大福 りす の 隠れ家

小説を書いたり 気になったことなど を書いています。
お暇な時にお寄りください。

みち  ~道~  第172回

2015年01月30日 14時42分54秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第170回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ






                                             



『みち』 ~道~  第172回



地元とは言え行ったことのない方角。 

前日に地図を頭にしっかりと入れておいたが ナビにも誘導してもらいながら着くことができた。

「ここかしら?」 山のふもとに広い更地が広がっている。 

その一角で基礎工事が行われていた。 近くまで車を走らせると正道が見えた。

「あ、正道さんだわ」 近くまで行き車を停め正道の方へ歩き出した。 正道が琴音に気付き

「おお、琴音さん。 有難うございます。 お早いですな」

「お早うございます。 ここがそうなんですか?」

「はい、出来上がるにはまだまだ先のようですがな」 

「この広い更地全部ですか?」

「はい。 後ろの山もですよ。 更紗さんに感謝です」

「更紗さんですか?」

「はい。 私が土地を探している時に更紗さんの所に来られている方のお知り合いが 売りたい土地があると仰っていたそうで すぐに更紗さんが私のことを思い出して下さって紹介してくださったんです。 そしてそのままトントン拍子に決まりましてな」

「そんな偶然ってあるんですね」

「こんな広い土地にこの山も一緒にですから これからの私のやりたいことにピッタリでしてな有難いお話です」

「後ろの山、どうにかされるんですか? 木を切って何かを建てるとか・・・」

「山に関しては出来ればこのままでと思っています。 自然が一番ですからな」

「良かった」 小さな声で言った。

「良かったとは?」 正道に質問されて心の中で「あ・・・」 と思ってしまったが勇気を振り絞って声にした。

「あ、いえ、木の伐採というのはあまり好きではないので・・・。 木も生きてるのにっていつも思っちゃうんです」 他の人間にこんなことを言うといつも笑われてきたが為、口をつぐんでいたのだが正道には心のままを言う事が出来た。

「伐採が必要な時もありますがな。 でもそう言って下さるのは嬉しいことです。 きっと今の琴音さんの言葉を聞いて木々が喜んでいますよ」 琴音は心が温かくなるのを感じた。

「この更地を全部使われるんですか?」

「全部を使うかどうかはわかりませんがその時に応じて必要な建物を作っていこうかと思っているんです」

「その時に応じてですか?」

「はい。 まぁ、最低必要と思う建物だけをこうして今は建ててるんですがな。 まだまだどんなやり方やどんな方向でやっていくかが具体的に決まっていませんから やって行くうちに必要な建物が出てくると思うんです。 その時に慌てることが無いように土地だけは確保したんです」

「そうなんですか。 でもある程度の方向性は決まってらっしゃるんですよね?」

「希望はありますが簡単に進めていけるかどうか分かりませんな。 いいマネージメントをしてくださる方が見つかるといいんですがなかなか見つかりませんでな」

「マネージメントですか?」

「はい。 個人的に連れてこられる方にはマネージメントなんて要りませんが、お逢いした時に管理センターのことを言ってましたでしょう。 その道のことをよく知ってくださっている方が居て下さればそちらの犬猫の手助けも出来ると思うんですが でもまた、その知識があるだけではいけませんし難しいですな。 まぁ、見切り発車をしたようなものですからな焦らず気長にいこうと思っています」

「正道さんが見切り発車ですか? 信じられません」

「わはは、そうですか?」

「はい。 ちゃんと計画をされて 根回しもされてからっていう感じです」

「うーん・・・そうですなぁ。 そういう所もありますが 今回は完全に見切り発車ですな。 思ったときがやり時と思いましてな。 こうして土地のご縁を頂きましたしな。 ・・・良いタイミングに事を起こせば全てが用意されていますな。 それより暑いですからあそこに行きましょう」 指差された場所にはプレハブハウスが建っていた。 

中に入ってみるとエアコンが付いていて涼しい。 そして部屋の隅にはケージが置かれていてその中に1匹の仔犬が居て目をまん丸にして琴音を見ている。

「きゃ、可愛いワンちゃん」 ケージに近寄りしゃがんで仔犬を見ている。

「その仔は捨てられていたらしいんです」

「え? 捨て犬ですか?」

「この暑い中、ダンボールに入れられて公園に置かれていたらしいんです。 偶然、工事をしてくださってる方が見つけられて ここまで連れて来られたんですが、団地で飼えないと仰るんでね。 これも何かのご縁と思ってここにこうしているんですがね 夜は一人で寂しいだろうと思うんですけど 私もあちらこちらへ行きますから家につれて帰るわけにも行かずにね・・・おお、よししょし」 ケージから仔犬を出して抱き上げた。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« みち  ~道~  第171回 | トップ | みち  ~道~  第173回 »
最新の画像もっと見る

小説」カテゴリの最新記事