大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第163回

2014年12月29日 23時22分31秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第160回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第163回



週末土曜日 『007』 が鳴った。

「野瀬さんだわ。 もしもし」

「お早うございます。 野瀬です」

「お早うございます」

「夕べお電話を入れようと思っていたんですけどなかなか時間がなくて、すみません当日になっちゃいました」

「ずっと暇ですから大丈夫ですよ」

「今日、一日中空いているという事ですか?」

「はい。 何の予定もありません」

「それじゃあ時間を考えなくて良いから願ったりです。 あのですね、先日更紗さんから正道さんのお話を聞かれたと思うんですけど、どうですか?」

「あ・・・すっかり忘れてました」

「くくく・・・嘘でもまだ考えがまとまっていないとかって言ってくださいよ。 もう、正直すぎますよ」

「すみません」

「あははは、謝ることじゃないですから謝らないでください。 で、今日はそのお話を聞かせていただきたかったんです。 正道さんと更紗さんとでね」

「え? 正道さんもいらっしゃるんですか?」

「ようやく、お二方の日が合ったのが今日なんですよ」

「うわぁ、どうしよう・・・何も考えていなかったから・・・」

「まだ急ぐ話じゃないそうなので とにかく正道さんに会って頂くだけなのでよろしいですか?」

「どうしましょう・・・なんてお返事をして言いかわからないから・・・」

「返事はまだいいですよ。 正道さんが、きちんとご自分からお話しをされたいという事なので お話を聞いてくださるだけでいいんですよ」

「でも・・・会社もありますからお断りすると思います。 そうなると更紗さんのお顔に泥を塗ることになっちゃうんじゃないですか?」

「その辺りの心配は無用です。 とにかく今日、会っていただけますか?」

「・・・分かりました」

「有難うございます。 2時ごろに正道さんと更紗さんがいらっしゃるので、どうです? その前に僕とランチを食べながら縄文談義をしませんか?」

「はい、久しぶりですね」

「じゃあ、 あと1時間くらいでお迎えに上がりますね」

「お願いします」 携帯は切られた。

「どうしよう・・・でもどう考えても断るしかないわよね。 私にそんな才能があるわけじゃないし、会社も2年そこらで辞めるわけにはいかないものね」


玄関チャイムが鳴った。 玄関で靴を履いて待っていた琴音がすぐにドアを開けると 少し疲れた顔の野瀬が立っていた。

「織倉さんいつもながら出てくるの早いですね」

「いつも後10分ぐらいで着くからって連絡を入れてくださるから玄関で待ってるんです。 それより疲れたお顔をされてますけど大丈夫ですか?」

「え? そうですか? そんなことないですよ。 行きましょうか」 いつもながら野瀬が車のドアを開けてくれるが、あの日からはずっと助手席だ。 野瀬も運転席に座り

「それじゃあ、出発しますよ。 今日はホテルで待ち合わせなのでそこのホテルでランチしましょう、それでいいですか?」

「はい」 野瀬の運転で車は走り出した。

「本当にお疲れじゃないんですか? それにこの車はお仕事用の車ですよね。 またどなたかを見に行かれてたんじゃないですか?」 野瀬を心配して琴音が聞いた。

「ええ、ずっと様子を見に行ってましたけど、もう大丈夫と思ったから安心してるくらいですよ。 でもそうだな。 うーん、確かに睡眠不足はあるかな? あ、だからと言って疲れている自覚はないですよ。 それに疲れていたらこうして織倉さんをお誘いしませんよ」 チラッと琴音を見た。

「それならいいんですけど いつも遅くまでお仕事をされてるんですね」 野瀬を気遣って顔をうかがっていたが前を向いた。

「いわゆる就業時間があってないような仕事ですからね」

「でも他の所ってちゃんと時間が決まってますよね」

「そうですね。 でもそれじゃあどうしてもフォロー不足になったりしますし、クライアントの時間に合わせるという形も取ってますからどうしてもこうなっちゃうんですよ」

「もう少し人数を増やすことって考えてらっしゃらないんですか?」

「それは更紗さん次第ですね。 僕より更紗さんのほうが働いていますしね。 でもあの更紗さんについていける人は早々居ないと思いますよ」

「分からなくもなかったりして」 ペロッと舌を出した。

「でしょ?」 二人で目を見合わせて笑った。

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