大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第113回

2014年07月01日 14時48分37秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第110回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~未知~  第113回



会社では締め業務。 もう慣れたものだ。 

「今月も売上少ないわねぇ」 そんな事は大きな声で言っちゃいけないよ。

「売上が少ないときの仕入れ支払いは嫌になっちゃうわ」 あまり儲かっていないといっても会社をやっている以上、仕入れは発生している。
だが、仕入れも無いようじゃもっと困ったものだ。

数日かけ締め業務を一通り終わらせ、支払日にあわせて準備をするが

「小切手は7社で 支払手形は・・・今回は5社ね」 琴音の嫌いな分野である。

「ああ、いつになっても小切手と手形を切るのには慣れないわ。 みんな振込みにしてくれればいいのに・・・」 まとめて振込みが一番簡単である。

琴音は小切手と手形を切るときには何度も何度も見直す。 印字を終えても見直す。

「送り状も書かなきゃ。 字を書くのは苦手なのに・・・」 なにかと文句が入る。

今はまだ準備段階だが支払日当日がくると手形と小切手に会長の判子をもらい、手形は書留にして郵便局へ持っていくが朝一番、判子をもらったあと送り状と手形を封筒に入れてもすぐに封はしない。 

祝儀袋にお金をちゃんと入れたか何度も見直すように 郵便局へ行く寸前まで何度も見直すのだ。 そしてやっと席を立つ前に封をする。

「その内、胃に穴が開きそうだわ」 琴音の胃に穴が開くより先に何度も見られた小切手か手形の方に穴が開くんじゃないかい? 

「あ、封筒に切手も貼っておかなくちゃ」 一度切手を貼り忘れて郵便局へ行ったことがあるが、行った先が郵便局だから慌てる事もない。

席を立ち切手を入れてある引き出しを開け500円切手を5枚手に取り席に着いた。 そしていざ封筒に切手を貼ろうとしたとき

「え? これ・・・」 そうだよ、やっと気付いたんだね。 まったく、気付くのが遅いよ。

「これって・・・ウソ!」 ちゃんと調べてごらん。 納得がいくはずだよ。


昼休み。 早めに弁当を食べ終え、またもや会社のPCを借りようと

「あの、またPCを借りていいですか?」 とりあえず奥の事務所から持ってきたものの 仕事としては誰も使わないので事務所の隅においてある。

「余ってますからいつでもどうぞ・・・って、あ・・・」

「はい?」

「そう言えば 織倉さん、オフィス使えるんでしたっけ?」

「はい、少しくらいでしたら」

「それじゃあ・・・ああ、いいですよ使っててください」 琴音にそう言ったかと思うと

「社長!」 事務所の引越し以来、みんな同じ事務所で弁当を食べている。 社長もゆっくりと弁当を食べながらもう一人の社員と話をしていた。

「何だ?」

「あの余ってるPCですけど 織倉さんの机に移してもいいですか?」

「ああ、余ってるんだったらいいんじゃないか?」

「ってことだから、織倉さんの机に後で移しますね」 琴音を見て言った。

「え? いいんですか?」

「古いですけどちゃんとオフィスも入ってますから 自由に使っていいですよ」

「有難うございます」 これで遠慮なく調べたいものがあればすぐに調べられる。

PCの前に座り電源を入れすぐに調べ始めた。 

「えっと、太上神仙だったわね」 調べてみるとやはり経ではなく陰陽道が関係していた。  

「やっぱり陰陽道・・・」

あちこちを調べて行くとその掛け軸は江戸時代に出回ったとも書かれていた。

「江戸時代に出回った? その時代ってお爺さんのお父さんくらいの時代なのかしら? ひいお爺さん? それともその前のひいひいお爺さん? それをずっとお爺さんが持っていたの?」 腕を組み考えた。

「ああ、特に陰陽道と関係していたわけじゃなくて 単にブームに乗っていただけなのかしら?」 するとクスクスと笑い声が聞こえてきた。
琴音が声をするほうを見るとみんながこちらを見ていた。

「あ・・・」 手で口を覆った。

「いつも賑やかですね」 以前愛宕山のことを調べていた時にも「何をブツブツ言ってるんですか?」 と笑っていた社員にまたもや言われてしまった。 その癖早く直そうね。

だがこの時、琴音は気になる文面を見つけていた。

「あ、そうだわ忘れる所だったわ」 500円切手だ。 調べてみると

「やっぱり、しっかり500円切手の絵は伐折羅大将だったのね」 これで信じたかい?

「どうして今まで気付かなかったのかしら」 気付くって大切だろう?

「それにしても 雨の小屋根の絵、この切手・・・私の知る先・・・行く道を分かってたみたいに・・・まるでヒントみたいに準備してあったみたいじゃない」 やっと偶然って言わなくなったね。

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