大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第152回

2014年11月21日 14時34分30秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第150回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第152回



マンションに帰った琴音は明後日から仕事だ。

「明後日から仕事かぁ・・・」 座椅子に座りお茶を一口飲んだ。

「そう言えば昨年始めてこの時期に乙訓寺に行ったのよね」 乙訓寺で経験した事を思い浮かべていた。

「何回か行って急に行かなくなったけど・・・更紗さんが言っていたように私の中で清算が終わったのかしら」 湯飲みを両手で包む。

「過去の浄化・・・」 じっとお茶を見つめながら

「囚われてるつもりはないけど心のどこかでまだ囚われてるのかしら・・・そうよね。 いつまでも昔に囚われてちゃいけないのよね・・・」 運転に疲れたこともあり炬燵の暖かさも手伝ってその内ウトウトとしだした。


年始出勤。

社長の年始の挨拶も終わりそれぞれが席に着き仕事を始めた。

琴音の仕事がいつも暇なわけではない。 年末年始はさすがに忙しい。

「月初めの業務を早く片付けなくちゃ。 支払日に間に合わないわ」 机にしがみついて伝票を切り始めた。 他の社員は年始の挨拶に追われている。


支払日にも無事間に合い一区切りがついたがこれからは月初めの業務に追われていた間止めていた毎日の業務をこなしていかなければならない。

「はぁ、疲れる。 あ、そうだわ お給料計算もしなくちゃいけないじゃない。 急がなきゃ」  暫くは仕事に追われるようだ。


ある日の朝、前日から続く雨の中を合羽を着て出勤。 

「わぁ、きつい雨だったわ」 自転車を止め、合羽を脱いだ。

合羽を着ていても濡れる所はある。 更衣室に入り足元をタオルで拭き、雨に濡れない様にビニール袋に入れて持ってきた靴に履き替えた。

「寒―い。 冬の雨は冷たすぎるわ・・・早く事務所に入って掃除を終わらせて暖房入れて暖まろう」 階段を上り事務所のドアを開けた。 すると えも言われぬ何かを感じた。

「やだ、何これ? まともに息が出来ない・・・」 息だけではない身体をまっすぐにも出来ない。 あまりの重たさに腰が曲がってしまっているのだ。

「何なのよ、いったい」 事務所を見渡すが何もない。

「苦しい・・・とにかく窓を開けなくちゃ」 毎日のクセか、何かを感じてなのか曲がった腰の姿勢で全ての窓を開けた。

「何なの? これって、何?」 腰が曲がったまま、息もまともにできず窓際から離れる事が出来ない。

すると暫くして息もしやすくなり身体も楽になった。

「あー、苦しかった。 いったい何だったの・・・」 琴音には分からないだろうけど念だよ。 念とは恐ろしい物だね。

「あ、キャー! 雨が入ってきてる!」 慌てて窓を閉じた。


そして琴音の仕事がやっと落ち着いた時には2月になっていた。

「売上もそんなに無いのにどうしてこんなに忙しかったのかしら?」 やっと一息つけるようだ。 それに今年はストーブのお陰でシモヤケに悩まされなかった。 

だけど・・・社内の様子が少しおかしい。


マンションに帰るとすぐに部屋を暖める。 そして温かいお茶を入れそれを持って部屋が充分暖まるまではコタツに入って待つ。 いつしかコーヒーからお茶に変わっていたこの数ヶ月の光景だ。

「うー・・・寒い。 早く暖かくならないかしら」


数日後

出勤をし、掃除を終わらせ時計を見ると男性人の出社時間の9時を過ぎていた。 

「あ、もう9時を過ぎてるじゃない。 今日はいつもと違う所も掃除をしちゃったから遅くなっちゃったのね。 もうみんな事務所に上がって来るわ。 早くコーヒーの用意をしなきゃ」 急いでコーヒーの用意をしたものの10分経ち、20分経っても誰も事務所に上がってこない。

「どうしたのかしら?」 その時、外線が鳴った。

「お早うございます。 悠森製作所でございます。 あ、いつも有難うございます。 はい、はい、少しお待ちください」 社長に電話が入ってきたのだ。 放送で社長に知らせようとした時、階段を上がってくる足音がした。

ドアが開き社員と社長が入ってきた。

「社長、ファイナルさんから1番にお電話が入っています」 ファイナルというのは電話相手だ。

「ああ、有難う」 すぐに電話を取り

「お早うございます、お電話変わりまし・・・え? なんだ、お前か。 あははは・・・そんなこと今まで1回も聞いてなかったぞ。 おう、おう。・・・そうだったのか・・・笑えるなぁ。 まぁ、俺とお前の事は関係なくよろしく頼むよ。 ああ、じゃあまた来週だな」 電話の様子を聞いていた琴音には何のことか全く分からなかった。 

電話を切った社長が琴音を見て

「織倉さん少しの間、電話を取り次がないでください」 そう言って以前、武藤と話をしていた社員と応接室に入っていった。

他の社員を見るとみんな不自然な顔をしている。

(どうしたのかしら?)

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