大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第190回

2015年04月03日 15時10分52秒 | 小説
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第190回



「そっ、封蝋。 私もこの言葉を知らなかったんだけどね。 何て言ったらいいのかしら? ほら、ヨーロッパのテレビや映画なんかで手紙の封に立体的に封印をするのってあるじゃない?」

「あ・・・ああ、何となく分かるかしら・・・」

「そう、きっとそれ」 

「でもこれをどうやって使うの?」 封蝋を一本手に取った。

「そのカラフルな封蝋が土台となる蝋なの。 簡単に言っちゃうと、その蝋を溶かして手紙の封をする上に落とすでしょ、それから蝋の形を整えてからその木製のスタンプを押すと出来上がるってわけ」

「へぇー、そんな風にするのね。 始めて見たわ」 封蝋を箱に戻す。

「私もよ」

「こんなのどうしたの? それにこのスタンプ何て書いてあるの?」

「ふふ・・・うちのチームマークなの」 スタンプをまじまじと見ていた視線を外し驚いたように文香を見た。

「チームマーク? なに? 草野球でも始めたの?」

「なに馬鹿な事言ってるのよ。 仕事でクタクタって言ってたでしょ。 野球なんてする暇・・・って、何で野球なのよ。 仕事よ」

「確か営業長って言ってたわよね。 営業チームってこと?」

「それがね・・・その上」

「どういうこと?」

「プロジェクト全体で新しくチームを作って、そのチームがプロジェクトの中のトップ扱いになったのね。 それでそこのチーム長をやってるの」

「え? 営業長だったのにその上ってことは昇進?」

「そんな大した物じゃないわ。 チームって言ってもプロジェクトの中の部署長の集まりよ。 それに営業長もまだ兼任してるの」

「わぁ・・・同期がそんなお偉いさんになったって信じられないわ。 仕事上手くいってるのね。 そっか、それでこれなのね」

「そうなのよ。 全てにおいて上手く話が進んでるからこれからのことを考えてチームマークをデザインしてこれを貰ったの。 それに良く見て、端っこに“F”って入ってるでしょ?」 そう言われて目を凝らして見てみると

「あ、ホントだ。 文香の“F”?」 文香が頷くと 

「すごいじゃない。 文香がその手紙を出したって証明ね。 このチームデザインって文香がデザインしたの?」

「そんな才能あると思ってるの?」

「ないよね」 スタンプを見ていた目を上目ずかいに文香を見た。

「あるわけないじゃない。 デザイナーに頼んだらしいわ」

「そうなんだ」 スタンプを右に左にと回しながら見ている。

「でもどうして? 今の時代に手紙なんか使わないじゃない。 電話だったりメールだったり・・・あ、丸秘書類の封にするの?」

「あ、それもいいわね。 うん、それ良い考えだわ」

「それもって・・・本来は何に使うの?」

「ほら、前も言ったけど、あんまり詳しくは話せないんだけどね。 会社同士ならそれでいいのよ、電話とかメールでね。 あ、ほら、あの時言ってたじゃない、超お金持ちさんの話。 覚えてる?」

「うん。 夢みたいな話よね」

「そう。 その超お金持ちのお客様にはそういうわけにいかないのよ。 だからこれを使ってお手渡しするの」

「手渡し?」 スタンプを箱に返しもう一度封蝋を手に取って見だした。

「そう。 お客様のご自宅に伺ってお手渡し。 パーティーの招待状とかね」

「え? 仕事の書類じゃないの?」 

「別に決まってないけど 対、お客様用に使えるでしょって渡されたわ。 今までは単純に封をしてお渡ししてたんだけどね」

「へぇ、そうなんだ」 封蝋から目が離せない。

(ふうろう・・・なんだろう・・・どこかで聞いた覚えが・・・)

「琴音? どうしたの?」

「えっ!? あ、何でもないわ。 はい、有難う」 封蝋を戻し蓋を閉めて文香に返した。

「琴音の会社はどうなのよ? 相変わらず暇潰しに勤しんでるの?」 

「あ、そこ言う?」

「それ以外何を聞いたらいいわけ? それとも忙しい? って聞こうか?」

「それは聞かなくていい・・・。 実は、今期で閉鎖に決まったのよ」

「え? どういう事?」

「もう、儲けも何もないから閉鎖決定」

「決定って、琴音これからどうするのよ!」

「う・・・ん。 それがねぇ」

「まさか実家に帰るとか?」

「当たらずも遠からじかな?」 

「うそー!? そうなの? なに、なにー!? 嫁入り修行!?」

「だーかーらー 結婚はしないって言ってるじゃない」

「じゃあ、実家に帰ってどうするのよ。 ご両親の年金でも食いつぶそうって訳?」

「叩くわよ!」

「出来るものならどうぞ」

「もう!」

「でも、待ってよ。 本気で実家に帰ろうと思ってるの?」

「まだよく分からないんだけど・・・もしかしたら・・・あ、でもまだ分からないからちゃんと決まったら報告するわ。 今はまだなんとも言えないの」

「そうなの? じゃ、深くは聞かないけど決まったら絶対に教えてよ」

「うん。 ちゃんと報告する」

「それより、文香の話をもっと聞かせてよ。 例の超お金持ちの話、色々聞きたいわ」

「そう? あ、でも琴音は明日仕事でしょ?」

「いいの、いいの。 疲れもしないんだから」

「それでは 超お金持ちの世界を教えて進ぜよう」 文香との話が盛り上がり琴音は翌日も仕事だと言うのに夜遅くまで話に花が咲いた。 

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