大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第162回

2014年12月26日 14時47分05秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第160回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ






                                             



『みち』 ~道~  第162回




夕飯を終え先に父親が風呂に入り、そのあと続いて琴音が風呂に入ろうと洗面所へ向うとそこに母親が居た。

「あ、琴ちゃん。 新しいパジャマを買っておいたから新しい方を着てね」 母親が琴音のタオルとパジャマを用意していたのだ。 

「え? どうして? 前のってまだ十分着られるのに?」

「この間、お父さんと町に出たときに可愛いパジャマを見つけたの。 ほら、可愛いでしょ?」 そう言ってパジャマを広げて見せた。

「・・・見事なくらいのピンクね・・・」 薄いピンク地に濃いピンクの可愛い熊の模様だ。

「オレンジもよかったけど、やっぱり女の子はピンクじゃなきゃね」

「女の子って・・・お母さん私の歳、分かってる?」

「娘はいつまで経っても女の子よ。 ね、今日からこっちを着てね」

「前のはどうしたの?」

「今度のゴミの日に捨てるわ」 パジャマを畳みなおしている。

「えー、もったいない。 まだ着られるじゃない・・・あ、マンションに持って帰って着るから捨てないで置いといて」

「だってマンションに帰ってもパジャマはあるでしょ?」

「それが結構傷んできてて買いかえようと思ってたところだったから丁度いいのよ。 持って帰って向こうで着るわ」

「そうお? それじゃあそうする? もっと早く言ってくれてたら向こうで着るパジャマも一緒に買ってきてたのにねぇ」

「いいの、いいの。 誰に見せるわけじゃないんだから」

「彼が急に泊まるって言ったらどうするのよ」

「だから、そんな人いないってば」

「いつできるか分からないじゃない」

「今も、これからも居ないの! お風呂に入るからパジャマ、捨てないで置いておいてよ」

「はい、はい。 琴ちゃんの部屋の中に入れておきます」 ちょっと拗ねた母親であった。

一泊二日だけであったが いい空気を吸いゆっくりとした時間を過ごしマンションへ帰った。 



毎日の仕事をゆっくりとこなし 季節は流れ夏を迎えていた。

朝一番のコーヒーを社長に持っていくと

「織倉さんうちへ来てそろそろ1年になるのかなぁ?」

「丁度丸2年になりました」

「え? もう2年になるの?」

「はい」

「ああ、ゴメンゴメン。 どうしても森川さんのことが頭にあるからいつまで経っても織倉さんが頼りなく見えちゃって・・・あ、変な意味じゃないですよ。 なんていうのかな ちゃんと出来てるかなぁー? とかってすぐに思っちゃうんですよ」

「森川さんのようにはまだ出来ませんから、そうだと思います」

「森川さんは長かったからね。 森川さんと比べるのが間違ってたよね。 そっか2年か・・・」 社長のその言葉に笑みをこぼしながら他の社員にコーヒーを配っていった。 

自分の席に着いた琴音も

「そっか、訳が分からなく前の会社を辞めてもう2年になるのね。 あれ? そういえば色んな物が見えたり聞こえたりっていうのが、いつからかしら無くなったじゃない。 あれっていったい何だったのかしら」 そんなことも考えながら午前中の仕事を終え 昼休みに携帯をチェックすると野瀬からメールが入っていた。

「あら? 野瀬さんがメールだなんて珍しいわね」 送られてきたメールを見ると

『今週末土曜日、お時間いただけませんか? 今は時間がないので取りあえずメールにて』 というものだった。

『はい。 OKです』 と返信をした。 携帯を閉じ

「また縄文談義かな?」 クスッと笑った琴音であった。

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