大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第168回

2015年01月16日 14時53分13秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第160回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第168回




「管理センターには色んな仔が居ます。 放棄された仔、迷仔。 管理センターから引き取り手が見つかって救われる命もあります。 だがしかし・・・引き取って愛してくれればいいのですが、虐待を目的に引き取る人間もいるそうで・・・同じ人間として悲しいことですな」 正道が琴音の目に話しかける。

「私が野生動物と決めたのは 家畜は・・・牛や馬は牧場で人に守られていて犬や猫はペットとして人に可愛がられているけど 野生動物に人は害しか与えていない・・・だからどうしても人から動物を守りたいと思ったんです」

「ほぅ、子供のときにそんなことを考えてられていたとは・・・犬猫がそうであれば何よりなんですがなぁ・・・」 正道も悲しい目をしている。

「でもそんな虐待をするような人がペットを連れて正道さんのところに来ることはありませんよね」

「ああ、そうでしたな。 話が中途半端になってしまいました。 実はですな、今私は京都に住んでおりますが田舎育ちなんです。 幼少の頃から動物と触れ合って育ってきました。 それで今回の動物のセラピーは人様の、飼い主さんのお役に立ちたいというところから考え始めたのは勿論なんですが それとともに飼い主のいない動物を見ていきたいという思いもあるんです。 まぁ、牧場のように充分な広さがある所でもありませんし 沢山の動物を見るのは容易なことでないことも分かっております。 中途半端なことは出来ません。 全ての動物を救うことはできませんが 少しでも何かのご縁で私の元へ来た仔達は何とか救っていきたいと思っているのです。 最近は犬猫のレスキューを行っている方達や団体があるようで 動物管理センターから引き取って里親探しをされて居られるようなんですな。 その方たちのお手伝いも出来ないかと思っているのです」

「引き取るという事ですか?」

「可能であればそれも視野に入れておりますがそれは・・・難しいでしょうな。 まずは体の痛みをとることから始めたいと思っております」

「ああ・・・」 思わず琴音の口から納得する声が漏れた。

「そして少しでも動物達を癒せる会話が出来ればと思っているのですが それは無理ですかな? ははは」 少し恥ずかしげに笑ったがそれを聞いて琴音はまた思い出したことがあった。 

正道が続けて

「さっき言いましたように 幼少の頃は動物と触れ合って育ってきましたので 動物達に心を癒してもらったり一緒にいるだけで心が休まったりしたものなんです。 そのご恩返しもしたいとも思っているんです」 正道の目をじっと見ていた琴音が更紗の方に目を移し

「更紗さん・・・私に出来るでしょうか?・・・」 ずっと黙って琴音を見守っていた更紗が

「琴音さんなら出来るわよ」 温かい声である。 

そして今度は正道の方を見て

「週に1回でも宜しいんですか?」

「はい。 ずっとそれを続けていただいても宜しいですし まぁ、出来れば将来的には毎日と言いたいのですが1日だけでも嬉しいですよ。 それにスタートするまでは私もバタバタしておりますから」 琴音がまた更紗を見て

「私・・・やってみようかしら」 それを聞いた更紗が嬉しそうに

「うん、やりましょう! やってみましょうよ! やってみなきゃ何も分からないんだもの。 それでもし無理だったらそれはその時よ その時には正道さんにちゃんと言うといいわ。 無理なはずはないけどその気持ちでいると気が楽でしょ? ね、正道さんそれでよろしいですわよね?」 更紗のその言葉にどこか懐かしさを感じた琴音であるが、琴音にはその言葉の記憶がない。

「勿論です。 お仕事をしながらですから身体も疲れるかもしれません。 無理がある時にはすぐに言ってもらえれば宜しいです。 琴音さんの身体が第一ですからな」

「有難うございます。 それじゃあ・・・週に1回だけですけど宜しくお願いします」 琴音が頭を下げると

「いやいや、こちらこそ有難うございます。 宜しくお願い致します」 そう言って正道も頭を下げた。

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