大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第192回

2015年04月10日 14時23分01秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第190回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第192回



週末。

「今年は今日で最後にしましょうか」

「え?」

「いつ雪が降るかも分かりませんし、年末の帰省での道路状況もありますからな。 今までの様に簡単に来られないかもしれませんでしょ」

「あ、そうですね。 もう雪が降る季節なんですよね」

「早い物ですな。 さっ、それでは今日は何を致しましょうかなー」 正道が椅子に座りながら言うと琴音も同じように座り

「あの・・・言いにくいんですけど」  

「どうしました?」

「跳ね返る物がまた最近感じなくなってきて・・・」

「大丈夫、大丈夫。 山もあれば谷もあります。 時間はまだまだありますから焦らなくていいんですよ」 優しい眼差しだ。

「はい・・・」

「それでは・・・そうですなぁ、グラウディングを致しましょうか」 今の琴音にはそれが必要と踏んだ。

「グラウディング・・・って?」

「地に足をつけると言うことです。 フワフワしていては何も出来ませんからな」

「はい」

「今から私の言う言葉をそのまま受け取って琴音さんの想像でいいんです。 その想像でイメージしていって下さい」

「はい」

「では、背筋を伸ばして足を床にきちんとつけて目を瞑って下さい」 言われるままに琴音は背筋を伸ばし目を瞑った。

「まずは深い呼吸を数分行ってください。 腹式呼吸ですよ」 これまでに気を落ち着かせるため、腹式呼吸で深く息を吐いては吸うという事を教えられていた。 そして5分経ったころ

「はい、そろそろ普通の息に戻していいですよ。 さて、それでは琴音さんの座っている姿勢。 第1チャクラから根が生えているとイメージして下さい。 その根をずっと下の方に、この床を通り、土の中に入り、地中深く這わして下さい。 ずっとずっと下です」 ゆっくりとそして琴音の心に響くように話す。

第1チャクラと言うのは大きく言えば尾骶骨の辺りだ。 

そして少し間を置いて

「地球の中心まで這わせるようにイメージをして下さい」 琴音は意味が分からず言われるままだがイメージは広がっている。 また間を置いて

「地球の中心に届いたらそこで根をしっかりと張って 地球と繋がって下さい。 間違いなんてありませんよ。 琴音さんのイメージが全てなんですよ。 暫くそのままで居てください」 この時、琴音は初めての経験をした。 

数分が経ち

「琴音さんのタイミングで宜しいですよ。 ゆっくりと戻ってきてください」 言われるがままに琴音は自分のタイミングで戻ってきた。 目を開けると正道が微笑んでいる。

「ゆっくりと身体を動かして下さい。 伸びをしてもいいですよ」 琴音の身体はジンジンと痺れている。 両腕を伸ばし、足も伸ばした。 その様子を見て

「どうでした?」 正道が聞いた。

「なんて言ったらいいのかしら・・・ビックリしました」 まだ身体の痺れが残っている感じがする。

「はい」 正道が相槌を打つ。

「身体って言うか・・・私の中心って言うか・・・それがずーっと広がって・・・凄く満たされているんです。 潤っているんです。 何かが流れ込んできたって言うのかしら・・・身体がジンジンしてるって言うか・・・ああ、上手く言えないです」 少し興奮気味に話す琴音を落ち着かすかのように正道がゆっくりと話す。

「いいんですよ。 琴音さんが感じたことが大切なんです。 嫌な気持ちはありませんでしたか?」

「嫌なんてことはありません」

「そうですか」 にっこり笑った正道が続けて

「別に言葉に出来なくても問題はありませんよ。 地球は私たちの母です。 しっかりと繋がっておく事が大切ですからな。 休みの間も時々時間を作って行うといいですよ」

「はい」

「それと・・・この数ヶ月間になにかありましたかな?」

「はい?」 何のことか見当がつかない。

「あ、いえね・・・ちょっと気になる事がありまして」

「なんでしょうか?」

「うーん。 私から言うより琴音さん自身が気付く事が必要ですかな・・・」

「え? 私自身がですか?」

「そうです。 琴音さんの身体ですからいずれ琴音さん自身が気付くでしょう。 ご自分で解決できなければ相談してくださると宜しいですよ」

「私、どこか悪いんですか?」

「あ・・・あははは、そういう事ではありません。 安心してください」

「じゃあ、いったい何なのかしら?」

「少しずつ、少しずつ 気付きが現れると思いますよ。 さ、次は何をしましょうかな」

正道の授業は続いた。



この日は実家に寄らずそのまま高速に乗りマンションに帰る予定だ。 帰りの車の中で今日のことを思い返していた。

「地球・・・そう言えば和尚も言ってたわよね。 それに私自身も地球の素晴らしさを感じていたのに忘れちゃってたわ・・・。 あ、でも待って・・・。 そんな地球がどうして有害な物を作ってるの? だって、私たちの母でしょ? それなのに毒のある花だったり食べたら死んじゃうキノコだったり 母なのに子供に有害な物を作ってるってどういう事?」 その時

<そなたに有害であっても・・・>

「あ、そうか。 人間にとって有害であっても他の動植物や地球には必要な物なのよね。 ・・・エッ!? 今、<そなた> って聞こえた?」 うん。聞こえたね。 

「そなたって・・・。 ・・・どなたよ」 どなたってどなただよ。

「私のこと?」 それ以外のどなただよ。

「えっと・・・」 考えてごらん。

「・・・運転に集中しよっと・・・」 えっ?  ・・・琴音らしいと言えばそうだけど・・・でもそうだね。 運転は慎重にしなくちゃね。 事故を起こしてからじゃいけないからね。 まっ、事故は起きないけどね。

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