『みち』 目次
『みち』 第1回から第130回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。
『みち』リンクページ
『みち』 ~道~ 第133回
野瀬が注文をしている間に 更紗と琴音の会話は始まっていた。
「更紗さんはお肉食べないんですか?」
「ええ、昔から食べないわ。 琴音さんは食べるの?」
「それが最近食べられなくなってきたんです」
「どうして?」
「食べたくなくなったって言うのも多少あるんですけど、そう思って食べてなかったんですね。 でもそれからは少しでも食べると急にアレルギーが出るようになってきて」 そうなのだ。
暦とのバイキング以降、注意をして様子を見ていると少しでも肉を食べた時には必ずブツブツが出るようになったのだ。 だから安易にレトルトのカレーなんて食べられない。 いや、一度食べた。 その結果は悲惨な物であった。
「え? 琴音さんってアレルギー持ちなの?」
「今まで食べ物ではそんな事なかったんですけど、急になんです」
「食べ物ではって、他には何があるの?」
「アレルギーって言うほどではないんですけど お化粧品とかはちょっと選んじゃいます・・・う・・ん 皮膚は弱いかもしれません。 服でも時々駄目な生地とかがありますから」
「そうなの・・・そうねぇ、ちょっと見つめ直すほうが良いかもしれないわね」
「何をですか?」
「自分の身体」
「自分の身体ですか?」
「そう。 身体って正直なのよ。 何を求めていて何を拒絶しているか、すぐに教えてくれるのよ。 お化粧品に含まれているものや生地だってそうよ、合繊とか色々あるでしょ? 人の身体には麻が一番いいらしいわよ。 それに多分、今の琴音さんの身体はお肉を受け付けたくないと思うの」
「受け付けたくないですか・・・」
「よく考えてみて、お肉にされるときの牛や豚や鳥のこと」
「お肉にされるときって?」
「牛が一番わかり易いかしら。 それまでは農場で育てられていたのよ。 それがある日突然トラックに乗せられて・・・でしょ?」
「はい」
「嘘か本当かは分からないけどトラックに乗せられるとき 既に牛は何をされるか分かって暴れまくるそうじゃない」
「そういう話、聞いたことあります」
「誰も牛の気持ちを聞いたわけじゃないからそれが真実なのかは分からないけど、もしそれが真実だとして私が思うのはその時の、それ以降の牛の感情を考えるの」
「牛の感情ですか?」
「そう。 どんなに恐怖に戦きかえっていたかよ。 自分において考えたらそう思わない?」
「確かにそうですよね」
「えも言われぬ恐怖よ。 琴音さんならそんな時、肉体はどうなってる?」
「そこまでの恐怖の経験はありませんから何とも言えないですけど・・・でも・・・」 金縛りにあったときの事を思い出した。 あの時の恐怖を思い出した。
「でも?」 琴音の言葉に期待をするように更紗が目を輝かせた。
「心だけじゃなくて身体中に恐怖が走ります。 それもそんな簡単な恐怖じゃないです。 身体中の細胞一つ一つまでが心を持ったみたいに・・・何て言っていいのかなぁ・・・とにかく心だけじゃないです。 身体の隅々まで恐怖でいっぱいになります」
「でしょ?」 期待していた言葉が返ってきたようで更紗は満面の笑みだ。 そして続けて。
「それがその肉体の最後なのよ。 肉体中が恐怖に戦いた。 そこで止まっている肉体なのよ。 そのお肉を食べるのってどうなのかしら?」
「そのお肉を私の身体が食べたがっていないっていう事ですか?」
「多分ね。 こういう事を琴音さんが知らなくても、琴音さんの身体は知っているのよ」
「はぁ・・・でももっと違うサインを出してくれればいいのにアレルギーって・・・」
「どんなアレルギーなの?」
「赤いブツブツが 胸から太腿まで出るんです。 見えないんですけど多分背中にも出てると思います」
「痒いの?」
「イエ、痒みも何もなくて ただブツブツが出るだけなんですけど」
「それじゃあ、いいじゃない。 痒くもないし、人の目に付く所にも出ないんだったら、顔にも出ないんでしょ?」
「はい」
「それに さっき言った事をよく思い出してみて。 ブツブツが出る前に食べたくないって思ってたんでしょ? ちゃんと順序だてて教えてくれてるじゃない。 琴音さんの身体、ちゃんと考えてくれてるのよ。 感謝しなくちゃ」
「そう言われればそうですね」
『みち』 第1回から第130回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。
『みち』リンクページ
『みち』 ~道~ 第133回
野瀬が注文をしている間に 更紗と琴音の会話は始まっていた。
「更紗さんはお肉食べないんですか?」
「ええ、昔から食べないわ。 琴音さんは食べるの?」
「それが最近食べられなくなってきたんです」
「どうして?」
「食べたくなくなったって言うのも多少あるんですけど、そう思って食べてなかったんですね。 でもそれからは少しでも食べると急にアレルギーが出るようになってきて」 そうなのだ。
暦とのバイキング以降、注意をして様子を見ていると少しでも肉を食べた時には必ずブツブツが出るようになったのだ。 だから安易にレトルトのカレーなんて食べられない。 いや、一度食べた。 その結果は悲惨な物であった。
「え? 琴音さんってアレルギー持ちなの?」
「今まで食べ物ではそんな事なかったんですけど、急になんです」
「食べ物ではって、他には何があるの?」
「アレルギーって言うほどではないんですけど お化粧品とかはちょっと選んじゃいます・・・う・・ん 皮膚は弱いかもしれません。 服でも時々駄目な生地とかがありますから」
「そうなの・・・そうねぇ、ちょっと見つめ直すほうが良いかもしれないわね」
「何をですか?」
「自分の身体」
「自分の身体ですか?」
「そう。 身体って正直なのよ。 何を求めていて何を拒絶しているか、すぐに教えてくれるのよ。 お化粧品に含まれているものや生地だってそうよ、合繊とか色々あるでしょ? 人の身体には麻が一番いいらしいわよ。 それに多分、今の琴音さんの身体はお肉を受け付けたくないと思うの」
「受け付けたくないですか・・・」
「よく考えてみて、お肉にされるときの牛や豚や鳥のこと」
「お肉にされるときって?」
「牛が一番わかり易いかしら。 それまでは農場で育てられていたのよ。 それがある日突然トラックに乗せられて・・・でしょ?」
「はい」
「嘘か本当かは分からないけどトラックに乗せられるとき 既に牛は何をされるか分かって暴れまくるそうじゃない」
「そういう話、聞いたことあります」
「誰も牛の気持ちを聞いたわけじゃないからそれが真実なのかは分からないけど、もしそれが真実だとして私が思うのはその時の、それ以降の牛の感情を考えるの」
「牛の感情ですか?」
「そう。 どんなに恐怖に戦きかえっていたかよ。 自分において考えたらそう思わない?」
「確かにそうですよね」
「えも言われぬ恐怖よ。 琴音さんならそんな時、肉体はどうなってる?」
「そこまでの恐怖の経験はありませんから何とも言えないですけど・・・でも・・・」 金縛りにあったときの事を思い出した。 あの時の恐怖を思い出した。
「でも?」 琴音の言葉に期待をするように更紗が目を輝かせた。
「心だけじゃなくて身体中に恐怖が走ります。 それもそんな簡単な恐怖じゃないです。 身体中の細胞一つ一つまでが心を持ったみたいに・・・何て言っていいのかなぁ・・・とにかく心だけじゃないです。 身体の隅々まで恐怖でいっぱいになります」
「でしょ?」 期待していた言葉が返ってきたようで更紗は満面の笑みだ。 そして続けて。
「それがその肉体の最後なのよ。 肉体中が恐怖に戦いた。 そこで止まっている肉体なのよ。 そのお肉を食べるのってどうなのかしら?」
「そのお肉を私の身体が食べたがっていないっていう事ですか?」
「多分ね。 こういう事を琴音さんが知らなくても、琴音さんの身体は知っているのよ」
「はぁ・・・でももっと違うサインを出してくれればいいのにアレルギーって・・・」
「どんなアレルギーなの?」
「赤いブツブツが 胸から太腿まで出るんです。 見えないんですけど多分背中にも出てると思います」
「痒いの?」
「イエ、痒みも何もなくて ただブツブツが出るだけなんですけど」
「それじゃあ、いいじゃない。 痒くもないし、人の目に付く所にも出ないんだったら、顔にも出ないんでしょ?」
「はい」
「それに さっき言った事をよく思い出してみて。 ブツブツが出る前に食べたくないって思ってたんでしょ? ちゃんと順序だてて教えてくれてるじゃない。 琴音さんの身体、ちゃんと考えてくれてるのよ。 感謝しなくちゃ」
「そう言われればそうですね」