大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第132回

2014年09月12日 14時49分22秒 | 小説
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第132回



車を走らせながら

「この車ね・・・以前更紗さんが言ってたでしょ。 織倉さん覚えてるかなぁ? どこも不況でそんな相談が多いって」 ルームミラー越しに琴音を見た。

「はい、覚えてます」 その琴音は野瀬の後頭部に返事をする。

「更紗さんの凄い所なんですけどね。 そんな相談を受けてちょっと様子がおかしいと思ったら、その方の家の周辺へ様子を見に行くんですよ」

「様子をですか?」

「ええ。 殆ど僕が行くんですけど、たまには更紗さんも行くんですね。 で、その時にこの車が出動するんです」

「ああ、そうなんですか。 外車じゃ目立ちますもんね」

「その通り。 その方は僕の顔を見ているのでその方にバレても困る。 勿論、誰にも知られたくない相談をされてくるんですから 他の人に分かってしまっても困るわけですよね」

「でも何を見に行かれるんですか?」

「その方が変な気を起こしていないかを見に行ってるんです」

「え? 変な気って・・・」

「窮地に追い込まれていると何をするか分かりませんからね」

「それって・・・自殺とかっていう事ですか?」

「そういう話がよくありますからね。 そういう事を少しでも阻止できるようにね」

「そんな事までされているんですか?」

「多分どこもあまりされていないと思いますよ。 更紗さんならではだと思います」

「更紗さんってどういう方なんでしょう?」

「一言で言うと ハチャメチャ・・・かな?」 クスクスと野瀬が笑う。

「ハチャメチャ? ・・・分からなくもないですけど・・・でもそれって野瀬さんと一緒に居らっしゃるからじゃないんですか?」

「えー! 更紗さんのハチャメチャは僕のせいですか?」

「あ! そう言う訳じゃありません。 野瀬さんと居る時に更紗さんがすごくリラックスされてる気がして」

「あははは! それは嬉しい事を言ってくださる。 そう言われればそうかもしれませんね」 琴音が野瀬を待っている間に思っていた車の中での二人の空間は想像とははるかに違った空間であった。

「着きましたよ。 ここです。 もう更紗さん来てるんじゃないかな?」 琴音を正面で降ろし野瀬はそのまま車を駐車場に止め、すぐにやって来た。

「すみませんお待たせしました。 入りましょうか」 ドアを開け琴音を先に入れたかと思うとすぐに野瀬が周りを見渡して

「あ、居た居た。 こっちです」 野瀬が琴音を誘導する。 すると一番奥に更紗が座っていた。

「織倉さんをお連れしましたよ」 更紗が振り向く。

「琴音さん! お久しぶりー」 更紗の笑顔があった。

「更紗さん、普通は先に着いた者が分かりやすいように入り口の方を向いて座っているもんでしょ。 どうして後ろを向いてるかなぁ」 野瀬が更紗に言った。

「あら? でもすぐに分かったでしょ?」

「まぁ、分かったことは分かりましたけど」

「じゃあ いいじゃない」

「織倉さん、僕の言ったこと分かってもらえます?」 琴音はクスクスと笑っているだけだ。

「まぁ、何を言ってたのかしら? ね、それより琴音さん座って」 更紗が自分の横の椅子に手をやった。

「夕飯まだよね?」

「はい」

「お茶って言ってたけど何か食べましょうよ。 いい?」

「はい」

「ここのサラダは美味しいのよ。 全部じゃないけど自家栽培の野菜なのよ。 琴音さん何食べる?」 メニューを琴音に見せた。

「お野菜が美味しいんでしたら・・・うーんと・・・この『季節の野菜たっぷりピラフ』にしようかな」

「あ、それも美味しそうね。 じゃあ、私は同じ物のパスタバージョンにしよう。 野瀬君は?」

「僕は肉です」

「まだお肉食べるの?」

「食べ盛りですから」

「どこがよ! ねー」 更紗がしかめっ面をして琴音に言った。

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