大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第217回

2015年07月07日 23時46分35秒 | 小説
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第217回



金曜日、携帯が鳴った。 文香からだ。

「文香?」

「あ、琴音? 明日向こうへ行くの? えっと・・・誰だったっけかな・・・お師匠さんのところ」

「お師匠さんって・・・正道さんのところ? 行くわよ」

「良かった。 あのね、急な話で悪いんだけど 明日、例の奥様とそっちに行ってもいいかしら?」

「え!? それってどういう事?」

「今日、奥様と会う機会があってね、それとなく話してみたのよ。 そしたら身を乗り出して聞いてこられたんだけど 何よりもまずはその人達がどんな人か会ってみたいって仰るの。 それによっては協力を惜しまないけど、まずは自分の目で判断したいって・・・かなり厳しい目で見そうな感じで失礼があるかもしれないけど・・・明日、駄目?」

「こんなに早くだなんて思ってもみなかったから まだ正道さんに何も話して無いわ」

「じゃあどうする? 今、奥様に待ってもらってるんだけど」

「え? 今?!」

「そうなの。 ホント、急でゴメン。 でも明日を逃すと奥様もスケジュールが厳しいみたいなの」

「うううん、ちゃんと早く話さなかった私が悪いの・・・ね、今すぐでなきゃ駄目? 正道さんに電話をしてみるわ」

「分かったわ。 そう話しておくから連絡がついたらいつでもいいから携帯に電話してくれる?」

「うん。 正道さんの予定がわからないから何時になるかは分からないけど 出来るだけ早く電話を入れられるようにする」

「OK。 じゃあね」 携帯が切られた。

「えっと・・・正道さんの携帯・・・」 携帯の中のアドレス帳を探しすぐに電話をかけた。 呼び出し音が鳴り

「正道の携帯でございます」 その声は正道ではなかった。

「あ、あの・・・」 てっきり正道が出ると思っていたから焦ってしまったようだ。

「織倉琴音さんですね。 申し訳ありません。 正道は朝、出て行ったんですが、携帯を置き忘れてしまいまして・・・何か御用でしたらお伝えしておきますが」

「あの、急ぎの用が出来ましてご連絡を取りたいんですけど」

「それが慌てて出て行きましたので、行き先を聞いていなかったんです」

「そうですか・・・それではもしご連絡がありましたら、私のほうにご連絡をいただけるようにお伝え願いますか?」

「はい。 そう伝えておきます。 それでは失礼します」 携帯を切った。

「どうしよう・・・正道さんの行く所なんて想像も出来ないわ・・・」 閉じた携帯をじっと見た。

「あ! 更紗さんならご存知かもしれないわ!」 すぐに更紗の携帯に電話を入れた。 

呼び出し音が鳴り更紗が携帯に出た。

「琴音さん?」

「あ、更紗さん。 今ちょっと急いでいて正道さんを探しているんですけど、どこか正道さんの行かれる所に心当たりはありませんか?」

「なんだ、私に連絡じゃなかったの? 寂しいわぁ。 あら? 琴音さんって正道さんの携帯番号知らなかった?」

「知ってるんですけど連絡を入れたら 急いで出て行かれたみたいで、携帯を忘れて行かれたみたいなんです」

「まぁ、正道さんったらそんなに慌てて出て行かれたの? 今、野瀬君と会ってるわよ」

「え? 野瀬さんですか?」

「ええ。 何かマネジメントをしてくださる良い方が見つかったとかっていう話よ」

「そうなんですか。 じゃ、すぐに野瀬さんに連絡を入れてみます」

「そうしてみて。 じゃ、また会いましょうね」

「はい」 更紗との話が終わり、すぐに野瀬の携帯に電話を入れた。

「マネジメントをして下さる方が見つかったっていう事は この話はなかった事になるのかしら・・・」 呼び出し音が鳴っている間に更紗の言葉を思い出していた。

「もしもし、織倉さん?」 野瀬が携帯に出た。

「野瀬さん、もしかして今正道さんとご一緒ですか?」

「え? ・・・え、ええ。 今横にいらっしゃいますよ」

「ああ、良かった」

「どうしたんですか?」

「ちょっと正道さんとお話がしたいんですけど、代わってもらっても大丈夫でしょうか?」

「いいですよ」 そう言って正道に代わった。 

「琴音さん? どうしたんですか?」 

「正道さん、お話中に申し訳ありません。 あの・・・」 琴音が事の状況を話す。

「おお、それは是非ともお願いします」

「さっき更紗さんにお聞きしたんですけど マネジメントをして下さる方が見つかったということですけど、それでも宜しいんですか?」

「ああ、そのことはご心配なく。 詳しい方が居て下さるに越した事はありませんので」

「それじゃあ、明日来ていただくように連絡を取っておきます」

「あ、琴音さん」

「はい?」

「私の携帯にメールだけではなくて電話も入れてくださって結構ですよ。 番号はお教えいたしましたよね?」

「はい、お伺いしてます。 あの・・・もしかして今日携帯を忘れていらっしゃるってお気付きじゃなかったですか?」

「え?」 受話器の向こうですぐに鞄の中を見ている様子が伺える。

「あら、本当ですな。 どうりで今日は携帯が鳴らないと思っていました」

「多分、お弟子さんだと思いますけど、正道さんの携帯に出てくださってお忘れになっていると教えてくださったんです」 

「そうでしたか。 忘れておいて携帯に連絡を入れて下さいだなんてお恥ずかしい」 野瀬の笑い声が聞こえる。 

横で聞いていて話の筋が見えたようだ。

正道との話を済ませすぐに文香の携帯を鳴らした。

「あ、文香? 遅くなってゴメン。 まだ大丈夫だったかしら、明日お願いできる?」

「ギリギリセーフ。 そろそろ奥様のところを出ようと思ってたところ。 それじゃあそうお伝えしておくわ。 詳しい事は今晩連絡入れるわね」

「OK.。 じゃあ、宜しく」



夜になり文香から連絡があった。 時間と場所を打ち合わせたが、文香も琴音に負けず劣らずの方向音痴だ。 

ナビで探せるように住所を教えたが、念を入れて詳しい地図を描いてファックスを送った。




翌日、琴音は早くから正道の元にいた。 勿論仔犬も一緒である。

文香と奥様は遅れてくるのだ。

外では工事の人間が入れ替わり立ち代り外につながれている仔犬をあやしにやって来る気配がしている。

「皆さん本当に仔犬ちゃんが好きなんですね」

「仔犬を拾ってきた基礎工事の方ももういらっしゃらないと言うのに、皆さん入れ替わり立ち代り可愛がってくださって本当に仔犬は幸せです。 元気も取り戻してくれて一安心ですな。 
ですが琴音さんの練習が仔犬だけと言うのも物足りませんなぁ・・・イタズラによそ様の動物を勝手に見ることはいけませんしなぁ・・・」

「私の知り合いに動物を飼っている方はいませんし、それになんて言って説明していいかも分かりません。 何か怪しまれそうって言うか・・・もっと出来ていればいいんですけど この程度で人に話す勇気もありませんし・・・」 この頃には簡単に仔犬のオーラを見ることが出来ていた。

「そうですな。 まだまだ認知度がない世界ですからな。 下手に言って琴音さんがお友達を少なくしてしまってもいけませんしなぁ」 わざと笑いながら言いそして

「野鳥を見る事はありませんか? 野鳥でなくても・・・野良猫でも」

「野良猫はいません・・・野鳥と言えるかどうかは分かりませんが、鳩やスズメなら見ることはあります」

「おお、そうでしたら 鳥を相手に仔犬にしているようにしてごらんなさい」

「鳥にですか?」

「そうです。 仔犬と同じですよ」

「鳥はじっとしてくれませんから出来ますでしょうか?」

「じっとするしないは関係ありませんよ。 それに・・・通じればじっとしてくれますよ。 うん・・・まだ琴音さんには厳しいかもしれませんが、練習と思って何でもやっていきましょう」

「はい」 

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