大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第171回

2015年01月27日 15時11分17秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第170回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ






                                             



『みち』 ~道~  第171回



翌週土曜日 

早朝家を出発し先に実家へ向かった。
 
実家へ着き車を停めていると母親が覗き込んできた。

「琴ちゃん! どうしたの!?」 そうなのだ。 電話連絡をせず実家へやってきたのだ。

車から降りた琴音は 

「連絡するとご飯の用意しちゃうでしょ。 1時間くらいでまた出るから」

「いったい何なの? どこかへ行くの?」

「うん。 説明するから家に入りましょう」 家に入ると父親が新聞を広げていた。

「お父さん、お早う」 琴音の声に驚いて新聞から目を離し

「わ、何だ! 琴音!」

「お化けが出たような言い方しないでよ」 笑いながら父親の前に座った。

「どうしたんだ? 今日来るって言ってたのか?」

「うううん、何も言ってない。 それにあと1時間くらいでまた出るわ」

「なんだ、どこかへ行く前に寄ったっだけか?」

「うん・・・ちゃんと話すね。 お母さんも座って」 台所でお茶を入れていた母親を呼んだ。

「まぁ、お茶でも飲みながらでいいでしょ」 お盆にお茶を乗せてやってきた。

「運転してきたんだから喉が渇いたでしょう。 はい」 そう言って琴音の前にお茶を置いた。

「ありがとう」 お茶を一口のみ

「あのね、突然なんだけど まだいつからかは分からないけど こっちの方で週に一度お手伝いをしに来ることになったの」

「お手伝いって・・・何の?」 キョトンとした顔で母親が尋ねると

「こっちの方に新しく動物のヒーリングをするところが出来るのね。 そこのお手伝いをさせてもらうことになったの」

「ヒーリングってなあに?」

「癒すって言葉でいいかしら?」

「癒す?」 母親は的を得ない。

「うーん、分かりやすく言うと・・・あくまでも極端な言い方になるけど苦しいところがあれば取ってあげる・・・みたいな感じかな?」

「そんな魔法みたいなことがあるの?」 

「魔法じゃないんだけど私もこれから勉強していく段階だから上手く言えないの」

「どっからそんな話になったんだ?」 二人の話を聞いていた父親が口を開いた。

「とてもいい人達と出会ったの。 その人たちのお知り合いがこれからされるの」

「母さんじゃないけどそんな魔法みたいな話があるわけないじゃないか。 騙されてるんじゃないか?」

「それは無いわ」 訝しげに琴音を見ていた父親がお茶を飲んだ。

「琴ちゃん、それじゃあこれから週に一度は帰ってくるの?」

「いつからになるかは分からないし、毎回こっちに寄られるかも分からないけど 出来るだけ寄るようにしたいと思ってるの」

「まぁ、お父さん 琴ちゃんが毎週帰ってきてくれるのよ」 それを聞いた琴音が慌てて

「お母さん、毎回寄られるかどうかは分からないのよ」

「お父さんは賛成しがたいな」 また新聞を読み始めた。

「お父さん、とてもいい人達なんだってば」

「まぁ、琴音ももう子供じゃないんだから、お父さんがどう思おうと自分のやりたい様にやればいいけど お父さんが賛成してないっていう事は覚えておきなさい」

「お父さんったら石頭なんだから。 琴ちゃんが帰ってきてくれるんだからそれでいいじゃない。 ねぇ」 父親を怪訝な顔で見た後に琴音にそう話しかけた。

「お母さん、何度も言うけど毎回寄られるかどうかは分からないのよ。 だから今日みたいに連絡を入れないで突然来ることになるからね」

「家の鍵はちゃんと持ってるのか?」

「うん。 だから用事があれば留守にしていてもいいからね。 鍵を開けて勝手に入ってるからね」

「どうしてよ、ちゃんと連絡をくれたら家で待ってるわよ」

「その時になってみないと寄られるかどうかが分からないから連絡は入れないわ」

「でも、家を出る前に連絡をしてくれたら待ってるから」

「待たなくていいから・・・」

「ご飯の仕度もあるから連絡頂戴よ」

「ご飯もいらないから。 ・・・いる時には連絡するから。 それにこれからどうやっていくかも分からないんだからまだ落ち着くまでは勝手に来て勝手に帰るわよ」 琴音の冷めた言葉にとうとう母親が

「もう! 琴ちゃんの意地悪!」 少し声を荒げた。 

「お母さん・・・」 大きく溜息をついた琴音。 

だが母親の我侭も可愛いものだ。

その後は母親と他愛のない話をして家を出る時間になった。

「もう時間だから 出るわね」

「もう出るの?・・・気をつけてね。 帰りには寄るんでしょ?」

「分からないわ」 そう言いながら琴音が立ち上がると母親も見送ろうと立ち上がったのを見て

「お母さんいいわよ。 外は暑いから家にいて」 琴音がそう言ってもそれを聞く母親ではない。 

結局母親は琴音について来た。

車のドアを開けると車内の温度は上がっていた。 車内を冷やしてから乗り込みたかったが、母親が一緒に家から出てきたこともあり車に乗り込みエンジンをかけるとすぐにエアコンを点け発進をした。 

そして母親は車を見送ると家に入った。

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