた。

「どうぞ上がって。 明日は仕事大丈夫なの?」

「明日は大丈夫なの。 ずっと仕事三昧の毎日だったから、もうクタクタよー。 お邪魔しまーす」 靴を脱ぎ廊下を歩く。

「まぁ、それはいいことじゃない。 あ、和室に座ってて、今お茶入れるわね」 キッチンに立つ琴音に背を向け和室に入りながら

「何言ってるのよ。 身体がいくつあっても足りないわよ」 潰れかけの会社よりいいわよ・・・と言いかけたが止めておいた。

「お互いもう歳なんだから無理しちゃ駄目よ」 お盆に二人分のお茶を乗せ琴音も和室にやってきた。 

「はい、お茶どうぞ。 でも、そんなに忙しい仕事っていったいなんなの?」

「有難う。 うん。 やっと下準備・・・って言うか根回しかな? それが終わって次の段階に入ってるのよ。 それでその次の段階っていうのにちょっとキリが付いたから連休をもらったの」 湯呑みを両手で包む。

「そうなの。 良かったじゃない。 何よりも身体を休めなくっちゃね。 何連休?」

「5連休」

「5連休? じゃあ、明日からだと・・・」

「あ、明日からじゃないの」

「今日からなの?」

「うううん。 今日で3日目」

「え? そうなの? じゃあ後2日で終わりなの?」

「そう。 最初の2日間はずっと寝てたのよ。 それで今日ムクムクと動き出したっていう感じ」

「2日間って・・・冬眠並みね」 琴音が言えた義理かい? 愛宕山から帰ってきた時どうだった?

「だって、ずっとお休みがなかったんだもの」

「え? 休日出勤が続いてたって事?」

「休日出勤って言うより休日っていうものがなかったって言う方が適切かな?」

「そんなに忙しかったんだー」

「でも遣り甲斐はあったわ。 だから出来たと思うの」 さっきまでと違う表情になった。

「わぁー、そんな言葉言ってみたいわ」

「それにねちょっと状況も変わって」 そう言ってお茶を口に入れ飲んだ時にほんの少し気管に入ってしまったのか咳き込んでしまった。
咳をしながら横にあった鞄を膝に置きハンカチを出そうとした時に何やら箱が見えた。

「大丈夫?」 琴音のかける声に 大丈夫と言わんばかりに片手で琴音に掌を見せもう一方の手で口をハンカチで押さえている。
ゴホンゴホンと何度か咳き込むとすぐに治まったようで

「あー、ゴメンゴメン。 最近よくこうなるのよ」

「ティッシュ持って来ようか?」 琴音が立ちかけると

「あ、いい、いい。 ハンカチがあるから。 それにもう治まったから。 琴音の言うとおり完全に歳ね」

「弁の働きも悪くなってくるわよね」

「そっ。 だから仕事中は何か飲むのにも意識して飲まないとすぐにこうなっちゃうから困ったもんだわ」 そう言ってハンカチをお湯呑みの横に置き、鞄を横に置き直そうとした時に

「ねぇ、その箱なに?」 

「え?」 琴音の目先を見るとその視線は鞄に向けられている。

「あ、しまった。 入れっぱなしだったわ」 

「なに? 見られて困るものなの?」

「まさか。 ふふ、面白いものを貰ったの。 これ見て」 文香が鞄の中からその箱を取り出し蓋を開けて中を見せた。

「ね、これなんだと思う?」 

「なにこれ? いやにカラフルじゃない。 それとこれは何?」 箱の中には10センチ足らずのいろんな色をした数本の棒状の物と、それとは別にこれも10センチ足らずであろうか木製の物が一つ入っていた。

「手にとっていいわよ」 そう言われ琴音が木製の物を手に取り見てみると木の部分はハンドル部分のようだ。 そして底を見てみると金属製で何かが彫られてある。

「え? なに? スタンプ?」

「そう。 それでこっちのカラフルなのが封蝋よ」

「ふうろう?」 琴音のどこかで何かに触れた。

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