大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第148回

2014年11月07日 14時43分13秒 | 小説
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第148回




「すみません。 お待たせしました」

「もういいの?」

「はい」 更紗の隣に座った。

「じゃ、琴音さん何飲む?」

「ずっと渋滞だったからスッキリしたいので・・・ちょっと炭酸系がいいかな。 えっとソーダ水にします」

「クリームは付かなくていいの?」 わざと子ども扱いするように更紗が聞いてきた。 その雰囲気を感じ取った琴音が

「はい、お子様じゃないのでいいです」 二人でクスッと笑う。 その様子を見ていた正道が

「お二人は双子のようですな」

「まぁ! そうですか? それなら嬉しいわ。 あ、琴音さんはご迷惑かしら?」

「いえ、迷惑だなんてそんなことないです。 それどころか嬉しいより先に畏れ多いです」

「私そんなに怖くないわよ」

「え? そんな意味じゃないです」 慌てて否定すると

「分かってるわよ」 今度はさっきより大きく二人で笑った。

「いいですなぁ。 女性がこうしてコロコロ笑うっていう事は何よりです。 お二人からは同じ物を感じますよ」

「ま、あんまり見ないでくださいよ。 琴音さん気をつけなくっちゃ底の底まで見られてしまうわよ」

「え?」

「あら、あら。 更紗さん人聞きの悪いことを言わないでください。 織倉琴音さん安心してください」 そこまで言うと更紗が

「あの・・正道さん、ちょっと気になっているんですが その織倉琴音さんってフルネームでお呼びになるのは少々長くはありませんか?」

「そうですか?」

「琴音さんはどう?」

「フルネームで呼ばれることは初めての経験かもしれません」 更紗を見てクスッと笑った。

「うーん・・・じゃあ何とお呼びしましょうか?」

「私と同じように下の名前だけの琴音さんでいいんじゃありませんか?」

「じゃあ そうしましょう。 琴音さん・・・で良いですか?」

「はい。 苗字で呼ばれるより下の名前の方が嬉しいです」

「って言うことは野瀬君が呼ぶより正道さんや私が呼ぶほうが嬉しいってことね」

「あ、野瀬さんからだと苗字の方がしっくりきます」

「・・・何かしらこの野瀬君に勝ったような優越感」 悪戯な目をした更紗だ。

「やだ、何言ってるんですか」 また二人で笑い出した。

「いいですなぁ、いいですなぁ」 二人を見て納得するように正道が独り言を言っている。

「きっと今頃 野瀬君くしゃみをしているんじゃないかしら? あ、有難う」 運ばれてきた紅茶をすぐに一口飲んだ。

「更紗さんの時はフルネームで呼ばれなかったんですか?」 琴音が正道に尋ねた。

「更紗さんには逢ってすぐに 『更紗って呼んでください』 と言われましたからな。 苗字を言う暇もなかったんですよ」

「あ、私の時もそうでした。 自己紹介のときにすぐにそう仰いましたよね」

「ええ。 下の名前で呼んで欲しい人には必ずそう言うの。 ま、言わなくても下の名前で呼ぶ人もいるけどね。 あの時のタヌキとか」

「もうヤダ、返事のしにくいことは言わないで下さい」 また二人でコロコロと笑い出す。 それを温かい目で見守る正道の目があった。

「あ、ごめんなさい。 正道さんが琴音さんとお話をしたかったんですわね。 私ちょっとお喋りしすぎちゃいました」

「いいんですよ。 お二人の笑い声を聞いてるだけでこちらが幸せになりますから。 それに私が直接何かを聞くよりお二人の波動を感じている方が分かりやすいですからな。 更紗さんもいつもとは全然違う気を発しておられて新しい更紗さんを見ているようです」

「本当にスイッチ入れてません?」 正道を覗き込んだ。

「これくらいは入れてなくても分かりますよ。 更紗さんも琴音さんもそうでしょう?」

「え? 更紗さんと違って私は何も分かりません」

「そんなことはない筈ですよ」

「そうよ、琴音さん思い出してよ。 正道さんと初めて会った時のこと」

「あの時ですか?」

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